第06話:メジャー

敵対者である秘密結社リーニエントの幹部ベルフェに敵として認識された魔法少女シビア。
しかし、人気を集めつつある彼女の前には更に恐ろしい敵が現れる。

貴女が最近話題のシビアさんですの?

ええと、貴女は?

リーニエントの戦闘員達を撃退したシビアに、横合いから話し掛けてくる者が居た。
背の高い青髪の少女だが、その特徴的な衣装から彼女も魔法少女であることが見て取れた。

げ、彼女は……

知ってるの? シロベエ

むしろ何で君が知らないのさ。
現ランキング二十位の
魔法少女ホーティだよ!

彼女が!?

顔は知らなかったシビアだが、その名前には聞き覚えがあった。

ランキング二十位。それは魔法少女達にとって特別な数字である。二十位以内は「メジャー」と呼ばれ、マスコミが密着的にその活動を報じてくれるのだ。
それ故に、二十位と二十一位では順位だけで言えば一つしか変わらないが、その知名度は劇的に変わる。そこには隔絶した差が存在するのだ。
シビアの目標も、このメジャーになることである。

彼女が本物のメジャー……

実際、シビアが周囲を見渡すといつの間にか人だかりが出来ている。
ホーティのファンと思しき男達に、彼女の担当であるテレビクルー。
それだけではなく、何人かの魔法少女が後ろに控えていた。おそらく、ホーティの取り巻きだろう。
ランキング上位の魔法少女は注目されているため、その周囲に居ればおこぼれではあるが知名度が向上する。それを狙って取り巻きになる魔法少女は一定数存在する。

どうやら、名前くらいはご存知のようですわね

そ、それはまあ……

顔はご存知なかったようですが

うぐ……ご、ごめんなさい

刺々しい言葉をぶつけてくるホーティに、シビアは怯んだ。
知名度に敏感な魔法少女にとって、自分を知らないと言われるのは一種の侮辱である。
勿論、下位の魔法少女であれば知られていなくても無理は無いのだが、ランキング上位の魔法少女にそれを言えば喧嘩を売ってると思われても仕方ない。
取り敢えず名前を知っていたシビアは、ギリギリセーフと言ったところだろう。

そ、それで……私に何か用ですか?

最近話題になっているようなので、
どんな人なのか一度見てみたかっただけですわ

は、はぁ……

あわわ……

まぁ、大体分かったので今日はこれで失礼しますわ。
ごきげんよう

え? あ? は、はい。
ごきげんよう……?

唐突に現れて、あっと言う間に去っていく魔法少女ホーティ。
彼女が立ち去ることで、周囲に出来ていた人だかりもあっと言う間にはけていく。
後には殆ど人が残らなかった。
それはまるで、メジャーである彼女とシビアの知名度の差を表しているかのようだった。

一体、何だったの?

気を付けた方が良いよ。
彼女に目を付けられた魔法少女は
大抵潰されてるからね

つ、潰されっ!?

ランキング二十位とそれより下では隔絶した差がある。
当然ながら、現在二十位以内の者もそこから転落すれば待遇を受けられなくなるわけであり、何としても順位を維持したいと考えている。
最上位の魔法少女であればトップ争いに明け暮れていて、そんな心配はしていないかも知れないが、ギリギリのラインであるホーティにとっては死活問題だ。
故に、下から上がってくる気配を察知して先手を打ってきたのだ。

何か仕掛けてくるかも知れないから、
注意していた方が良いよ

う、うん……

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