迫り来る拳の前に
あたしは何もできず硬直した。
目に映り込む景色は
まるでスローモーションみたい。
頭の中ではぐるぐると走馬灯が回り始めた。
迫り来る拳の前に
あたしは何もできず硬直した。
目に映り込む景色は
まるでスローモーションみたい。
頭の中ではぐるぐると走馬灯が回り始めた。
みっちゃんとの思い出ばかりが
思い出される。
……みっちゃん、いつでもあたしの事
受け入れてくれてる……。
あぁ、あたし
自意識過剰だったかな……。
みっちゃんだって
こんな扱いづらいあたしに
付き合ってくれたのに。
あの日の事が、
何かの間違いなんじゃないかって、
ずっと引っかかっていて。
だけど、あたしが聞いた言葉は
重くのしかかってきて……。
また、拒絶していた。
また、素直になれていなかった。
また、一人になろうとしていた。
……もう最後だし。
最後くらい素直になろう。
現実を受け入れよう……。
みっちゃん、ありがとう。
おねえちゃん、ありがとう。
レム、他の人に迷惑かけないでね。
目の前のレムの拳が全てを覆った時
あたしはすっと瞼を閉じた。
違う!
そんなの!
また自分を押し殺してる!
受け入れるのは
自分そのもの…
自分の心だ!
まだまだみっちゃんと
話がしたい!
まだ餃子を食べたい!
まだ生きたい!!
パチリと目を開け、
迫り来るレムの手の前に
咄嗟に手をかざすあたし。
止まって!!!
巨大なレンガ造りの手は
到底止まる気がしない。
それでも、逃げない。
心では絶対に。
拳が当たったと思った瞬間。
周りの風景が一変した。
あ、あれ……。
ここは……教室の前?
りっちゃんは友達じゃないよ
誰かが小走りで走っていく。
あれは……。
あれは…あたし……?
あたしが走っていった……。
あたしの背中を見ているこの世界は
誰の世界……?
ボクハ ミタンダ。
ボクハ キイタンダ。
……え?
えーーー!衝撃ーー!
親友だと思ってたー!
あ、そういう意味じゃないよー!
……どういう事?
りっちゃんはなんていうか、ソウルメイトかな?
ソウルメイト?
りっちゃんはね、昔の私に似てるの。
かけがえの無い、放っておけない存在なの。
ふぅーん……。
へー。
へー。
へー…………。
……涙が止まらない。
……なんだ……。
……ただのあたしの勘違いだった。
……みっちゃんは、あたしの事
大切に思ってくれていた……。
ヤット ツタエラレタ。
……この声。
……さっきも聞いたこの声。
……レムなの?
ボク…… コトバ ダト
ウマク ツタエラレナイ。
……そうだね。
キミガ モウイチド ボクヲ
ウケイレテ クレルマデ
ズット マッテタ。
……どういう事?
ボクハ キミノ
ココロノ カケラ……
ココロノ イリグチ
マモル カケラ。
こんにちは
コンニチハ
みっちゃんハ
キミガ ココロニ
トオシテ イイッテ
オモッタ。
ボクハ ヨロコンダ。
イツモ オイハラッテ
バカリ ダッタカラ。
……そうなんだ。
デモ、アノヒ。
キミハ ココロノ ナカカラ
みっちゃんヲ オイダシタ。
ソノトキ
イリグチ二 イタ ボクモ
イッショニ
ハジキ ダサレタ。
……。
ソシテ ボクヲ
オイテ イッタ
デモ……
マタ モドレタ。
……レム。
タダイマ。
……おかえり……。
私の門番さん
つづく