ひゃっほーい!!!

 仮眠をとったり食事したりで、山を下り終える頃には日が暮れ月も出てきた。
 そこで僕らは、狼竜の背中に乗って王国まで帰ることにした。

 グラン王国へ帰るわけだが、手前でクレアが待ったをかけた。

このまま狼竜で戻るのは騒ぎになるわ

なんで? いいじゃん! 注目の的だぜ!

ばか! この子に何かあったらあんたのアソコ、ちょん切るからね!

おい! まだ使ってもねーのに!!

ぞわっ!

 ああ、考えただけでも痛みが走る。

 狼竜は少年の姿へ戻った。

しっかし、月が出てる時しか飛べねーっての、何とかなんねーのか?

もうちょっと大人になったら充電が持つようになると思うんですけど……

月明かり充電式なの!?

うん! 自分で元に戻ることもできるんだけど、変身するには月パワーが必要!

 ちなみに狼竜のレオンは、僕の命の恩人だから……というより、可愛いから一緒に連れて行くことに決まった。
 主にシェリーの独断によって。

だいたいシンがあんなとこで地割れを作るから僕が落ちたんだろ!

だったらもっと強くなれ! 人のせいにすんなよ!

 シンとは友達になった。

 が、シンはなんでもハッキリ言うし、わがままなのでよく喧嘩になる。

 とはいえ、心のうちを言い合って喧嘩ができるということは素晴らしいことか。

 今までの人生には無かった経験なんだから。

 こうして、シェリーはレオンを連れ、一度王室へ。

 各自解散となった。

 当の僕は、王国から提供してもらっている宿に戻りベッドに寝転がる。

ラファエル様、どうしてたかな

 今回は全然罵倒されることがなかったから少し寂しかったな。

 ああ、あの冷たい目で蔑まれたい。

……やばいな、ドMに目覚め出しているのだろうか。

 いやいや、僕が僕でいるためのカンフル剤なだけだからね。

 決して豚扱いされたい訳では……。

にゃ(戻ってきたのね)

わっ!!

 ラファエルの声がして僕は飛び起きる。

にゃ(相変わらずキモ元気そうね)

ええまあ……

って、誰!?

にゃにゃにゃ(何を言っているの、天使の存在を忘れるなど地獄へ落ちるわよ、むしろそうなるように閻魔に申請しておくわ)

え、だって……なんか丸くないですか……?

にゃ? にゃにゃ(丸い? 少しばかりキャットフードを食べ過ぎたからといって、そんな驚くほどではないでしょう)

いやしかし……鏡とか見ました?

首輪まで付けてもらっちゃってからに。

にゃ(見てないわ。そんなに驚くことなの?)

ええ、それはもう……

にゃ(ちょっと見てくるわ)

 そう言ってラファエルはお手洗いへと向かった。

ふんぎゃあああああああ!!!

なんじゃああ!!!

 おそらく今のはラファエル様の叫び声だ。

 僕は急いでお手洗いへ向かう。

にゃ! (来ないで!!)

だ、大丈夫ですか……?

 ラファエルはぼてぼての身体を揺らしながら、のっそりと出てくる。

にゃ(大丈夫よ。豚なんかに心配され……)

にゃ(って今は私も豚だわ)

ちょ、人型のラファエル様もやばいことになってんですか?

にゃ(ええ、生きているのが罪なぐらいにね)

うわわ、自分を罵倒し出した!

にゃ(もう這いつくばって生きるわ。顔も上げないよう気を付けるわ)

そんな! ラファエル様!

にゃ(様とか呼ばないで。メス豚で結構よ)

ええ!? そんなあ! 僕を罵倒してくださいよ!!!

にゃ(本当にごめんなさい。生きててごめんなさい)

ちょ! 何言ってんすか! 駄目ですよ! 僕がMなんですから!

にゃ(私、生まれ変わるわ)

いや、天使はむしろ生まれ変わらせたりする側なんじゃないんですか!?

にゃ(さよなら)

 そう言ってラファエルは去っていった。

——数日後。

 ダイエットに成功したラファエル様は、もとに戻って帰ってきた。

返して

へ?

このあいだ私が言った言葉達を返して

私をメス豚と呼んでとか言ってたやつ?

ファイアボール

うわわわわごめんなさい!

あなたに放った言葉達すら可哀そうだわ。冥土へ送ってあげる

勘弁してくださいよー!

 こうして、罵倒天使様は凶暴性も増して帰ってきたのでした。

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