ホテル。
裸で激しく抱き合う咲と真。
真は薄目を開けて咲を見上げる。
振り乱れる髪と肌に滴る汗。
真が咲を抱き寄せ絡まり合う肌と唾。

引きましたよね?年増女の醜さに

いや…すごく穏やかな気分です


真の胸にすがる咲。
押し返して咲の胸に顔をうずめる真。
まるで赤子をあやすように真の頭をポンと叩く咲。
窓からの朝焼け。


ホテルから出てくる真と咲。

…いろいろごめんなさい。きっと私の事嫌いになったでしょう?

…いえ。また連絡します。


クリーニング屋。
カウンターに立つ島田と寝ぼけ眼の真。

島田

真ちゃん、きのう女とヤッたろ!?

し、してないです

島田

嘘だ嘘だ!ごまかせねえよ、俺の鼻は!いや、もう目に染みるんだけど、獣の匂い!ねえ、ファブリーズしていい?

(ばつ悪そうに)すいません。気をつけます

島田

図星かよ!っていうかそこは最後まで否定し続けるところだろうがこの野郎!マジで当てちゃった無様な俺の身にもなってみろ!

す、すいません。

島田

だから謝るなって!


休憩室。
咲からのメールを読む真。
件名“妹さんの髪について”

お話を聞いた後、私も勝手ながら考えたのですが妹さんには薬の量を強めるよりも医療用ウィッグ(カツラ)を薦めてみてはいかがでしょうか?

友人に業者がいます。

よろしければご紹介できますが…

費用もそこまで高くないですし、カウンセリングも充実しています。

昨日、お話を伺った限り、妹さんの不安定な病状を考えるとそれが適切かと思いましたので。

カツラかあ


病室。
黒いカーテンに遮られた夕焼け。
病室に入ってくる真。
ノートにペンを走らす花蓮。

小説の下書きかい?

花蓮

そう、お兄ちゃんが来ない日の夜中、屋上か庭に出て携帯に打ち直すの。趣味一つやるにしてもけっこう気を遣ってるんだから

なんだ、僕は邪魔者だったか

花蓮

そんな事ないよ。いつもありがとう

花蓮、薬の件なんだけどさ、せっかく容態は安定してるんだから量はこのままにする代わりにウィッグをつけた方が良いんじゃないかなって…友達に相談したんだけど、そう進められてね。
どうかな?

花蓮

友達じゃなくて彼女じゃない?

え?

花蓮

そういう所気付くのって女の人だと思う。しかもけっこう大人の。それに…お兄ちゃん友達少なそうだし

ますますカンに磨きがかかるね

花蓮

まあ、そこはあえて触れないでおいてあげる。じゃあそこまで薦められたら仕方無いなあ、付けてみようかなカツラ

本当に?

花蓮

うん。せっかくだから超派手にしよっと。青髪とかどう?案外似合いそうじゃない?

病室追い出されない程度によろしく


続く

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