わがまま女神

岩肌がむき出した洞窟の中へ踏み込むと、考えていたほど湿り気はなく、ぽうっとした明かりが奥の方から見えた。

その明かりを目印にして進むとおよそ40坪ほどの大きな空間に出た。

明かりはそこから出ているのだった。

大テーブルが二つ並べられ、その上に色とりどりの食べ物が大皿にのせられ、きれいに並べられていた。

それは食べ物の花が咲いているようでもあった。

休憩をしばらく取っていなかったゆうしゃたちは、そこで急に空腹を感じて顔を見合わせた。

周りには誰も居なかった。

誰の物ともしれず置かれている料理は、何の目的があっておかれているのだろうか。

食べてしまおうかという悪い考えが浮かんだ。

このまま放置してしまえば、資源の無駄である。どこかの誰かのお腹がなるのが聞こえた。

カスミ

シャーロット

シャーロット

私じゃないですよ

ゆうしゃさま
じゃないですか?

カスミ

あたしは
呼んだだけだぞ

やっぱりな

シャーロット

ち・が・い・ま・す。

言い出しっぺが
怪しいんですよ

とシャーロットは少しむっとして、近くにあったバナナを手にとって構えた。

カスミ

お、やるかぁ

カスミもバナナを構えた。

いつもはここでウィステリアが、
「食べ物で遊ばないの」
と仲裁に入るのが常だった。

だが、そのウィステリアは、連れ去られ今いなかった。

いつまで待っても、その声はかからなかった。

タイミングがずれ、なにかが胸に突っかかるような感覚がこみ上げてくる。

カスミ

ああ、もう

おしまい

カスミはバナナをテーブルに戻した。

カスミ

ゆうしゃ

どうするよ

ゆうしゃ

いやぁ
お腹もすいてますし

とりあえず
たべましょうか

ゆうしゃの目がとろんとしている。

カスミ

ゆうしゃは
結構大胆だな

ひより

たべるんですか?

これ私たちの村の
お供え物ですよね?

と、ひよりは素直に驚いた。

カスミ

どう見ても
宴会場みたいだが?

ひより

きっと

何か理由が
あるのですよ

カスミ

おやおや
ずいぶん肩を持つね

ひよりだって
これを狙ってたんだろ?

そうなのだった。
ひよりは、それならばと腹を決めた。

ひより

どうせ、村の誰かが
食べる予定だった
のでしょうし

食べましょうか

カスミが肉料理に手をつけたのを皮切りに、それぞれ思い思いのものを食べはじめた。

シャーロットは、サラダに手をつけて、その横のゆうしゃは、芋をほおばっている。

こうなったら、もう止まらない。わずか5分ほどの間に、原形はとどめていなかった。

あらかた食べ終わったころ、今まで何の気配も感じなかった背後から

めがみさま

ゆ・う・しゃ・さ・ま

と呼ぶ声が聞こえた。

ゆうしゃが驚いて振り返ると、そこには幼い子供がこちらを見ていた。

ゆうしゃ

どうして

めがみさま

あそびにきちゃった

すごくたのしそう
だったから

シャーロット

だれです?知り合い?

突然現れたお客にシャーロットの頭に、はてなが幾つか浮かんでいる。

ゆうしゃ

めがみさまです

ゆうしゃは、めがみさまを紹介した。

ひより

えぇええええええ

シャーロット

もしかして

わたくしたち
死んじゃったのですか?

そう勘違いするのも無理はない。
めがみさまがいるのは、天界なのだから。

めがみさま

ちがいますよ
生きてますって

ひより

毒入りだったのかと
おどろいた。

とひよりは胸を下ろした。

めがみさま

それで

ゆうしゃさまたちは
何してるんです?

カスミ

えんかい、かな?

とカスミはとぼけた。

めがみさま

この料理は
ここの神さまを
呼ぶ料理ですよ

ひより

そうだったのですか?

めがみさま

しらなかったの?

カスミ

えっと
そうそう

そのかわり
めがみさまが
でてきたじゃないですか

めがみさま

えっ

それはいいの
でしょうか

カスミ

いいのいいの

めがみさまも
きにしないきにしない

とさらりと流したが、これはカスミ自身の気持ちを伝えたにすぎなかった。

その程度のことを気にしていては、リーダーとしてやっていけないのだ。

すくなくとも、本人はリーダーだと思っていた。

めがみさま

じゃあ、わたしも
お言葉に甘えて

ゆうしゃさま
こちらです

と、めがみさまは、ゆうしゃの腕をつかみ、どこかへつれていこうとした。

シャーロット

ちょっとどこに連れて
行こうとしてるのですか?

めがみさま

トイレ?

シャーロット

なんで、ゆうしゃさまを
トイレに連れ込むんですか?

それに、ここにトイレなんて
どこにあるんですか?

めがみさま

せっかく来たので
もっていこうかと

シャーロット

なにいってるんですか

それじゃ
死に神じゃないですか

めがみさま

もぅわがままでちゅね

と、いたずらっ子っぽくいう。

シャーロット

どっちが
わがままですか!

ゆうしゃさまは
まだ生きているんです

とシャーロットは声を荒らげた。

めがみさま

てへ

もう
しかたないなぁ

シャーロット

しかたなくなんか
ありません

めがみさま

もぅ、冗談ですよ

シャーロット

本当に冗談?

そう見えません
でしたけど

その二人の争いに見かねて割ってはいったのがひよりだった。

ひより

あのぉ

ウィステリアさんを
見ませんでしたか?

めがみさま

ウィステリアって

あなたがたの仲間よね。

カスミ

ええ

だめな仲間で
捕まっちゃって

シャーロット

でも助けないと
根に持つから

結構根暗なんですよ

ゆうしゃ

根暗なんですか?

案外変わった人だとは
おもいますが

カスミ

ゆうしゃが言うかよ

めがみさま

あらあら、そんなこと
言ってて良いのかしら

カスミ

もしかして

察しが良いカスミは、その言葉の意味に気がついたようだ。

めがみさま

ええ、近くにいますよ

めがみさまは、微笑んだ。そして、めがみさまは、すっとその姿を消した。

めがみさなの気配はかんじられない。もう帰ってしまったようだ。

めがみさまは、何しに来たのだろうか。

ひより

めがみさまは、
何しに来たのかしら

カスミ

ゆうしゃに
会いに来たんだろ

ひより

もしかして
わたしを盗みに

カスミ

で、見て
そのまま帰ったと

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