キングオーク討伐……これなんかどうだ?

いいわね

 僕らは酒場のクエスト掲示板を見て、どの依頼を受けるか考え中。

 クエストの難易度は、簡単なDランクから難しいAランクまで振り分けられているようだ。
 まれにもっと難易度の高い、Sランク任務なんてのもあるらしい。

って、それAランクって書いてあるよ!?

本当だ、こんなんでAランクだとか、笑っちまうな!

いやいやいやいや、僕初心者! 初心者いるんですけどー!

 忘れてた。

 シンは王国ナンバーワン。
 そしてクレアは宮廷魔術師だった。

この任務クリアしたら、違う国に渡ってみねーか?

わあ! うちも行きたい!

あたしも外交のために見聞を広めたいわ

だよな! ワクドキが止まらねーよな!?

僕、家で留守番してるね!

は? お前が言い出したんじゃん! 拓雄、友達なんて口だけだったのか? やっぱり俺なんかとは……

婿失格

ちょ、シェリーさん! どうなんすか!? いきなりAランクとか無理げ―でしょ!?

キングオーク見てみたかったのよー! 楽しみだわ!!

僕、初任務で絶対死ねる!

 せめてラファエル様でもいれば……。

 僕達はクエストを受注するためカウンターへ向かった。

おっさん! あれまだやってる!? オークキング討伐っての

シンか……

 シンは相変わらずの大声で話す。

 心なしか周りからジロジロ見られている気がする。
 まあ、王国ナンバーワンだもんな。

あれ、見て。シンよ

うわ、シンがいる

あんなやつ早く死んだらいいのに

人殺し……

……?

なんか、違う?
悪口のように聞こえるけど。

人殺しっつった今?
シンが?

すまんな、たった今オークキングは倒されたらしい

まじかよ! ほかに何かねーの!?

 シンは気にせず話し続けている。

さっき入ったクエスト、見てみるか?

おう! さんきゅ!

 シンはクエストの束を奪い取り、ペラペラと目を通していく。

 すると急にシンの手が止まり、血相が変わっていった。

おっさん。これもらうから

 そう言ってシンは酒場を飛び出す。

おい! それは!

 どうしたんだ急に?

ねえ? 今のクエスト何でしたの?

あれは狼竜退治のクエストだ

狼竜?

竜の一種ね

だからか

え? どうゆうこと? てか、ランクは大丈夫?

ランクは勿論……Sだ

あばばば

 僕はひっくり返った。

ちょっと、拓雄さん! 大丈夫?

勘弁してよお。なんでそんな難しいのを

シンは狼竜に、とある因縁があるのよ

確かになんか深刻そうだったね

とりあえず追いかけましょう

 僕らは酒場を出て、シンを追った。



 だが、思いのほかシンは広場で待っていた。

すまん! すまん! 友達を置いていくなんて俺としたことが

どうしたの?

いやいや、なんでもねーよ! とりあえず討伐いくか!

ええ! 本当に行くの!?

あったりめーよ! 大丈夫、みんなまとめて俺が守ってやりゃあ!

シン……そういうセリフは拓雄さんみたいな男前が言うセリフよ

 人殺し。
 そう陰口を言われていたことが気になる。
 しかし、触れていいものかも分からず、コミュニケーションの下手な僕は、ただただスルーすることにした。

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