本間博士の『扉』講座!
私が扉を研究している理由…それは…
それは…?
『そこに扉があるから』
え
なにその『そこに山があるから』チックな名言風味…
聞えなかった?そこに扉があるから
いや、聞えてますけど…。なんか他にないんですか?世界征服とか、奴らみたいに世界を浄化するとか…
まあ強いて言えば、『好奇心』だな
好奇心…
君は忘れているかもしれないが、私は科学者だ。ここの研究所だって正式名称は『マジガチリアル“物理”研究所』。そもそもは物理学の研究所だ
でも、超能力者を集めたりとかは…
それは、扉を開けることができるのは真の超能力者だけだという仮説が立ったから、探し出すしかなかった。
仮説は実証して初めて真実になるっ!
それ『実におもしろい』の人が言ってたやつ…!
じゃあ、なんで言ってくれなかったんですか、扉のこと
それは、扉が危険だからだ。悪の手に渡るようなことがあっては、困るからな。かつての権力者たちはこの扉を手に入れようと躍起になった
それに超能力の実験をするのに、被験者に対し余計な情報を伝えるのは得策ではない。精神が乱れる恐れもあるし、状況やコンディションによって結果にばらつきが生まれることはままあるからな
そうだったのか…
科学者ってのは、何かに役立てようとか、世の中のために研究してるわけじゃない。ただ自分の好奇心に従って、目の前の事象を観察し、考察し、体系化してゆく。世の中に役に立つ発明なんてものは副産物だ
…
私は人付き合いが苦手でね。かつて女性にフラれてから人間不信になってしまった。この山に篭っているのもそういう理由もある。だが、高円寺くん。君とは自然に話せる
博士…
これでも君のことを信頼しているんだよ。君は大切な友人だ
…
さあこの前の続きだ。私の研究成果について、全てをお伝えしよう
本間博士の『扉』講座!
お手元にレジュメはありますか?
ありまーす
よろしい。では始める
あの扉は我々の住む次元と異次元を繋ぐものだ
それは知ってまーす
あ、そうなの。
それでこの扉は人間の文明が発生したころから存在していたらしい。
この扉を開けられるのは、『戸隠』と呼ばれる一族だけで、代々その管理は彼らが行っていた。
扉を開けられるのも、扉の向こうへ行けるのも、戸隠の血を引く者だけだ
他の人が入ったらどうなるんですかー
古文書によれば、戸隠の血の守護がないものが扉の向こうに入ると、異次元のものたちに体を乗っ取られてしまう…
こわっ…
この扉は強大な力を持っているため、時の権力者たちがその所有権を狙っていた。
しかし、戸隠一族は、特定の権力者に着くことはなく、適度な距離を持って接してきた
しかし、この均衡が崩れてしまった。それが明治期のことだ
それは…
魔女狩りだ
魔女狩り?日本ではなかったはずじゃ…
千里眼事件だよ
千里眼事件…?
明治の末に起きた、超能力をめぐる論争だ。科学者だけでなく社会的にも関心が集まり、ブームとなった
それと何の関係が…
戸隠の一族は、扉を開けることができるだけでなく、強大な超能力も持っていた。扉を欲する権力者たちが力で抑えきれなかったのも、超能力があったからだ
しかし、千里眼事件が起きて、超能力者の立場は一転した。それまで畏敬の念をもって接せられてきた超能力者たちは、ペテン師のレッテルを貼られ、迫害を受けるようになる
ひどい…
明治期には近代化の波が一般市民にも押し寄せていて、半端な科学知識を持った市民も多かったもんだから、タチが悪かった。
おそらく裏で権力者の圧力もあっただろう
それで戸隠家はどうなったんですか
消えた
消えた…?
鍵を残したまま、一族が皆、消えてしまった
そんな…
継承者が途絶えてしまったのだから、扉は開けることは出来なくなってしまった。
権力者たちはやりすぎたんだ。ちょっと弱体化させるだけのつもりが、取り返しのつかないことになってしまった
彼らはどこへ…?
わからない…。自害したのかも…
…
しかし、私は確信していた。戸隠一族の遺伝子を受け継ぐものが、きっと現れるだろうと。
直系ではなくとも、同じような能力を持つ人間が現れる可能性はゼロではないと
…!
そして君と出会った。…そういうことだ
…博士は扉を開けた後、どうするんですか
…
さあな。開けたらまた次の研究課題が生まれるだろう。それを突き詰めていくだけだ
そうですよね。博士、実は、僕も秘密にしてたことが…
ん? どうした…
何の音だ!?
扉の方からです!
まさか…
イーソン卿か…!?