日が暮れてしばらく経ったが、まだ未明。
長い長い初日の終わり。
日が暮れてしばらく経ったが、まだ未明。
長い長い初日の終わり。
なんなんだろう……どうしてこんなことに
石造りの家から一室を借りて、床に付けなかった。当然、死ぬかもしれない夜を平然と寝て過ごせるわけがない。
……
ご丁寧に整えられていたベッドに腰掛けながら、何をするでもなくぼんやりと暗闇を見つめる。
どう? 気に入ってもらえそうかな、僕の催しは
っ?!
怖くて落ち着かなくて、震えていると、ふと横から声をかけられる。ミッシェンだった。
いつの間に部屋に入りこんだのか、横にいたのか、全く気づかなかった。
貴方が……あたしも巻き込んだの?
そうだね。しかし語弊がある
なんだっていいよっ! こんな、こんな変なこと起こさないでよっ!
彼の顔と、目と、飄々とした表情を見て、言いたくても言えなかったことが爆発する。
おや、お気に召さなかったかな
冗談じゃないわ! こんなっ、こんな人の命をゲームで左右するような真似なんて!
何で、こんな目に。
不幸ながら連れてこられた同じ境遇の十五人の中では口に出来なかった不条理への不満が、関が壊れるように溢れ出てくる。
確かに、君は死ぬかもしれない
んなっ……! 勝手に、勝手に殺さないでよ!
でもコレは、君を巻き込んだゲームじゃなく、君のために開催されたゲームなんだ
……は?
あたしの、ために……?
君の“それ”が死ぬべきが死なざるべきか。このゲームで見定めさせてもらう
何……何、言ってるの
死ぬべきか、死なざるべきか?
それ、って?
あたしが、何をしたって言うの
君が何をしたってわけじゃない。君が、そうだ、ってだけさ
何……それ。意味分かんない!
登場した時から訳のわからないことを言う彼に、感じていた苛立ちも腹立たしさも全部ぶちまける。
ふざけないでよ! 勝手に、死ぬべきかどうかなんて、赤の他人に何でそんなこと言われなきゃなんないの!
君と僕は、ずっと昔から一緒にいる
あたしは、貴方のことなんて知らない!
知ってるはずだよ。僕は、君と生まれた時からずっと一緒だった
知らない! 知らないわよそんなの!
今に分かる。そして、それを殺すか殺さないか。それも、全部君が決めることだ
やめて! もうやめてよ! 死にたくなんてない!
馬鹿らしいことをそれも延々と聞かされる。不快で、おびただしい嫌悪感が胸をつっかえることなく出てくる。
なんで……あたしがこんなこと……
いわれのない罪。一方的な暴虐。今のあたしは、陥れられている、という一心。
出てって
リカ
出てってよ!
……そうか。でもコレだけは聞いて
聞きたくない。聞く耳も持ちたくない。
しかし、相手は隣にいる。嫌でもそれは、耳に――心に、入ってくるのだった。
君が気づいていないものは、ゆくゆく自分で気付くことになる
その時に、君の生死を決めるのは、君だ
……
僕は今日で消える
……っえ
いつだって、自分を確かに持って。ね
そう言って、ミッシェンはあたしの額にふ、と指で触れる。
す、っと意識が落ちる。
何も分からなくなる。
今の出来事なんて、全部夢だったように。全部全部、するすると、ザルから水がすり抜けるように。
こんな経緯で、あたしの初日が終わる。
初日から2日目。
夜が明けました。
翌日。
悪戯者ミッシェンが、無残な姿で発見された。
――初日
〆