日々鍛錬

タンゲ村は、ちょうど麓にある村だ。

峠を越えるための宿場としても利用されることから、通過だけならば、そこそこ人も多く、それらを当てにする露店が並んでいた。

シャーロット

わー、おいしそうなのがいっぱい
ゆうしゃさまー、これとかどう?

店主

じょうちゃん

お安くしておくよ

シャーロット

ありがと~

じゃあ
これとこれと

店主

こちらこそ、ありがとよ
一個おまけしておくぜ

揚げ物を受け取ったシャーロットに、何者かがドンっとぶつかってきた。

急いでいるのか、その者は謝りもせずに走り去っていった。

シャーロット

えっ

買ったばかりの揚げ物が一つ足下に転がった。

シャーロットは、あわてて拾い上げたが、揚げ物にはちょっと土がついていた。

しかたなくてで土を払った。

シャーロット

あらあら、落ちちゃった

・・0・・1・・2・・3?
秒ぐらいかしら

ばっちし3秒だから、たぶん大丈夫よね
ゆうしゃさまは、余所見してたし

シャーロット

ゆうしゃさま~、あーん

ゆうしゃ

ぱくっ

このまったりとした大地の香り
存在を誇示する岩のような意思を感じる
カリカリっとした食感

ゆうしゃ

美味なり!!

カスミ

それにしても
何を急いでたんだ

店主

儀式があるんですわ

カスミ

儀式?

店主

たぶん、生け贄の準備ですな

村はずれの娘さんが
持って行かれたとかで

今年で4度目なので
長老連中が重い腰を上げまして

カスミ

持って行かれた?

店主

私は詳しくないので
わかりませんが

魂を?ですか

店主は手を揉みながら話した。

その重い内容とは違い営業スマイルで、他人事だ。

カスミ

神頼みですか

店主

まあ、こんな村でも
神は居ますから

信じる者は救われるんじゃ
ないでしょうか

そういった店主の言葉の裏に、商売の意味が見え隠れするのは、致し方ないことなのかもしれない。

カスミは、そのとき感じた何らかの違和感を無視することにした。

カスミ

ところで、
村長は、どちらに?

店主

それなら

そこの角の
大きな建物ですわ。

その言葉を聞いて、ゆうしゃたちは話を切り上げた。

村長宅へ行こうと歩き始めたゆうしゃたちを、店主が思い出したように後ろから呼び留めた。

店主

ああ、ゆうしゃさん

薬草屋は夜6時までです
おはやめに

シャーロット

ゆうしゃさまのは

わたくしが日頃から
鍛えてあるから

毒殺はあり得ないのです

ゆうしゃ

そうだったのか
よかったよかった

ちょっとびっくりしたよ

カスミ

あんたは
そのあたまを
鍛えた方がいいかも

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