ロジャーの世界。
映画館でのできごとだ。立体的な映像を楽しむ、最新式の映画館。
その映画を体感した後に、「こんな未来から俺も来たのかもしれない」と、思った。
記憶を消した俺は、ゲームの世界に入り込んでいるのではないか。
ロジャーの世界よりさらに未来の人物なのかと、考えた。
ロジャーの世界。
映画館でのできごとだ。立体的な映像を楽しむ、最新式の映画館。
その映画を体感した後に、「こんな未来から俺も来たのかもしれない」と、思った。
記憶を消した俺は、ゲームの世界に入り込んでいるのではないか。
ロジャーの世界よりさらに未来の人物なのかと、考えた。
しかし、姫様の世界。
あの世界で俺は、パソコンを見て、薄いな、「未来のものだな」と思ったのだ。
そして、初めてサンザシと会った、あのとき。
俺は、あの部屋を、「自分の部屋ではない」と思った。
「畳の部屋はどこにいったんだ」
――そう考えて、痛い頭を、押さえたはずだ。
俺は、「ロジャーよりも、姫様よりも、前の時代を生きた記憶」があった。
それなのに、「ロジャーの世界より未来から来たかもしれない」と思えた。
矛盾だ。明らかに、矛盾している。
そして、ロジャーの世界で、アイリーの記憶を詰め込まれたときのように。
知るはず、ないよね
え?
この絵本のことを、俺が知っているなんて、おかしな話だよね
俺は立ち上がる。部屋を出る。どこだ、どこだ、どこだ。
気がついた? よかったよかった、僕のさじ加減は絶妙だったみたいだね
セイさんの言うとおりだ。
俺にあった、記憶。
日本出身だということ。部屋のこと。そして――物語の、知識。
ばたばたとどうした?
マサヨシが下の階から叫んでくる。
なあ、お前の部屋、どこ?
あ?
書斎じゃない部屋!
俺は、叫んでた。
どうしたよ、急に。そもそもなんで知ってる――
いいから、頼む! 教えてくれ!
懇願するような声だった。情けない、声。
……書斎の隣だけど、どうしたよ?
すぐに、ふすまに手をかける。乱暴に、横にスライドさせ――目の前の、畳の部屋を、見て。
――俺の部屋だ
は、と笑ってしまう。
君の記憶の中ではね
セイさんが、静かに言う。彼はきっと、笑っているはずだ。
俺の記憶は、すべて、マサヨシの記憶だった。
数少ない、出身地の記憶も、部屋の記憶も――物語の記憶までも。
俺は、じゃあ、なんなんですか
膝から崩れ落ちる。
俺は、なんなんですか
助けて。
助けて、サンザシ。
こんなとき、彼女ならいつも、手をさしのべてくれたのに。