前回までのあらすじ。




豚吉

あァァァんまりだァァアァ

涼子さん

あんず、いるか?

あんず

涼子さん。どうしたんですか?

涼子さん

いや、花音のためにもたまには
現役アイドルと晩飯くらい一緒に
食べさせてやりたくってさ

あんず

何ですかそんな急に。花音ちゃんに何かあったんですか?

涼子さん

いや、花音は元気さ。
花音もあんずのことすげー好きだからさ。
花音の喜ぶことしたくって。
たまには母親らしく……な。

あんず

なにそれっ。
涼子さんはずっとお母さんらしいじゃないですか。

涼子さん

やめろよお世辞なんて。

涼子さん

……ん?
おい。
なんか焦げくさくねーか?

あんず

やばっ!火つけっぱなし!

あんず

あーあー。
駄目じゃん。
また失敗しちゃった

涼子さん

料理なんて始めたのか?

涼子さん

……にしてはこの手際
……見るからに
最近始めましたって感じだな

あんず

そうなんです。
今度料理しなきゃいけない番組があって
そのためにもう特訓中

涼子さん

なるほどね。
袖、捲ってみせろよ

あんず

え?

涼子さん

これも大方、練習中に
怪我したって感じか?

あんず

恥ずかしながら……

涼子さん

じゃあ今日はアタシが
みっちり教えてやるから
それで作ったもの一緒に花音と食べよう

あんず

い、今からですか!?

涼子さん

当たり前だ。
買い出しのついでに花音も拾って帰ってくるから
それまでにこの散らかしたキッチン
ちゃんと片付けておけよ?

あんず

ありがとう涼子さん。
気をつけて行って来て

一方その頃、俺は……。

真守

……

豚吉

おお~。
これはレアものの宇宙世紀グッズ。
中々通ですなぁ~
いい趣味してますなぁ~

真守

おい、触るなよ。
豚菌が伝染る

豚吉

豚菌!?

豚吉があんずの部屋に行く涼子さんに着いて行かないように目の前で見張っている羽目になった。

何故こんなむさ苦しい奴と同じ部屋にいなくちゃいかんのだ。

真守

なんで豚吉と一緒に留守番なんだよ……。
俺もあんずの部屋に行って中の模様見たかったわ

豚吉

森野殿、拙者も引くくらいの
変態ですなぁ

真守

ぶん殴りてえ……



唐突にスマホのメッセージアプリが起動し
機械音を鳴らす。


画面を見ると

涼子さん


と書かれている。
一体何があったんだろうか。
俺はメッセージの内容を見る。

真守

……

涼子さん

森野。
あんずのことは心配するな。
お前の勘ぐってたようなことは何もない。

真守

なるほどな。
おい、豚吉。
あんずのことは俺達が勘ぐってたようなことは
何もないそうだ。
だから無駄な心配してねーで
ありったけの金を貢げ豚

豚吉

なんか最後すごい偏見をぶつけられた気がするでござるが……
とにかく良かったですなぁ~

涼子さんがそういうのであればそうなんだろう。


結局俺は突然現れたこの豚野郎に
振り回されたってだけか。


……そう思うと無性に腹立ってきたな、こいつ。


何はともあれ。
俺のマンションに住んでいる誇りのアイドルさんは
別にいじめを受けているとか何でもないってわけか。


今回の件、
涼子さんがいなかったら俺はここまで
これなかったのかもしれないなぁ。

結局あんずの悩みを聞き出してくれたのは涼子さんだし、
もしこれが仮に俺が聞きに行っていたら……
果たしてちゃんと答えてくれていただろうか。


こうやって何でもないことが分かったからこそ、
今回の涼子さんには本当に感謝しなくてはな。

涼子さん

追伸。

つまり、あの豚野郎は今回の件とは
なんら関わりのない
ただのストーカーだったってことだ。

通報しといてくれ

豚吉

お?他にはなんてきたでござるか森野殿

真守

……

あ、もしもし?
警察ですか?

こいつです。

pagetop