クリスくんの挑発するような言葉に、
ミューリエは眉をひそめた。
睨み合う2人の視線の間には
火花が散っているかのようだ。
クリスくんの挑発するような言葉に、
ミューリエは眉をひそめた。
睨み合う2人の視線の間には
火花が散っているかのようだ。
なんだとっ?
魔王の力が完全に
失われるということは、
今まで以上に魔族の力が
落ちるだろう。
そうなった時、
我々人間が魔界の侵略を
始めるかもしれないのだぞ?
ふふ、ありえるな。
人間は欲望の塊だからな。
そうなった時、
魔族を束ねる存在が必要だ。
デリンやクレア殿に
それが務まるか?
あるいはノーサスに任せられるか?
…………。
魔族内のゴタゴタで
自滅する可能性も
否定できませんね。
そうした未来の道筋も示さずに
命を捨てるなど、
無責任だとボクは思うが。
さすが、
伊達に国王はしてないわね。
親戚である私も誇らしいわ。
それにあなたの命を絶つ
という重責を、
よりによってアレス様に
任せようというのか!
どれだけアレス様の心が痛むか、
考えたことはなかったのかっ!
っ!
クリスくん……。
あなたが死のうが
ボクには関係がない。
魔界も人間に侵略されようが
知ったことか!
だが、これ以上アレス様に
重荷を背負わせ苦しめるのだけは
絶対に許せないッ!
だったらっ、
どうしろというのだッ?
このままでは同じことの
繰り返しだ!
魔王の力は邪悪で強大だ!
糧として恐怖や滅び、絶望を好む!
それを求める!
その衝動には誰も逆らえんのだっ!
貴様に分かるかっ?
自らの意思と関係なく
負の感情を求めてしまう苦悩をっ!
うぐっ……。
アレクの温かな心に触れた瞬間から
私は負の感情を抑えようとした。
だが、ダメだったのだ。
むしろ心の中で
正と負の感情が衝突し、
苦しくてたまらなかった。
アレクは全ての力と
人間の短い寿命のほとんどを
私のために捧げて
その苦しみから救ってくれた。
……でもそれは
アレクの意思でもあったんだ。
ミューリエだけの責任じゃねぇよ。
だが、それは争いの火種を
後世に残す結果と
なってしまったのだ。
ノーサスが魔王の力の封印を解いて
ようやくそれに気がついた。
もはや私の命をもって
償うしかないだろう……。
ミューリエ様、
ほかの解決法がないか、
なぜ私たちに相談しないのです?
シーラ……。
あなたは1人で抱え込みすぎです。
世の中に万能な人なんていません。
だから私たちは
助け合うんじゃないですか。
今までそうして旅を
してきたでしょう?
勇者も魔王も
助け合っていいんですよ。
誰か1人が頂点に立つなんて、
時代遅れですよ。
シーラの言う通りだよっ!
僕も同じことを考えてた。
みんなの助けがあったから
今の僕があるって!
だから今回も力を合わせて
乗り越えようよ!
アレス……。
う……あぁああああああぁーっ!
ミューリエは膝から崩れ落ち、
人目もはばからずに大泣きした。
それからしばらくして彼女の感情が
落ち着いてから、
僕たちは解決策を考える。
さすがにすぐに名案が出るわけはないと
思うけど、
みんなそれぞれ真剣に
考えてくれているみたいだ。
――そうだよね、
だってミューリエは僕たちにとって
大切な仲間だもん。
その後、
いくつかのアイデアが出ては消えてから
不意にシーラが大きな声を上げる。
アレス様、
『あれ』を使ってみるのは
どうですか?
『あれ』って?
竜水晶です。
想いの強さに応じて
様々な奇跡を起こせるんですよね?
あっ、そっか!
僕は懐から竜水晶を取り出した。
確かにこれに想いをぶつければ、
奇跡が起こせるかもしれない。
きっと魔王の力を消すことだって……。
それだけはダメだ!
ミューリエ?
お前までアレクと同じ運命を
辿ることになってしまう……。
えっ?
アレクも竜水晶に願ったんだよ。
魔王の力を消してくれってな。
でもあいつでさえ、
肉体と魔王の力を分離させるので
精一杯だったんだ。
でもすでに分離している今なら、
今度こそ消せるんじゃないの?
例えそうだとしても
代償が大きすぎる!
アレクに続き、アレスの命まで
縮めるわけにはいかない!
……いいんだよ。
僕はミューリエに
助けられ続けてきた。
今度は僕が助ける番だ。
しかしっ!
