南青山病院前の道路。

車を停める真。
後ろで寝ている花蓮。

ごめん、花蓮起きて。ここまでしか送れない

起き上がる花蓮。

花蓮

どうして?

ごめん、ちょっとこのまま寄らなくちゃいけないところがあるんだ

花蓮

彼女のところでしょ?

…そうだね

花蓮

もう、いつになったら会わせてくれるの?

…どうだろう、いつだろうね

花蓮

きっとその人に会うことも私の宿命だと思うよ

…そうだね

ドアを開けて外に出る花蓮。

花蓮

またね

待って

助手席側のガラスを開ける真。
花を差し出して

花蓮、未来を諦めないでくれ

受け取る花蓮を抱きしめる。
地面に落ちる花びら。
Uターンする真の車。
後ろ髪引かれるように車の影を目で追う花蓮。


病院の玄関で待ち構える花園と草野のパトカー。
貴子もいる。
トボトボと花蓮が歩いてやってくる。
貴子が駆け寄る。

花蓮

あれ?吉村さん

貴子

花蓮ちゃん、どこ行ってたの!お兄さんは!?

花蓮

はい、彼女に会いに行くって

花園と貴子、顔を見合わせる。

貴子

愛真おー!ふざけるなー!

発狂し、走ってどこか行く貴子。

花蓮

志村さーん!!

花園為五郎

(トランシーバーで)容疑者愛真、車で逃亡した模様。至急追跡願います。特徴は20代半ば、身長は171センチ体重60キロ未満。ジャガーで逃走したものと思われます

花蓮

あの…私の兄、何かしたんですか?

唇かみしめる花園。

渋谷駅。

走り続ける貴子。
道端に停車している高級車を発見。

貴子

いた!愛真おー!!

車の中を覗く。
誰もいない。
シートには携帯電話置かれている。
キーは付けっぱなしで乗り捨てられている。

貴子

ちきしょー!!

ドアを爪で掻き毟る貴子。

福島県・磐梯熱海駅のホーム。

枯れた森林に囲まれた駅。
電車から降りてくる真。
息は白い。
駅員に手切りで切符を渡す真。

すいません。道をお聞きしたいのですが

駅員

はいどちらへ?

この辺で温泉てどこでしょう?

駅員

えー、そうですね。ここらへん一帯が温泉街でしてえ。どこらへんをお探しですか?

そうですね…えー、たしか川が山沿いに流れてて

駅員

ああ、五百川の事でしょう。(地図を指差して)この五丁目が一番昔からある温泉街で、夏になると萩姫祭りがあります

萩姫祭り?

駅員

はい、鎌倉時代、公卿の娘の萩姫様が不治の病を患っていました。ある日、不動明王のお告げで東北の五百本目の川岸に霊泉ありとのお告げを聞き、幾多の苦難を乗り越えてこの土地に訪れ、湯に浸かり全快したのが由来とされています

不治の病ですか?

駅員

はい。この駅前を抜けて、線路を越えて右手ずっとに歩いていくと、しばらくして左側に蓬山遊歩道があります。お散歩にはとてもいい塩梅ですよ?

ご丁寧にありがとうございました

駅員

いえいえ。ごゆっくり


続く

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