第08話:助っ人妨害

これはどうです?

きゃあ!?

仮面の青年ベルフェの攻撃に、シビアは弾き飛ばされて膝を突いた。

ふふ、思った程のものでもありませんでしたね

くっ……

倒れたシビアを見下ろしながら、薄く笑うベルフェ。
悔しそうに唇を噛むシビアだが、ダメージが膝にきて上手く立ち上がれない。

さぁ、覚悟は良いですか……おや?

トドメを刺そうとしていたベルフェだが、ふと何かに気付いて後ろへと飛び下がった。
その直後、先程までベルフェが居た場所に眩い閃光が叩き付けられる。

そこまでです!

ホ、ホーティさん!?

一瞬光で目が眩んだシビアだが、瞬きを繰り返して声の方を見る。
そこには、魔法少女の衣装を纏って手を前方に翳したホーティの姿があった。

おやおや、メジャーの貴女がどうしてここに?

私と同じ魔法少女が窮地にあるなら、
助けに入るのは当然ですわ!

仲間を助けに来た颯爽としたその姿は、とても頼もしく見える。

ニヤリ

しかし、座り込んだままのシビアを一瞬見たホーティの表情には、周囲のファン達には見えない角度で暗い笑いを浮かんでいた。

さぁ、シビアさん。
後は私にお任せなさい!

ちょ、ちょっと……!?

シビアが慌てるが、最早この場はホーティの独壇場となってしまった。
観客の誰もがホーティのことを主人公として見ている。
シビアはハッキリ言って踏み台でしかない。

また、このパターン!?

そして、実はこんな展開はここ数日何度も繰り返されたものだったりする。
シビアが窮地に陥るたびにホーティが助けに入り、颯爽とその場を収めてしまうのだ。

また美味しいところを……っ!

後輩を助ける優しい行為……ではない。
活躍して人気を集めることを本分としている魔法少女にとって、これはれっきとした妨害行為だ。

しかし、夢を売る存在でなければならない魔法少女は、それが分かっていてもこの場で抗議するわけにはいかない。
観客達にそれを見られるわけにはいかないのだ。

ありがとう、ホーティ……!

故に、内心の苦々しい感情を表には出さず、シビアは危ないところを助けられた魔法少女を演じる。
そうするしかなかった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

はぁ

結局良いところ無しで終わったシビアは、変身を解き元の姿に戻ると溜息を吐いた。

大丈夫かい、世知子

大丈夫じゃないよ!
どうにかならないの?
あの人……

シロベエが声を掛けるが、話題に上がるのはやはりここ数日繰り返されているホーティの妨害行為だ。

露骨に潰しに来てるね。
それも、外から見ると助ける形だから問題にも出来ないし

やっぱりそうなの?
もう、どうすればいいんだろ

解決策が見えず、途方に暮れる世知子。
そんな中、ふと疑問が湧いた。

それにしても、どうして私の動向をあそこまで的確に追えるんだろう?
尾けられてるような感じは無いんだけど……

僕に聞かれても……

折角上がった評価も下がってきてるし、
このままじゃ……

うーん……

ままならない理不尽な現実に、頭を抱えるしかない一人と一匹だった。

第08話:助っ人妨害

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