お持ち帰り
お持ち帰り
その日の晩。
生け贄のひよりを説得するために、4人は手はずどおり森の祭壇へ向かうことにした。
彼氏の話では、このタイミングで来ればひよりと接触できるとのことであった。
提灯でてらされた神木のまえには、樽がすでに置いあり、外からはうかがうことはできなそうもない。
そのなかにひよりが入っているはずだ。
用意してもらった樽を前にして、今まで口にしなかった疑問を、カスミは言うときだと思った。
ところで、この作戦
怪しくおもわないか?
そうね
時間も場所も指定されてて
ふつう、罠よね
そう思うだろ?
罠なんですか?
かもしれないって
言ってるんだよ
ゆうしゃがでてくると
めんどくさくなるから
寄せてっと
端に寄せないで
ください
視界の端に寄せられたゆうしゃがもどってきた。
シャーロットは、すぐにゆうしゃの横に寄ると、その腕をつかんだ。
ゆうしゃさまの
疑問は当然ですよ
罠なのに
飛び込むんですか?
ねー、ゆうしゃさま
ねー
二人とも
あくまでも
罠かもしれないです
とウィステリアは意気投合する二人にぴしゃりと言った。
カスミはその言葉に続けて、話を進めた。
でも、死霊術のほうも
手詰まりだし
こっちの方も
調べないとなんだよな
生け贄の目的が
死霊術師の対策だから
臭うのよね
決まったな
方針は決まったようだった。
樽に入るのは罠かもしれないが、死霊術師とのつながりも考え、話に乗ることにしたのだ。
じゃあ、樽に入って
説得すればいいのよね
内容は簡単だけど
誰が入るのかな?
わたくしは、
お断りします
こういうのは
私には合いません
僕が入って
成功するでしょうか
しかたないわね
あそこに
見張りがいるわね
しばいちゃう?
簡単に
言いますな
穏便にするなら
樽を使うべきよね
ここは公平に
じゃんけんにしようか
じゃんけんが公平だというのは、誰が決めたのだろうか。
もし公平であるあらば、それもいいのだが。必ずと言っていいほどウィステリアが負けるのが決まっていた。
渋々ウィステリアが、樽の中に入るとふたが閉められた。
見張りは、特に疑う様子もなかった。話を通してあるようであった。
こうしてウィステリアの入った樽は、ほかの4人の手によって、ひよりの樽の横に並べられることになった。
4人は、物陰で待つことにした。
どれほど時間がたっただろう。
待ちくたびれたゆうしゃが寝息を規則正しくたてはじめたころ、二人の村人が荷車を引いて現れた。男女だった。
そして、二人は、堂々と警戒するそぶりもなく樽を荷車に積んだのだ。
積んだのはウィステリアの入った樽のみであった。
つれてかれちゃいますよ。
いいんですか?
いいわけないん
じゃない?
こまりましたね
どうしましょう
ははは
罠だったみたいね
とりあえず
人質でもとりますか
4人が急いで生け贄の場所へ向かうと、バラバラになった樽の横で、人質予定のひよりが地団駄を踏んでいた。
なんで~!
わたしを~!
つれてぇ~!
いかないのよぉお!
わけわかんない
ところで、あんた
どうやって出たのよ
ぇっ、木がちょっと
腐ってたかも
てへっ
いやはや
聞きましたか
だんな
樽を中から
ぶち破る女だよ
今なら
お安くしておきますぜ