人類はもう全滅してしまったのだ。悩んでも仕方がない。私はひとり掃除道具入れで前で雑巾と消毒液を手にうなだれていた。人だと思って助けたのに、人じゃなかった。
 少し言い訳をさせて欲しい。三ヶ月前、町に攻め込んできた鳥人を始末した後、私は正直に言って気持ちに余裕がなかった。だから目についた動くものを片っ端から方舟に放り込んでいった。大きさや形など気になるところは少しあったものの、私は夢中だった。町が瘴気で埋め尽くされ、方舟が飛び立つまでの時間は数分しかなかった。だから助けることができても数人が限界。だからってあのメンツを助ける必要はあったのだろうか。でも大切な命だ。私は命を救ったんだ。たとえところ構わずう……をお漏らしをするような人でも命には違いない。
 つか正直な感想、なんで町にあんなのがいたんだよと……。ファンタジーから飛び出ないで欲しかった。もっと私が冷静だったなら、生きていたかもしれない町の人を助けられたのに……。いくら後悔しても足りなかった。私は人類にとどめをさしたのだ。私は大罪人だ。








ねぇ









 後ろから肩をつかまれ、振り返ると小林さんがいた。

びっくりした

そんな顔に見えないけど

いえ、これでもびっくりしているんです

あははは

笑わないでください

ごめんごめん


 そう謝りつつも小林さんはけらけらと笑っていた。このあっけらかんとしたところが魅力的だ。

でさ、やっぱあいつらにやらせようよ

いえ、私がやります。元はと言えば私のせいなので

望ちゃんが何をしたの?

それは……その……

望ちゃん、これは共同生活なんだよ。みんなでできることを分担しないと。もう一緒に舟に乗っちゃったんだから、やることはやってもらわないと


 小林さんはいつも優しくて正しい。この人が人間だったらどんなによかったことか……。小林さんは幽霊で、生前はOLをしていたらしい。死んだ理由を聞いいていいものかと迷っていると、彼女のほうから教えてくれた。上司と不倫、そして痴情のもつれから自殺をしたらしい。
 

一緒に睡眠薬飲んで死のうとしたんだけどさ、男のほうだけ生き残ってやんの

 と笑いながら話してくれた。まるで飲み会の馬鹿話のようなノリで。と言っても飲み会のノリはまだ知らないのだけども。

あいつらまじ臭いよね。特に魚人。深淵に帰れっての

そ、そうですね

 
 私が返事に迷っていると背中をばしんとたたかれた。

大丈夫! あたしがついてるから! 大船に乗ったつもりでいてよ!

ありがとうございます。心強いです

よしよし

だけど、始めは私から言わせてください

え?

私から言わないと……責任ありますし……

……そっか、わかった。じゃあ後ろで応援してるね!

はい!

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