それにね、
魔王の力を消せれば
世界を平和に
近付けることができる。
みんなに恩返しができるんだよ。
アレス様……。
アレス、あんたバッカじゃないの?
自惚れないでよ!
レインさん?
あたしは自分の意思で
ここにいるの。
だからアレスに恩を売ってるとか、
そういう意識だってない。
つまり返してもらうものもないの!
……あたしにも手伝わせなさいよ。
2人で願えば成功する確率も
助かる確率も
高くなるかもしれない。
レイン……。
そうですよっ!
私も協力させていただきます。
ビセットさん?
お忘れですか、私の試練を。
お互いを信じる心があれば、
想いを合わせることだって
できます。
今回は私も協力させて
いただきますよ!
そういうことなら、
みんなで願ってみましょう!
そうだなっ!
もしかしたら
うまくいくかもしれねぇっ!
……俺は抜けさせてもらう。
デリン……。
俺はお前たちと旅をして日が浅い。
足手まといには
なりたくないからな。
そういうことでしたら
私も同じですね。
しかも私は一度、
アレスを裏切っていますし。
デリン、ミリーさん。
僕は2人にも協力してほしい。
だって大切な仲間なんだもん。
もし2人が協力してくれないなら、
僕は1人で竜水晶に願うよ。
なんだとっ!?
それは私たちに対する脅しですか?
そうかもね……。
でもね、僕はこの場にいる全員が
協力してくれないと
失敗しそうな気がするんだ。
2人を仲間はずれに
するような心じゃ、
想いを1つにすることなんて
出来ないもの。
アレス……。
意地を張っている場合じゃ
ないんじゃない?
デリン、
あんたも素直になりなさいよ。
……ふっ、適わんな。
分かった。俺も協力しよう。
ほかの連中の恨みは
買いたくないしな。
私も協力しますっ!
よしっ!
みんな、アレスに触れるんだ。
アレスは竜水晶を手に持って
想いをぶつけろ。
分かった。
みんなが僕の肩や背中に手を触れた。
次第に温かな力みたいなものが
流れ込んでくるのを感じるようになる。
僕は目を瞑り、
意識を集中させてその力を感じ取るようにする。
一番熱くて勢いのあるのはシーラかな?
弾むように動くのはタックだ。
静と動のリズムがハッキリしているのは
ビセットさん。
温かくて頼りがいがあるのはレインさん。
凛としているのはエレノアさんだ。
威風堂々としているのはクリスくんだろうな。
大きくて力強いのはデリン。
キレが良くて涼しげな感じのミリーさん。
掴み所がないけど心地よいのはクレアさん。
――そして澄みきって爽やかなのはミューリエ。
全員の想いをハッキリと感じる!
竜水晶よ、僕は願う!
魔王の力を消してほしい!
想いが足りないなら、
僕の命や力を奪ってもいい。
だからどうか、
魔王の力を消してくれ!
僕は手に持っている竜水晶に願った。
すると僕の体からみんなの想いが
竜水晶に流れ込んでいくのを感じた。
僕の体からも力がどんどん抜けていく感覚。
魂までもが吸い出されてしまうような、
そんな気さえする。
だんだん頭の中が真っ白になってきて……。
ん……あ……。
アレスっ!
目を開けると、僕はみんなに囲まれていた。
一様に心配そうな顔をしている。
みんな……
僕はどうなっちゃったの?
意識を失って
倒れてしまったのだ。
アレス様っ!
意識が戻って良かった……。
それで結果は?
ふふっ♪
みんなは満面に笑みを浮かべ、
僕に視線を向けている。
あぁ、それはな――
~Fin~
長い間ご覧いただき、
ありがとうございました。
アレスの旅はこれで一旦おしまいです。
でもそれはあくまでも
『このお話では』という意味です。
――だって彼らの過去や未来には、
描かれていない冒険が
たくさんあるんですから。
またいつかお会いできる日が
来ますように……。
みすたぁ・ゆー
ありがとうございましたっ! しばらくは過去のエピソードを修正していく予定です。新作は来月あたりにアップできたらいいなと思っていますっ! ご覧いただき、ありがとうございましたー!!
完結おめでとうございます。お疲れ様でした。各キャラが魅力的で、話はテンポよくて読みやすく、何より勇者が弱いままという設定が斬新でとても面白かったです。
ご覧いただき、ありがとうございました! お楽しみいただけたようで嬉しいですっ!! タイトルが『勇者様はレベル1』ですから、なるべく剣や魔法に頼らない勇者を描いてみました。
素敵な物語をありがとうございます!振り返れば90話もあったんですね…!
