魔王が放った暗黒の球体目掛けて、一人の男が飛んでくる。
それは森を抜けた先の方から。
エンチャント・シャイン!!!
烈光断!!!
魔王が放った暗黒の球体目掛けて、一人の男が飛んでくる。
それは森を抜けた先の方から。
男は光った斧を球体めがけて振り抜くと、凄まじい爆発音と光を放ちながら黒い球体は消滅した。
た、助かった……?
辺りが明るくなっていく。
いつの間にか夜も明けていた。
くそっ、力が入らぬ……覚えてろよ拓雄、浮気者は絶対ゆるさんからの!!!
魔王は薬の効果のせいか、疲れ切った様子で、城の方向へと逃げるように飛び去った。
つか、あんなに羽広がるんだ。
触りたかったな。
僕はヒーチと手を繋いで森を抜けた。
澄んだ空と広野。
そこにはエルフ族のみんなとラファエル、そして三人の人族らしき者達が待っていた。
ラファエル様! この人達は……?
にゃー(貴方達が魔王城に連れて行かれたあと出会ったのよ)
よう! お前が勇敢なる戦士、拓雄だよな!?
え? 僕ですか?
ああ。エルフ達からも話は聞いたぜ! 飼い猫を操り、皆を助け出してくれたそうじゃねーか
いや、飼い猫とか言っちゃまずいです。絶対怒ります
確実にラファエルから冷たい眼差しを向けられているのを感じるが、怖くてそっちを向けない。
俺たちはギルド『獅子奮迅』だ。といっても今は三人しかいないけどな!
さっきの攻撃は貴方が?
あー、俺の斧にこの人が光付与してくれて、それでぶった切ってやったのさ
そう言った男性の後ろから、ひょいと少女が顔をのぞかせる。
弱そうな人……
おっしゃる通り
彼女はこの国でも数少ない、光属性魔法を操る天才魔術師、クレアだ
光……。
こう見えて彼女はけっこういい歳なん
男はクレアという少女(?)に殴られ、飛んで行った。
黙れ、シン
飛んでった彼がうちのギルドマスター、シン。あたしはシャーロット。シェリーでいいですわ
あ、僕、茂木拓雄です。よろしくです
シェリーと握手を交わしていると、シンが帰ってきた。
おほん。今回の依頼はなにせ王国直々の危険な任務だったからな。よくやってくれたよ
にゃ(おもに私が)
しっかし勇敢で男前とは、憧れだぜ! 俺なんかこんな不細工だからよ! 羨ましいかぎりだ。ははは
ははは……
しかもすっげーポヨっ腹!
ちょ、やめてくださいよー!
馴れ馴れしい人だな……。
しかし、ラファエル様は話ができないのに、どうやって助けを呼んだんだろう。
まあ、今はいいか。
いろいろあって疲れた。
とにかく僕らは助かったんだ。
僕らはシン達に連れられ、王国に保護されることとなった。
シンとの出会いが、後の人生に大きな影響を与えることになるとは、僕はまだ知らなかった……。
ちょい、拓くん
どうしたのヒーチちゃん、そんな怖い顔して
魔王とキスしたって話、じっくり聞かせてもらえるかな?
!?