遣使ロート

……ッッ!

遣使ロート

ッキャアアアアアアアアアア!!

一般人リカ

っ?!

 悲痛なまでの絶叫に、落ちていた意識が無理やり引き起こされる。
 どうやら、寝ていたようだ。

一般人リカ

う、んぅ……

遣使ロート

あっ……ああぁっ、あなた……!

一般人リカ

ロート、ちゃん……? どうした、っの

 ロートが私の顔と、その隣の虚空を交互に見つめている。
 正確には、

一般人リカ

っひ

 血だらけの、青年の死体。

一般人リカ

なっ、なな、何っ、何なの、これっ……?!

遣使ロート

り、リカさん、あ、あなたが

一般人リカ

……っあ、ま、待って! 待って違う! 私じゃ……!

 床に尻餅をついたロートが、震える身体で必死に床を這い逃げ出す。
 彼女からの誤解と、何かの死体と一緒に残されたあたしは、ふと隣を見て、

一般人リカ

……ッ!

 凄惨だ。
 床一面に広がり、白髪さえも染め上げる紅と、見るからに暴力的な服の裂傷。うつ伏せに転がっている、誰か、だったもの。

一般人リカ

ミッシェン……

 見紛うことなく、彼のものだ。

一般人リカ

『人狼は、夜毎に村人一人を襲撃する』……って言ってた通り、だけど

 昨夜、昨日で消えると言っていたのも、このことだった?
 であれば、ミッシェンは初日に襲撃されることが分かっていた、というの?

一般人リカ

こんな、殺され方……

 見る影もなくなるまでめちゃくちゃに引き裂かれているのに、その現場に隣にいるのに。
 こうまで無残な殺害現場を背景にしても、気付いて起きる予感は一切しなかった。

一般人リカ

う……

 怖い。
 あたしは隣にいた。

 ゲームのルールかは分からないけれど、襲撃は夜毎に一人ずつ。ルールがなければ、ついでであたしも一緒に、こう、だったかもしれない。
 それも残念なことに、襲撃は今回だけじゃない。


 明日、明後日――と、次は、次こそは自分かもしれない、と怯え続ける日々になる。

奏者ハーメルン

どうしたっ、何が起きたんだっ?!

一般人リカ

あっ、ハーメルン……

求道者アリス

表でロートがわーぎゃー騒いでたけど、一体何が起きた……てっ?!

 外に助けを呼びに行ったロートにつられてか、ハーメルンとアリスが部屋に入ってくる。

奏者ハーメルン

……っ

求道者アリス

うっ……わ

一般人リカ

あ、あの……あたしじゃ

奏者ハーメルン

とにかく、皆に知らせよう

 犠牲者が出た。
 本格的な、人狼ゲームの始まりである。

遣使ロート

っひ……

 全村人が呼びだされて、話し合いを始める。
 ロートが、あたしの姿を見て小さく悲鳴を上げたのが目についた。

一般人リカ

(参ったな……)

 状況証拠からして自分が疑われるのは明白だ。まずはこの疑念を取り払うことから始めないといけない。

奏者ハーメルン

もう皆も知っての通り、村にいた人から死亡者が出た

雪上姫ラヴィーネ

本当に、本当に起きたんですの……?

奏者ハーメルン

皆をこの村に集めた、と言っていた張本人であるミッシェンが、無残な姿で発見された

 朗々と告げられる事実。現場の隣にいて、否が応でも認めざるを得なかった自分。それと違い、話でしか聞いていなかった村人たちにはざわつきが生まれた。

奏者ハーメルン

死体を見るに、彼の言っていた人狼による襲撃、と見るのが適切だろう

少女シラユキ

マジで……やるっていうのね、人狼ゲーム

塔入娘ラプンツェル

えぇ、ということで

 ぴょこ、と遅れて出てきた長い金髪の女の子が、覚悟を決めたようにこう言う。

塔入娘ラプンツェル

あたしの……出番なのね

 共有者による、村の取り決めが始まる。

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