ボスカイオラ
ボスカイオラ
イタリア語で”きこり風”を意味する名前のピザ。主に茸など山の幸を使ったピザの種類である。
仲間内との雑談の中で
❝よく話題に上がってその時は盛り上がるんだけど、
実際その人に会ってみると特に面白い事は一つもない。
むしろ不快になる事が多い❞
そんな人間は身の回りにいないだろうか。
得てしてそのタイプは
自他共に認める効率中毒な仕事人間なのだけれど
何かしらの粗が目立つから敬遠されてしまう。
言い換えると
穴だらけの完璧主義者なのである。
これから挙げるモデルケースは
前の職場であるゲームセンターに勤務していた
先輩店員、ボスカイオラさん３８歳男性である。
容姿はジャッキー・チェンと
二大香港スター時代の
サモ・ハン・キンポー
に頭のてっぺんからつま先まで酷似している。
朝礼ははちきれんばかりの笑顔と講釈だが
営業中には年齢的な問題化か
すぐにガス欠を起こしムスッとしているので
とある常連さんには
鉄仮面
というあだ名を付けられていた。
当時の店長曰く
ポスカくんの言ってる事は文面上は正しいけど、行動に伴っていないからかえってイラッとするんだよね
との事。
言い得て妙だと思う。
ある日
そんなボスカさんが
事務所のある地下階段を歩いていると
突然悲鳴を上げて膝を抱え込んだ。
ボスカイオラさん、大丈夫ですか？
ううん、ありがと。ちょっと古傷がね
とどこか小芝居じみた物言いに
原因は何ですか？
ＤＤＲ
え？
ＤＤＲ。ダンスダンスレボリューションの事
ボスカさんは２０代の頃、
ダンスダンスレボリューションの全国大会に出場し
あと一歩の所で優勝を逃した猛者だったらしい。
まさにサモハンキンポー顔負けの
リアル動けるデブキャラだったのである。
ボスカさんと自分の共通の趣味は麻雀で
ちょくちょくボスカさんの
押しつけがましい麻雀論や
ネット麻雀の戦績自慢話を聞くのが
お決まりとなっていた。
ピッツアくん。実は俺最近×××に２００万借金した友達を助けるために代打ち麻雀してさあ、オーラスで字一色、大四喜アガってなんとか免れてさ。同卓した関西弁のおじさんに『あんちゃん、エエもん見せてもろうたわ。帰ってええよ』って言われて事なきを得たけど…いやあ、ホント死ぬかと思ったよ
というアカギだかカイジだかを丸パクリしたような
エピソードをドゥフフと笑いながら披露してきた。
にわかに信じがたい話ではあるが
たしかにボスカさんはかなり麻雀上級者だし
嘘を付くようなタイプではない
まあ、真相はどっちにしても全く麻雀上達の参考に
ならないからどうでもいいかなとは思う。
僕がゲーセンを辞めてから早一年。
今日も古傷と戦いながらキューティクルの黒髪と
下っ腹を弾ませて働くポスカさんを思うと
特に患ってもいない膝を
何となく摩ってしまう不安な自分がいた。
La Fine