お疲れ様でございました\\\\└(’ω’)」////
ご覧いただき、ありがとうございますっ! 自分でも意識しないまま、いつの間にか90幕までいってました。みなさんの応援があったので、最後まで描き切れました!!
レインさんの手が触れている描写が無いのは何故ですか…?
ご覧いただきありがとうございますっ! 失礼しましたっ、私のミスですっ! 教えていただき、ありがとうございます! レインさんから魔法攻撃を受けないうちに、すぐに修正しますっ!
最終章まで読み進めてみました。本当にこの作品で人という生き物の汚い部分、そして"本物"の仲間が出来た時にはどんな苦難にも立ち向かえるのだということが作品を通して伝わって来ました。ゆーさん。気がついたらファンになってました!次回作も期待しています!
お読みいただきありがとうございますっ! 楽しんでいただけたようで、私も嬉しいですっ! 今は本作の続編『僕は駆け出し薬草師』を連載中です。また、本編で描かれなかったエピソードを特別編として、今後も定期的に追加していく予定ですっ!!
ご覧いただきありがとうございますっ! 一気読み、お疲れ様です。作者冥利に尽きますっ!! 続編(僕は駆け出し薬草師)や不定期連載で特別編も更新していますので、よろしければそちらもご覧くださいませっ!
ご覧いただきありがとうございますっ! お楽しみいただけて嬉しいですっ! やめ時はなかなか決めづらいかもしれませんが、作品は逃げませんので、適度なところでお休みくださいませ~♪
読み始めたら止まらなかった
2時間で読み終わってしまったw
こんなによいストーリーを見せてくれてありがとうございます!
投稿頑張って下さい!
応援してます!
最後までご覧いただきありがとうございますっ! お楽しみいただけたようで、私も嬉しいですっ!! 皆様の応援のおかげで、投稿を続けられています。ほかの作品ともども、なにとぞ今後ともよろしくお願いいたしますっ!
最後までご覧いただきありがとうございますっ! 特別編は不定期更新(週1回程度のペース)ですので、更新した際にまたお越しいただけると嬉しく思いますっ!
最後までご覧いただきありがとうございますっ! お楽しみいただけたようで、嬉しく思いますっ!! 特別編や続編(僕は駆け出し薬草師)も更新中ですので、よろしければお時間がある時にでもご覧くださいませっ!
最後までご覧いただきありがとうございますっ! お楽しみいただけたようで、嬉しいですっ!! このあとはテスト勉強も同じくらい熱中してくださいねっ♪
すごく面白かったです!!!これから分岐ルートと続編見てこようと思います!!!ありがとうございました!!!
最後までご覧いただきありがとうございますっ! 特別編もお楽しみいただけたら幸いですっ!! よろしければ続編『僕は駆け出し薬草師』もご覧になってみてくださいませっ♪
おもしろかっですー戦闘参加じゃないこう言った勇者ものは初めて読んだので展開がよめずワクワクドキドキしながら読ませていただきましたこれから他の話しも読ませていただきます
ご覧いただきありがとうございますっ! 積極的に戦わない勇者のお話を書いてみましたっ! 戦い方は色々あるよというのを表現できていたらいいなと思っていますっ!! お楽しみいただけたようで嬉しいですっ♪
最後までご覧いただきありがとうございますっ! 一気読み、お疲れ様でしたっ!! 特別編や続編(僕は駆け出し薬草師)も書いていますので、よろしければそちらもご覧くださいませっ!
最後までご覧いただき、ありがとうございますっ! 良い作品とおっしゃっていただいて嬉しいですっ!! 特別編はまだ続きますので、よろしければご覧くださいませっ!
王道が少ないこのご時世。ここまで清々しく美しい王道に会えたのは何年ぶりか…(うっとり)
男女比も完璧で勇者くんのニコポナデポ率がすごいと感じました。
素晴らしい作品をありがとうございます!
最後までご覧いただき、ありがとうございますっ! お楽しみいただけたようで、嬉しいですっ!! 私も王道好きですっ! でもだからこそ書くのが難しい点もありますね……。アレスくんの笑顔はある意味、強力な武器です。男女問わずイチコロですからっ♪
素晴らしいストーリー構成ですね よく映画で使われる手法も取り入れたりして 上手だな〜って思いました アレク時代のお話も読んでみたいなと 魔王ミューリエが主役で魔族視点のストーリーなんてのも面白そうですが
最後までご覧いただき、ありがとうございますっ! アレク時代のお話は……どうか気長にお待ちくださいっ! 計画はあります!! ミューリエ視点のお話は特別編で書くかもしれませんので、もし公開するとしたらこちらの方が先になると思いますっ。