お嬢様。今日もお情けをいただきたいのですが。

今日は、でしょ。
血を飲むのは週に一回なんだし。

ふふ、週に一度でも私にとっては彼の日と斯の日の合間など内に等しいのですよ。

つまり、六日間くらいどうでもいいくらい年を取っていて時間感覚がぼやけているのね。

おやおや、手厳しいですねお嬢様。
なにか腹にすえかねる事でも?

デーミック。
お情けをいただくって肉体関係を持つ男女で主に使われると聞いたわ。
そういう言い方は不快よ。

それは申し訳ありません。
この哀れな下僕をお許し下さい。

ねぇ、デーミック。
あなたがいなかったら私はここにいないのよ?
そんなに自分を卑しく見せようとする遊び、楽しいの?

かつての貴女なら私の指先で潰せたでしょう。
ですが今は権能を振るっても貴方は倒せない。
ならば敬意を払い、血という情けを乞うのは当然でしょう。

そ、貴方がそれでいいならそれでいいわ。
でも素直に血をくださいと言いなさい。
貴方は私の父母に等しい人なのだから。
そんな相手に肉体関係をもっているかのような物言いをされるのはぞっとしないわ。

了解いたしました。
では、お手を拝借…。

そっと、少女の手を取るデーミック。
その指先に最も鋭い犬歯を立てる。
そこから溢れた小さな紅玉に舌を這わせると、表情の分かりにくい犬の顔に至高の法悦を浮かべる。
彼はこの血一滴で千年生きれる。
少女の血がそうであるように、育てた。
彼女は彼にとって、どんな馳走よりも美味で滋味にあふれた強壮剤なのだ。

御馳走様でした。
まっこと、甘露でございます。

そう……。

変に粘られなくてよかったわ。
でも気分が変わったらまたお情けとかいいはじめるわね。
この性悪犬は。

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