『サンドリヨン』
サンドリヨン?
・・・って知ってる?
さ、さぁ?
なんだろう・・・不思議な感じ。
身体が軽い!
『サンドリヨン』
この名前に全く見覚えもないし、聞いたこともない。
でも直ぐに名前が頭の中に浮かんできた。
・・・お母様なの?
なんとなくそんな気がした。シンデレラの顔には自然と笑みがこぼれていた。
でも!あのドレス、腕に【コード】がちょんとあるだけで全然大したことなさそうじゃん!先手必勝で滅☆殺!!
おい!闇雲に突っ込むな!
いいんじゃない?実戦経験なんて皆無に近いだろうし、お手並み拝見♪
来る!
次女が言っていた通り、シンデレラに戦闘経験なんて無に等しい。何処からともなく現れた謎のドレスだが、その纏い手が動けないのなら怖くはないと踏んだのだろう。
銃なのに突っ込んでくる!?・・・っ!
ホラ!まずは一撃!!
三女は右手で握っている銃をシンデレラに向かって殴る要領で腕を伸ばし、トリガーを引いた。
うっ!?
シンデレラはまず回避に集中しようと試みた。ドレスを纏えば元々の身体能力も劇的に上がる。銃の弾丸ぐらいならかわせるはずだ。
へぇ。さっきのミサイルといい、かわすだけなら才能あるんじゃない?でもね!
三女の攻撃は確かに避けた。しかし、直ぐに次の攻撃が飛んできた。
次は左の銃で!?
左に飛んで回避したシンデレラに対し、三女の左手で握っている銃をこちらに突き出し火を吹いた。
私の戦闘スタイルはガン=カタってね!
相手にターンを回させはしない!!
ガン=カタ・・・銃を装備しながらも接近戦を仕掛ける戦闘スタイル。両手に銃を構える為、防御が手薄になる。ガン=カタは相手の攻撃を一切受けない・受け流す身のこなしがなければ扱うことが出来ない。
殺った!
回避行動をとって態勢を崩しているシンデレラに、弾丸が命中することを確信した三女。
避けれない!?
回避出来ないことを悟ったシンデレラ。その時・・・
・・・紡ぎなさい
お母様!?くっ!
頭の中でまた母の声が聞こえた気がした。紡ぐ?何を?・・・その時、腕に書かれた【コード】が熱を持っているのに気づいた。
ありがとうございます・・・お母様!!
母が伝えてくれた・・・この力で!!
【コード:イージス】!!
シンデレラは【コード】が書かれている右手を前に突き出し、言葉を紡いだ。
【コード】から光のベールが現れ右手を纏った。三女が放った銃弾が右手に接触した瞬間・・・
鋭い光が発生し、銃弾を弾いたのだ。シンデレラの近くで弾かれた銃弾が当たったのか、キンっと音がした。
・・・何したの?
三女は何が起きたか理解できてないらしい。顔がポカーンとしている。
ね、ねぇ?アイツ何したの?
・・・多分だが、右手にバリアか何かを発生させる【コード】が書かれていたのだろう。しかし・・・
長女は疑問を抱いた。あの右手の【コード】は防御に使う・・・攻撃は?見たところ、ドレスにある【コード】はあの右手だけ。ならあのドレスは防御しか出来ないと言うことになる。
・・・防御特化のドレスは珍しくもない。それでも、一つぐらいは武器・攻撃用の【コード】を備えてるハズ。
多対多の集団戦をするならば、防御特化のドレスがいても可笑しくはない。だがシンデレラは一人、しかも【コード】は一つ・・・
分からない・・・しかし、何か裏があるのは確かだ!
下がれ、嫌な予感がする!!
えっ?
戦闘は得意な三女だが、頭の方は弱いらしい。長女の叱咤で我を取り戻したが、少し遅かった。
・・・紡ぎなさい
はい!お母様!!
既にシンデレラは行動していた。新たに浮かんだ言葉を紡ぐ・・・
【コード:クラウ=ソラス】
右手の【コード】が膨大な光を発し、光が形を形成する。それは〈光の剣〉とも言われ、どんな敵でも一振りで倒す・・・伝説の剣と同じ名前を持つ剣だった。
え!?そんなのアリ!?!?!?
一つの【コード】に二つの武装だと!?
ま、まさか!!
うそ!?だってアイツの【コード】は一つだけ・・・ハッ!
流石に次女でも気づいたのだろう。シンデレラの右手にある【コード】の秘密に・・・
はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
シンデレラは力一杯にクラウ=ソラスを振るった。そして膨大な光を纏いし剣は三女の身体に叩き込まれた。
うっそぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・!
シンデレラの一撃を受けた三女は、後方に立っているいくつもの家を薙ぎ倒しながら吹っ飛んでいった。
崩れた家の下敷きになった三女は、しばらくすると瓦礫の中からズルズルと這い出てきた。
はぁ!・・・はぁ!
・・・私は・・・私はねぇっ!!
何かを言いかけた三女だったが、言い終わる前に倒れてしまった。
んっ・・・はぁはぁ・・・
私、勝ったの?
初めての戦闘、【コード】の連続使用、そして無我夢中で戦ったのだ。シンデレラも身体にガタがきていた。
右手の【コード】がとても熱い。しかしその熱さに母の温もりを感じた・・・それは気のせいではなく、確かに感じた母の感覚。
・・・ありがとうございます、お母様!!