狼竜ってどんな敵なのかなー?

 僕らはSランク任務をこなすべく、討伐対象のいる山へ向かっている。
  ギルドってゆうか、パーティとも呼べない人数でSランク任務なんて、本当に大丈夫なんだろうか?

狼竜。別称ホワイトドラゴン。はぐれオオカミが月の明かりを受けて竜と化したレアモンスター

へえ。竜ってトカゲの類かと思ってた

普通はね。でも狼竜は特別

四本足で動物のように歩くんだってねー

……

シン? 大丈夫?

 いつもテンションの高いシンが無口である。

 気になることはいっぱいあるが、声を掛けられない僕。

シン。拓雄さんにちゃんと話しておいたほうがいいんじゃなくて?

ああ。そうだな

……やっぱり人殺しなの?

拓雄、さすがにそれは無神経

あわわ! ごめん!

ああ。そうだ。俺は前に人を殺したんだ

え……?

父親をも殺したんだ。この手で……!

違うわ! それは仕方なかったのでしょ!

違うもんか。俺がもっと強ければ親父を殺さずに済んだんだ……

そう言って、シンはその出来事を語りだした。

——三年前。

 シンはとある田舎の村で育った。

 父親は戦斧の名手だった。

シン、今日も斧の稽古つけてやるぞ

えー、いいよ俺は! まだ子供だぜ

 シンの一家は狂戦士、いわゆるバーサーカーの血筋。
 成人すると目が青くなり、自らを異常興奮状態にして物凄い攻撃力を発揮できるのだ。

 それで何度も魔物や盗賊から村を救い、王をも守ってきた英雄だった。

まったく、俺がいなくなったらどうすんだ

大丈夫、親父は負けねーじゃん!!

 そんなある日、シンの村へ盗賊が現れた。

 盗賊達は村を襲い、略奪しようとした。

 山奥の村、そんなことはよくあることだった。

 そこへシンの父親がいつものように斧を振りかざし、盗賊をバッタバッタと薙ぎ倒す。

 彼らは一目散で退散した。

もう来んなよ






 しかし、時を経て再び盗賊達は現れた。

 そこには狼竜に乗った魔術師の姿もあった。

……

 とはいえ、竜相手にも戦ってきたシンの父親にとっては、たいした問題ではなかった。

おーおー、なかなか手ごわそうじゃん


 しかし、一度は退散させるも、その魔術師は賢かった。




 この村は、シンの父親だけが要であると悟った。



……


 そして魔術師はシンを攫った。

くそっ、離せ!!

 まだ目の色の青くないシンは弱く、抗う術がなかった。

 シンを人質にして父親を捕らえ、妖術をかけた。



 シンの父親は魔術師の言いなりになってしまったのだ。

……村人を殺せ


 父親は従った。

 いや、従うように身体が支配されていた。

くそっ


 守れる者のいない村人達は為す術もなく。

 シンの父親に惨殺された。

……

 魔術師はシンを解放した。

……我が子をも殺すがいい


 逆らうことのできない父親の刃は、シンへも向かう。



シンは父親に首を捕まれた。

お、親父……! ぐるじい……よ


その時、父親は涙を流しながらこう言った。

俺の両腕を……切り……落としてくれ……

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