第07話:切り崩し工作

はぁ……

音多美は一人暗い顔をして溜息を吐いていた。そんな音多美に声を掛ける者が居た。

あら、どうしたのかしら?
そんな浮かない顔をされて

え? だ、誰ですか?

貴女と同じ魔法少女ですわ。
一応ランキング二十位なのですけど、
ご存じないかしら?

声を掛けてきたのは、一人の少女だった。それはランキング二十位のメジャー魔法少女ホーティが変身を解いた姿だ。

ラ、ランキング二十位!?
し、失礼しました!

最底辺を彷徨う音多美にしてみれば、メジャーなどというのは雲の上の存在だ。まさかそんな人物に話し掛けられると思っていなかった音多美は、緊張のあまり直立不動になり冷や汗を掻きながら無礼を謝罪した。

ふふ、そんなに緊張しなくても良いのよ。
それで、何か悩み事かしら?

緊張する音多美に対して、優しげな微笑みを浮かべながら問い掛ける先輩魔法少女。そんな彼女の姿に、音多美は少し迷いながらも胸の内を明かすのだった。

その、世知子ちゃんって私と同じように魔法少女をやってる友達が居るんですけど……

世知子ちゃん最近人気が出てきてて。
本当はお祝いしなきゃいけないと思うんですけど、
置いてかれたみたいに思っちゃって、
素直にお祝い出来なくて。
でも、そんな風に考えちゃう自分の事も嫌で……

相当に溜め込んでいたのか、口火を切った途端一気に話出す音多美。
そんな様子にもホーティは驚いたり引いたりすることなく、暖かい微笑みを浮かべながら聞いていた。

そう、辛かったのね

え? あ、ご、ごめんなさい!
初めて会った人にこんな愚痴を言ったりして……

いいのよ。
それよりも、貴女はそのままで良いのかしら?

え? そんなことを言われても……

貴女も彼女と同じように、
いえ、それ以上に人気が出れば、
そんな劣等感を感じなくて済むようになるわ

そんな、無理です。
私にはそんな人気なんて……

大丈夫、貴女が良ければ私がサポートしてあげるわ。
そうすれば、貴女はそのお友達よりも人気者になれる

あ、え……

戸惑う音多美に対して、ホーティは相変わらずの優しい笑みを浮かべながら手を差し伸べてきた。

さぁ、その気があるなら私の手を取って

ど、どうして私なんかに?

そうですわね。
昔、私も人気が出なくて悩んでた時があるんですの。
そんな貴女の力になってあげたいと思ったのですわ

同じ悩みを乗り越えたというホーティの言葉に、音多美は迷いながらも手を取った。

……ニィ

その瞬間彼女が浮かべた笑みを見た者はいなかった。

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