高齢化社会について

川沿いのそんなに広くない道路。
でも、中央に線が引いてあって、一応、車二台分の広さはあります。

遊歩道から公園に向かう横断歩道。
カートを押しながら渡るおばあさん。

停まってくれた車に向かって笑顔で何度もお辞儀をしていました。

ある晴れた日の、朝の風景。
ほほえましい雰囲気でした。

そのおばあさんと停まっていた車のおじいさんだけ……。

おじいさんの後ろには何台も車が止まっています。

対向車線を走っていた私は、おばあさんに完全にぶつかるタイミングで走行中だったために急ブレーキを踏んでいました。

佳純

ふざけんなよ……

私はハンドルに近づいていた頭を上げ、小さくつぶやいていました。

あまりに咄嗟なことだと、クラクションも大声も出て来ません。
急ブレーキを踏むので精いっぱいでした……。

おばあさんはこちらには目もくれず、未だに停まってくれたおじいさんに笑顔を向けて横断歩道をゆっくりと渡っています。

今、自分が死にかけたことに、まったく気づいていません。

他愛のない日常の中でも、危険はいくつも隠れているのです。
車もそのひとつです。

あれは便利な凶器です。
乗る人も、周囲の人も気を付けましょう。

どんなに便利なものでも、使う人の心がけひとつで、武器にもなります。
科学なんかもそうなんですけど、それを語り出すと止まらなくなるのでやめます。

危険なものを扱う人は、そういう意識を持って使わないといけないんです。
何でもかんでも禁止すればいいってものでもありません。

人に危害を加える恐れのあるものを扱っているのだという意識をきちんと持って使いましょう。


このおばあさん、ちょっとのタイミングが狂っていたら、死んでいました。
走行中の車に、突進していたのです。

ひいた私は殺人者になってしまいます。
横断歩道という歩行者優先の場所で歩行者をひいたら、前方不注意でこっちが悪くなります。

歩行者優先の横断歩道で歩行者を優先させたおじいさん。

法律的には正しいです。

佳純

ただ、空気読めよ。
ってか、定年退職して、時間の流れがのんびりなのはいいけどさ、周りの時間はのんびりじゃねえんだよ。

佳純

朝の通勤時間に、横断歩道で停まると、渡らせた人間を殺しかねないんだぞ。
親切心でいいことをしたって思ってるかもしれないけど、後ろには車がいっぱいいたし、しかもじいさん、あんたこっちを見てたか?

佳純

あんたもばあさん見てニコニコしてただけじゃねえか。
頼むから周りを見てくれ。
落ち葉マークつけてりゃなんでも赦されるってわけじゃないんだ。

ばあさんにも言いたい。

佳純

小学校の時、学校に来たお巡りさんが言ってたぞ。

信号が青になっても、
車が来てないか確認してから渡りましょう。

佳純

横断歩道でも同じことだ。
片側が停まっても、反対側が停まってくれるかどうかなんてわからないんだよ。
常に周りを見て、危険はないか確認して、自分の身を守ってくれ。

佳純

事故を起こして寝たきりになるなんて嫌だろ。
いつまでも元気に歩いて自分の力で生きたいだろ?

なんだかんだで道路上で歩行者は最も弱い立場なのです。
法律で保護されているのはそれが理由なんです。

裁判で勝っても死んじゃったら元も子もないんです。



そして、その時、思ったこと。

佳純

車間距離はしっかりと取りましょう。

私が急ブレーキを踏んだのに、後ろを走っていたゴミ収集車はぶつかりませんでした。

そんなにスピードも出てなかったから、キキキーというブレーキ音もしなかったし。

それとも、私が気がつかなかっただけで、周りはみんな気付いていたのか?
この文句を言っている私が一番悪いのか?



これは、直接クレームを言っていません。
ただ、私が車の中で思ったことです。





とにかく、何ごともなくてよかったです。












ある晴れた日の、何もなかったんだけど、恐怖なできごと。

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