魔法力をデリンからもらうためには
どうしたらいいのだろうか?

よく考えないと……。
 

アレス

…………。

アレス

よしっ!

デリン

どうするつもりだ、勇者?

アレス

やっぱり僕は無駄な戦いをしたくない。
デリン、魔法力をもらえないだろうか?

デリン

それはお断りだ!

アレス

そっか、デリンは魔法力に頼らないと
ドラゴンと戦えないのか……。

デリン

なんだと?

アレス

だから賛同してくれないんだよね?

デリン

見くびるな!
これでも俺は魔王の四天王だったのだ。
マジックドラゴン程度、
魔法なしでも倒せるに決まっている!

アレス

じゃ、魔法力をもらえる?

デリン

ふんっ、好きにしろ。

アレス

ありがとう、デリン!

アレス

やったぁ! 作戦成功だっ♪


僕はデリンと握手をした。
彼は口を尖らせつつも、視線を逸らして照れている。
とりあえず、
これでドラゴンと戦わずにここを通ることができる。
 
 
――大して賢くない僕でも、
必死になって考えればなんとかなるものだ。

でもこういうことを、
タックはさらっとやっていたんだよね。
あらためてスゴイと感じてしまう。
  

アレス

ドラゴン、僕たちの魔法力をあげます。
だから通してください。

マジックドラゴン

ではお前たち4人の魔法力をもらおう。

アレス

えっ? 待ってください!
僕たちは3人ですよ?
クリスくんは審判者ですから
関係ないんです――

マジックドラゴン

お前たちの事情など知らん。
我は全員の魔法力を食わせろと
言ったはずだ。

アレス

そんな……。

シーラ

アレス様、
どうなさったのですか?

アレス

ドラゴンはクリスくんの魔法力も
よこせって。

クリス

ボクの魔法力も?

アレス

クリスくんは関係ないって
伝えたんだけど、
聞き届けてくれないんだ……。

クリス

アレス様、
そういうことなら
ボクの魔法力も使うといい。
審判者が試練の邪魔をするわけには
いかないからね。

アレス

いいんですか?

クリス

あぁ!

アレス

ドラゴン、全員の了承が取れました。
魔法力を差し上げます。

マジックドラゴン

分かった。
では魔法力をいただこう。

 
 
 

 



ドラゴンは僕たちの方を向き、大きく息を吸い込んだ。
するとその空気の流れとともに
魔法力が吸い出されていくような感覚に陥る。

やがてそれが収まると、
僕はちょっとした脱力感に包まれていた。
 

アレス

うぐ……。

シーラ

はぁ……はぁ……。

デリン

……くっ……。

クリス

…………。


3人は僕よりも苦しそうだった。
みんな膝をつき、呼吸を激しく乱している。

持っている魔法力が大きい分、
精神と体に負担がかかったのかもしれない。

生命力には影響がないはずだけど、
辛い思いをさせてしまって申し訳ない気持ちで一杯だ。
 

マジックドラゴン

確かに魔法力は食わせてもらった。
約束だ、ここを通るがよい。

マジックドラゴン

我は満腹になって眠い。
このまま眠らせてもらうぞ。


そう言うと、
ドラゴンはその場に横になって目を瞑った。
そして程なく寝息を立て始める。
 

アレス

みんな、ゴメンね。
動ける?

シーラ

えぇ、大丈夫です。

デリン

これくらいで動けなくなるものか。
さっさと先を急ぐぞ。

アレス

クリスくんは?

クリス

心配ない。
ちょっと目まいがしただけだ。

 
 

クリス

あっ……。


立ち上がろうとしたクリスくんは足がふらつき、
バランスを崩して倒れそうになった。

――次の瞬間、僕の体は自然に動いていた。
 

アレス

危ないっ!

 
僕は咄嗟にクリスくんに駆け寄り、
その腕を掴んで体を支えた。

思ったよりも華奢な体。
軽くて柔らかくて、熱い体温が伝わってくる。

僕は至近距離からクリスくんの顔をのぞき込む。
 

クリス

あっ……。

アレス

大丈夫、クリスくん?

クリス

う、うん……。
さぁ、出発しよう。

シーラ

っ?


こうして僕たちはドラゴンの横を通り、
さらに洞窟の奥へと進むのだった。
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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