某都内の一角、彩萌市では、二つの私立探偵社が日々対立していた。
一つは依頼者を第一に考え、価格から仕事に至るまでの全てが良心的な黒狛探偵社。社長には地域の人気者である池谷杏樹を据え、彼女の「優しき探偵」という理念に賛同して集まった個性派の凄腕探偵達が部下として脇を固めている。
もう一つは依頼者を第一に考えるのは黒狛と同じだが、何より迅速な仕事を徹底する冷静沈着な白猫探偵事務所。社長は元・刑事の蓮村幹人。警察や地元の情報屋とのコネクションを深く築いており、「証拠を確実に揃えてくれる探偵社」というお墨付きを彩萌警察署から正式に頂戴している、まさしく実績で成り上がったプロフェッショナルの集まりだ。
この二社はそれぞれ、彩萌市の顔役として機能している。
なのに、共存という道を選ばず、何で対立しているのかというと――