私がずっと前から好きで、
そしてこれからも好きなのは蒼山くんなの!
──この一言が、何故か言えなかった。
好きなのか?
隆司のこと
(そんなに真っ直ぐな瞳で
聞かれたら
本当のことしか言えなくなる)
わからない……。
好き、なのかもしれない。
キスされても嫌じゃなかった……。
だけど!
私がずっと前から好きで、
そしてこれからも好きなのは蒼山くんなの!
──この一言が、何故か言えなかった。
(高校三年間ずっと想い続けた
蒼山くんと、本当は両想いだった。
もう答えは出ているのに、
想い伝えるのがこんなにも苦しい)
(そう……。
告白をして、OKされたら”始まり”。
始まりがあれば、”終わり”がある)
(勉強に挫折して、
親に見放されて、
人生に絶望して……。
後に残されているのは、
恋愛に絶望するだけ)
(今やっと気づいた。
私、蒼山くんが決めた
”恋愛禁止令”に甘えて、
傷つくことから逃げてたんだ)
『遠くから蒼山くんを
眺めているだけでいい』なんて、
そんなのはただの言い訳だった。
いつの間にか
形が有る物は必ず壊れると
思うようになった私は、
自分自身で無意識に
”恋愛禁止令”を出してたんだ……。
ほんの一瞬の間に多くの考えがよぎり、
胸が一杯になった私は……。
声を出さずに、ただ涙を流した。
栗崎……?
蒼山くんは不思議そうな顔をして、
私の右頬にそっと手を添えると……。
…………
こわれ物に触れるみたいに、
唇がかすめるだけのキスをした。
…………
何が起こったのかをすぐに把握出来なくて、
ただただ蒼山くんを見上げる。
すると蒼山くんは、
その整った顔を崩すことなく静かに微笑んで、
指先で私の涙を拭った。
今のキスは、
嫌じゃなかったか?
……っ!
涙は止まるどころか、更にあふれ出していた。
すまない、栗崎。
やっぱり嫌だったのか?
違う! 違うの!
私、やっぱり蒼山くんが好き!
どうしようもなく好きなの!
でも、進むのが怖い……。
わかるの、どうせ蒼山くんだって
うちの親と一緒で、
私のこと嫌いになるって!
栗崎は……本当に、馬鹿だな
蒼山くんは私の心を暖めるようにして、
力を込めすぎないように、
優しく、優しく、私を抱きしめてくれた。
昨夜の情熱的な隆司の抱きしめ方とは違って、
体温がじんわりと伝わってくるような
抱きしめ方。
栗崎を傷つけるもの全てから、
俺が守ってやる
その俺自身が
栗崎を傷つける事があれば、
俺は二度と人を好きにならない
私の心の奥でずっと固まっていた澱みが、
次々と溶けて流れ出していくような
感じがした。
(蒼山くんと、キスしたい)
他の事は何も考えられずに、
私はつま先立ちで背伸びをすると、
蒼山くんの首の後ろに腕を回して唇を重ねた。
…………
蒼山くんは少し驚いたみたいだけど、
すぐに瞳を閉じてキスに応じて、
私の腰の辺りに手を回した。
最初は小鳥が啄むみたいに、
チュッ、チュッ……と、
小さなキスを繰り返してくれる。
蒼山くんの唇が触れるたびに、
私の胸の鼓動は速くなった。
蒼山、くん……
栗崎……
うっとりと蒼山くんを見つめるていると
蒼山くんは再び唇を重ね合わせて、
私の口内へ舌を入れた。
んんっ……
……チュ、クチュ
(蒼山くんの舌が、私の中に……。
それだけで身体が熱くなっちゃう)
舌の先で上顎の裏をくすぐられると、
くすぐったさの中に気持ち良さもあって、
身体がビクッと反応する。
好きという気持ちが胸の奥からあふれてきて、
私は蒼山くんの背中に手を回して抱きついた。
すると不意に、蒼山くんの唇が離された。
栗崎……いいか?
『何を?』
……そう聞く前に、
蒼山くんは私の胸の上に手を置いた。
私の顔は更に熱くなり、心臓が早鐘を打つ。
えっ……!
えっと、それは……!
やっぱり嫌だよな。
ごめん
蒼山くんがすぐに手を離す。
やめちゃうんだ……
えっ?
蒼山くんは私に気を遣いすぎ。
ちょっとくらい好きにしても
いいんだよ?
どうしてそういうことを
言うんだよ……
蒼山くんは困ったように、
片手で自分の頭を押さえた。
私、変なこと言っちゃった?
言った
そ、そんなに変だった?
好きな女の子に
そんなこと言われたら、
止められなくなるだろ?
蒼山くっ……
私が言い終わらないうちに、
蒼山くんは強引にキスをした。
そして、手の平で私の胸を包み込むと、
大切なものに触れるように指を動かす。
あっ……
(ヤダッ!
変な声出しちゃった!)
恥ずかしくて口を塞ぐ私を見て、
蒼山くんは小さく笑いながら耳元で言った。
大丈夫。
声、可愛いから
それだけ言うと蒼山くんは、
私の耳たぶを甘噛みした。
あっ、やっ……
(甘噛みされたら
ゾクゾクしちゃう。
耳に吐息をかけられるだけでも
変になりそうなのに……!)
耳、弱いのか?
そ、そんなこと無っ……あっ
蒼山くんが胸をさすってから、
手の平全体で柔らかさを確かめるように揉む。
さっきよりも感じやすくなっているせいで、
だんだんと呼吸が荒くなってきた。
蒼……山……くん……好き……
触られてばかりなのもちょっと悔しいから、
仕返しをしようと思って
蒼山くんの首筋に唇をあて、
軽く吸い付いた。
……ッ!
ビクッと蒼山くんの身体が反応する。
素直な反応が、どうしようもなく愛おしい。
ふふっ
顔を真っ赤にしてこちらを見る蒼山くんに、
私は微笑みで応えた。
……ひゃっ!
今度は、驚かされたのは私の方だった。
ちょっとした仕返しのつもりなのか、
蒼山くんの手が
私のスカートの中をもぐって……。
(お尻を……触ってる……?)
赤くなって下を向く私を、
蒼山くんが楽しそうに見おろしている。
ははっ
蒼山くんって
こんなに意地悪だった?
少し怒った振りをして
頬をふくらませていると、
蒼山くんは笑って『悪い悪い』と言った。
そうしてから蒼山くんが
スカートから手を出そうとしたから……。
私は、思わず言ってしまった。
いいよ……その先も
こんな大胆な発言をしたことが
自分でも信じられなくて、
顔から火をふきそうになってしまう。
それなのに蒼山くんは
何も言ってくれないから、
呆れられたのかと不安になって顔を見ると……。
…………っ
蒼山くんも私と同じように
頭から湯気が出そうな勢いで赤面して、
口元を押さえていた。
なんだかそれがおかしくって、
可愛くって……。
もっと蒼山くんに、触れたいと思った。
蒼山くん、大好き……
俺も好きだよ、栗崎……
そして私たちは再びキスをした。
さっきよりもずっと濃厚で、
熱いキスを繰り返す。
キスをしながら蒼山くんの手は
私のスカートの中に入り、
そして下着の中へ……。
おい。悠斗、由衣……。
お前ら何やってんだ?
!?
その一言で、
私たちは夢心地から一気に覚めた。
どういうわけか、
隆司がいつもより早く
バイトから帰って来たのだ。
隆司……!
こう言う物語大好きです!