其々の思惑が交差する人狼ゲームアクティブ。
自ら望んで赴く者。
望まず連れてこられた者。
数多の願いを叶えし者。
願いすら持たない者。
彼女、彼らは殺し合う運命にあった。
本格的な戦いが始まる、ゲーム初夜のアクティブタイムが静かに訪れようとしていた……。
其々の思惑が交差する人狼ゲームアクティブ。
自ら望んで赴く者。
望まず連れてこられた者。
数多の願いを叶えし者。
願いすら持たない者。
彼女、彼らは殺し合う運命にあった。
本格的な戦いが始まる、ゲーム初夜のアクティブタイムが静かに訪れようとしていた……。
…………
で……お前さんはどうして俺の部屋にいるんだ?
ブタさん先にポークソテーにしてやろうかと思って
いやちょっと待てェ!?
冗談だよ
一緒に戦うって言ったじゃん
ひよりよりはブタさんの方が強そうだし
嬢ちゃん……笑えねえって……
わたしはよくよく昼間、自分がこのゲームでどうするべきか、じっくりと考えた。
そして一つの回答にたどり着いたのだ。
わたしに叶えたい願いはない。
プライドは、この使えない特殊能力のせいで守る価値もなくなった。
だったら、勝ち残るにはどうするべきか?
簡単だ。
強そうなヒトのコバンザメをしていればいい。
要するに、誰かとともにあることを選んだ。
タッグを組む、ってことだ。
そんで、わたしが選んだのは……ブタさん。
他の大人や子供、眼鏡のオタクよろしくなヘタレ風優男は頼りにならないと判断した。
人が良さそうで強そうなブタさんが最適だと決めつけて、共闘を持ちかけた。
ひよりはちなみに館内を調べまわっている。
誰とも組まずに、怪奇現象を知りたいからゲームには参加しない、とあの場で宣言した。
その場にいるであろう狼に向かって「あたしは関与しないし、何もしないからそっちも何もしないで」とはっきり告げた。
その効果は如何程かは分からないが、一種の死亡フラグを立てたのは間違いない。
あのオカルトオタク、どうなろうがもうわたしも知らない。
面倒を見切れないよ、全く。
わたしの役職は村人。特殊能力は『反転』。
自分から動くことはまずできない。
後手に回るしかない。
性格と不一致なのが一番痛手だった。
幸いなことに『武器』にかんして言えば慣れている最上のモノがきたのはよかった。
これでなんとかするしかない。
ブタさんどうするの?
今夜はまだ、動けないと思うけど?
俺ァ、取り敢えず飯食うぜ
嬢ちゃんはどうする?
一緒にいたいってなら俺ァ止めねえぜ?
俺は手なんざ出さねえ紳士だから安心しな
そのへんは信用してるよ
まあしてきたら殺すからよろしく
わたしは自分からじゃどうすることもできないし、ブタさんの飯に付き合うよ
夕飯も持参してるしね、ほら
……何だこれ?
栄養補助食品って奴か?
美味しいよ?
パロリーメイト
ナチョ・ソース味
お、俺は遠慮しとくわ……
豚骨味あるけど
お、そりゃ美味そうだ……一本くれや
わたしは自分の部屋に置いてあった、パロリーメイトをほおばりながら言う。
何か部屋の中には沢山食べるものがあったのでこれで問題はあるまい。
配られた端末も持ってきてるし、こんばんは様子見でブタさんと一緒にいる。
部屋の鍵はしっかり締めてあるし、万が一の時に武器もちゃんと持ってきている。
ブタさんは呑気に豚骨味のカップ麺にお湯を注ぐ。
……本当にブタが好きなんだなぁ……。
私は基本的に、村人であること以外は伝えていない。
でも村人であることを最低限伝えておけば、まあ仲間割れに発展することないだろう。
証明することはできないけど、彼は簡単に信じてくれた。
この人は本当に……このゲームにいることが不思議なぐらい良い人だ。
何でこんなところにいるのだろう?
自分の意思で来ていたとか言ってたけど……人それぞれだからいいか。
嬢ちゃん、茶ァ飲むか?
ん、飲む……多目に、あと濃いめに
ブタさん、パロリーメイトまだあるよ
篭城できるように大量に持ってきたから好きなだけ食べて
ほぅ……豚マヨ味か……
中々に通なチョイスじゃねえか
豚キムチもあるよ
マジかよッ!?
すげぇなこれ……どんだけバリエーションあるんだ
わたし知ってる限りだと、100くらいかな
毎年新作が10以上は出てる
ブタさんと夕飯を共にする平和な時間。
カップ麺を啜りながらブタさんとわたしはその夜、平穏に過ごした。二人とも、無事だった。
不気味なほど静かな夜でも、二人でいれば怖くないことも知った。
この人と戦おうと本腰を入れたのは、次の日の朝のことだった……。
初夜で早速誰か死んだらしい。
わたしの端末には夜に一人死亡したと通知が来て、慌ててブタさんを叩き起して談話室に向かった。
だが……そこには変わらず、12人の参加者が全員顔を揃えていたのだ。
一瞬、目を疑った。
端末の故障かと思ったが、それはない。
この状況で壊れるものを渡すとは思えない。
な……何が起きてんの……?
