ある日のパソコン部の部活終了後…
ある日のパソコン部の部活終了後…
今日も疲れたねぇ~
そんなこと言って、美琴ちゃん。結果は絶好調だったじゃない!
まぁ、そうなんだけどさ
そう言えば、この前の日曜日に椚商業でやった練習試合の時の領収書、今日が提出期限だったよね。
500円までだったら、学校がお昼代を出してくれるって、あれだよね?
それそれ。美琴ちゃん、無くしてない?
大丈夫!財布の中に折り畳んで入れてあるから。
「領収書と現金を引き換え」ってことだけど、マネージャー長の鳳城先輩、その準備で大変そうだよね…
消費税のせいで、¥500ピッタリな領収書を持ってくる人は少ないからね。
¥500を先に渡して、領収書とおつりを返すじゃだめだったのかな?
美琴!いいところを突いたな!
煉先輩!
部長!いい所を突いたって、どういうことですか?
美琴たちは、簿記の授業で「従業員の出張に際し、旅費の概算額を渡した」なんて仕訳を習っていないか?
はいはい!それやりました。
従業員が出張先で交通費や食事代、宿泊代をいくら使うか分からないから、大体の金額を仮に払っておくって、あれですよね。
概算額を仮に払った時は
仮払金/現金
って仕訳になります♪
従業員が出張から戻って、領収書に基づいて旅費が確定し、現金を返された時は
旅費交通費/仮払金
現金
って仕訳でしたよね。
その通り。
今回、鳳城は遠征する部員分の500円玉を用意できなかったから、後日、領収書と引き換えに現金を渡すってことにしたらしいけど、本当は、簿記の「仮払金」の処理みたいに、先に概算額である¥500を渡して、おつりと領収書を後から回収するって方法にしたかったらしい。
私たちが考える以前に、鳳城先輩も考えていたんですね。
簿記には、仮払金に似た勘定科目で「仮受金」っていうものもありますよね。
「仮受金」は、「仮に受け取ったお金」のことで、従業員が出張中にお金を送金してきたんだけど、そのお金が何なのかが分からない時に使用する勘定科目だな。
携帯電話を持っている人がほとんどの現代で、そんなことってあるんですか?
ないとは言い切れないだろうな。
「暇つぶしでゲームやり過ぎて携帯の電源が落ちてて、充電もできない。近くに公衆電話やコンビニもない。やっと見つけた頃には会社の営業時間が終了していた」とかね。
美琴ちゃんも、スマホ使い過ぎて、部活の時間の頃には電源落ちてること、多いよね…
ちょっと紗代…余計なことを…
美琴の携帯って、確か先月出た最新型のはず…どんな使い方したら部活前に電源落ちるんだ…
と、とりあえず、私の携帯の話はいいとして、とにかく、何らかの理由で従業員が出張中にお金を送ったけど、それが何なのかを伝えられなかった時に使うってことですよね。従業員が当座預金に入金したとすれば
当座預金/仮受金
って仕訳でしたよね。
従業員が連絡をよこして、当座預金の入金が例えば売掛金の回収だったと判明したときは
仮受金/売掛金
って仕訳になります。
2人とも、仮払金と仮受金の処理は完璧だな。
ちなみに、決算の時は「仮」と名のつく勘定科目は、例外なく0にするから、仮払金と仮受金も原因をはっきりさせて、残高は0にするぞ。決算で、会社の成績が出る時に「とりあえず」は通用しないからな。
確かにそうですよね。「とりあえず」が通用するなら、簿記で成績なんて出す必要ないですもんね。
そういうことだ。
…
…
そう言えば、美琴はまだ遠征の時の領収書、精算してなかったんだよな…
はいっ。財布の中に折り畳んでありますけど、それが何か?
………………………………………………
無言と視線の圧力が…
煉先輩!?
どうやら困っている人がいるみたいだから、その領収書、早く精算した方がいいと思うぞ…
???
…
???
…
chapter11 に続く