会話、と言っても窓越しで、ジェスチャーとガラスに書いた単文だから、内容なんてあってないような、簡単なものだ。
あるとき彼女の年齢を知って僕は驚いた。
会話、と言っても窓越しで、ジェスチャーとガラスに書いた単文だから、内容なんてあってないような、簡単なものだ。
あるとき彼女の年齢を知って僕は驚いた。
え、中三? 高こう生だとおもってた
驚いたことに彼女は中学三年生で、高校一年の僕より年下だった。
年上か、少なくとも同い年と思っていたので僕は心底驚いて、そう伝えると彼女は、頬をぷくっと膨らませて怒った顔をして、
ぴちぴちのJCです! ……ふけてみえます?
それからちょっと落ち込んだ顔でそう尋ねた。僕は慌てて首を振った。
大人っぽかったから
ぴちぴちのJCって自分で言う時点で本当に中学生なのか疑ってしまうが、口には出さない。口に出しても聞こえないだろうけど。
高校生なんですか?
彼女にそう聞かれて、うなずき、指を一本立てて一年とアピール。
中学生かと思いました。こどもっぽいから
お返し、とばかりに彼女はそう書いたけど、まだまだ成長期の僕の体はすでに170半ばで、実年齢より上にしか見られたことはない。だから、
はじめていわれた。ありがとう
……どういたしまして
ムスッとした顔で彼女はそう書くと、クスッと笑った。
僕らのした会話は、まぁ全然実のない話ばっかりで、
きょう、さむいね
この冬一ばんのさむさっていってました
なんてどうでもいい世間話や、
じゅけんべんきょう、もうやだー
がんばれー
みたいな、愚痴。
このもんだい、わかりますか?
もちろん……わ、わかるよ?
受験生である彼女に先輩として、宿題や参考書を解いてみせることぐらいだった。
それでもそんなつまらない会話でも、ドアを挟んでガラスに文字を書いてやりとりすると妙に新鮮で面白かったりして。
そうやって僕らは毎朝、他愛のない話を続けていた。