わたしの言葉に、頷く数人。
対して、なんともない人もいた。
場を取り仕切る人が誰もいない。
誰がいったい死んで、誰が殺したのか。
みんなそれをさぐり合っている。
そんな中。
あーうん、昨晩死んだのは私だよ
部屋帰ろうとしてたら襲われて殺された
刃物か何かだと思うよ?
首を斬られた感触がしたから
誰が殺したまでは見てないけど
不意打ちで殺られたし……
……進行役が欠伸をしながら目をこすってそんなことを言い出した。
同時にあいつの特殊能力が全員に透けた。
この女は……『反魂』だと。
まああんなこと言ってりゃ殺されるのもわかるんだけどねぇ
まさか本当に挑発に乗って殺しに来るなんて思っても見なかったし
正直死ぬほど痛かったけど
けんもほろろと能天気に言うが……この女、何でけろっとしてる?
なぜ殺されても平然とこの場にいられる?
進行役ってのは、こんな人間なのか?
こいつは嘘をついていると堂賀が声を荒らげるが……。
ホイ、証拠
と彼女がパチンと指を鳴らすと、各自の端末に通知が。
見てみれば昨晩死んだ人間の番号が記されている。
ナンバーは……12。進行役の数字だった。
こんな感じで、死んだ人間は翌朝番号になって、ほかの人に知らされるからね
襲った人間のことはわかんないけど
これで満足かな、堂賀さん
チッ……!
分かったよ!
嘘は言えねえってことぐらいは!
つまらなそうに、堂賀は舌打ちしてそっぽを向いた。
……あの態度……怪しい。覚えておこう。
そんなこんなで、判明したけど改めて!
私こと志田奈々の特殊能力は『反魂』!
効果は、ゲーム中投票を除いた死亡の回避!
細かく言うと死んでから自動的に復活する能力ね
一度死ぬことは死ぬってこと
ああ、私が死んだ場合でも人数が満たされるから無駄なことはしないようにね?
追加説明すると、役職の狼が自分を殺すことはできないよ
つまり、私は狼じゃないってこと
分かってくれた?
いきなり初日でアドバンテージを出されて、一歩出し抜かれた。
あいつ、殺されることを計算して昨日わざと挑発して、一日目から場を掌握するつもりだったのか!
みんな、戦慄してる。
生命を捨てるような真似を普通にやり、尚且つ通常運行しているこの女に恐怖してる。
こいつは異常だ。
自分の生命なんて、これっぽちも大切にしていない!!
言うのは簡単でも実践する前に踏みとどまる。
こいつはやった。
こんな奴、勝てるわけ無いじゃん!!
異議ありよ、志田
勝手に自分の身の潔白を証明しないで頂戴
志田に異論があると言い出したのは速水さん。
彼女は志田を睨みつけて言った。
その言い分が真実だとすると、確かに貴方は狼じゃないわ……
でも、貴方を殺せるのは、誰も狼だけとは言ってないでしょう?
誰であろうが、貴方を殺せる……
武器を持っているんだからね
死んでも潔白にはならないわよ
あ、そっか。
みんな武器持ってるんだ。
だから志田を全員殺せる。
狼じゃなくても、そこは関係ないんだもんね。
でも不死身の狼なんて、極端にゲームクリアの難易度が跳ね上がってしまう……
それもアンバランスだから、一応貴方に関しては保留にしておくのが妥当でしょう?
いや、まあ……それでもいいけど……
私はちなみに役職もう明かすけど、村人ね?
速水さんはクリアできないわけじゃないけど、それだと余りにも理不尽だからその可能性はまだ考えないと志田の潔白を保留にした。
こんなことだろうとは思ったけどね
あの不自然な挑発と進行役なんてしてれば、死なれたらゲームの円滑な進行の妨げになるし
貴方は有利な状態で挑んでるんじゃない
まぁ否定しないけど
一応代理だし?
死んじゃダメじゃんそういうの?
ま、そういうことで私を追い出しても無駄だよ?
余計に訳わかんない状態に陥りたい?
それが嫌なら私は追放しないことだね
さらっと認めやがって卑怯者ッ!
声に出したいけどそんなこと無意味だ。
分かりきったことだ。こいつは向こう側の人間だ。
追放しても混乱するだけだし、悔しいけど殺して無駄なら放置するしかない。
村人なら、流れには影響しないし……。
始まって早々。
わたし達は、殺せない最悪の敵を見つけるのだった……。