月 アマノガワ
月 アマノガワ
もうすぐ出口よ。カンナ!頑張って
は、はい
おそらく力を酷使した反動だろう
私の体は普通に走るのが精一杯になっていた
もうすぐ…もうすぐですね、鳥居まで
そうね。月祭りの神社にある鳥居がアマノガワの入り口だから…もうすぐ、もうすぐよ!
家に帰ったらまず、お母さんに怒られそうです
そうね。でも良いじゃない。また、あの美味しい料理が食べられるのだから
そうですね…行きましょう!
そうだ。やっと…やっとここまできたんだ
なんで私達に昔の記憶があるのか
こうしてまた出会えた理由なんてどうでもいい
やっとルナ様との約束が果たせます
…実際もう二人で地球には行けたんだけどね
それは、まだ記憶が戻ってない時の話ですし、ノーカンですよ
ノーカン?
あれは無効って事です
そうなの?まぁ、いいわ。カンナと一緒なら
私もです。ルナ様と一緒なら
何処にだって行ける
とか思ってるんじゃないの?
!?
駄目っ!!カンナ!下がりなさい!!
信じられないが私たちの目の前に
突然…あの猫が現れた
嘘?猫…?なんで、ここに…狐と一緒に消えたんじゃ?
あれくらいで私が消えるわけないでしょ?勘弁してよ
口調が…
まさか、、、あなた…
そう。お久しぶりです。ルナ姉様
ミキナ……そう…シカナは憑代というわけね
!?
そうです。カンナ?あなたが言った通り私の体は限界がきてたからね。別の体が必要だったの
まさか…ずっと?
そうよ?貴方達を殺して女神になってから随分と時間が経ったからね。私達一族は普通の住人より寿命が長いとはいえ限界はある。そこで…
別の体に乗り移っていったのね
そう。シカナは丁度いい器だったわ。地位もそこそこあるし、まして私が演じてるとは誰も気づかないでしょ?
そうね、私…シズクや周りの人間は誰も分らなかったもの
巫女を治めるリューナやセレナ達でさえ、ね。まぁ、どうでもいい事よ。重要なのは私が今ここで貴方たちに追い付いたという事実だけ
正気?アマテラスが無い貴方に何が出来るというの?
その通り。病に侵されていない、それも本来の力が発現したルナ様に勝てると思っているの?
そうね~。たしかに神器無しはキツイかもしれないわね~
ミキナは不気味に笑う
何だ?何か取り出した…矢?
…ミキナ!?あなた、それ………まさか
流石ですね。姉様、気づかれましたか
ルナ様?あれは一体?
…あれは、この星の…月の力の源…核に等しい物です
え?という事は…そんな…では、あれはまさか…
そう。アマテラスと対をなす、もう一つの神器『ハバキリノヤ』アマテラスを除く、この星の全ての力の源となる神器です
女神の間に祭られていた筈なのに…抜き取ったのですか?
御先祖様がかけられた封印と解くのは、少々骨が折れましたけどね
使う気…ですね?
勿論。それに神器でも使わないと発現した姉様は殺せないでしょう?
ミキナ…あなた、そうまでして私を…
当然じゃない。だって許せないもの。姉様は全てを捨てて逃げ出したのよ?その理由が地球をもっと近くで見たい、行ってみたいって…何よそれ?笑わせないでよ?そんな事で私がずっと憧れていた女神の座を捨てるなんて信じられないわ
ミキナそれは…
言い訳なんて聞きたくない!どんな理由であれ、姉様は私達を見捨てたの!私達を…星を導く筈の女神が!その責任を放棄して逃げ出した!!!その事実は決して変わらない!!!
…ミキナ様
何度生まれ変わったって私は姉様を絶対に許さない!許せる筈がないのよ!!!
カンナ。貴方も同罪よ?当然よね?侍女の分際で姉様を唆して…
ミキナ。それは違うわ、カンナはただ…
違わないわ。カンナがいなければ、こんな事にならなかった。この娘も同罪よ
そうです、罪があるというなら私も…
それでは、あの時と同じじゃない…
同じではありません。ルナ様
…え?
はぁーーーーーー???あんた何言って…
ミキナ様!確かに私はあの時、ルナ様と共に城を抜け出しました。ですが…それはルナ様の命が既に尽き掛けていたからです…ならせめて最後に…と思い私はルナ様と共に城を脱出しました。ルナ様の御身体の事はミキナ様も分っていた筈です
当然じゃない。けどそれが何?
え?
だから、命が尽きかけてたから何よ?最後は布団の上で死ぬだけじゃない。それで良かったのよ…何度も言ってるでしょ?私はね、カンナ?姉様があの時、責任から逃げ出したのが許せないの
…正気ですか?ミキナ様…ルナ様は…貴方の……家族ですよ?
そうね。確かに父も母も戦でみんな亡くなって今となっては、姉様はたった一人の私の家族…でもね?血より何より優先すべきはこの星の事。女神とはその責任を果たす為に存在するの。カンナ?貴方は…最も近くにいてそんな事も気づかなかったのね?
分りません……分りたくもありません
カンナ…貴方、今何て…
私には…分りません。ルナ様は私を本当の家族…妹のように接してくれた…家族とは…人と繋がりを持つ事は素晴らしいと教えてくれたんです。ですから…それより優先するものがあるなんて言葉…私には分りません
カンナ…
……はぁぁぁぁぁぁっぁあああぁあぁぁぁああぁぁ!!!!!!!!!!!
!?
ミキナ!
…そうよね?話すだけ無駄だったわ。私ったらどうかしてたみたい……話は終わりよ。今度こそ逃がさないわ
手に持っていた神器が光りだす
ハバキリノヤ…月の源といってもいいこの力…人を対象に使用したら一体どうなっちゃうんでしょうね?
…ハバキリが起動している……ミキナ?貴方まさか!?
流石は姉様、察しがいいわね。そうよ…
やはり、貴方…自分の部下を…兵を……
どういう事ですか?ルナ様?
ハバキリで何かを攻撃する為には膨大な力が必要な筈なの、それをミキナは瞬時に行った…という事は
そうよ。ここに来る前に巫女や兵を何人かぶっ殺して力を吸収しておいたの…時間が無かったからね。効率的な使い方でしょ?
信じられない…
何言ってるの?この星の源となる力として永遠に生き続けられるのよ?こんな素晴らしい事ってあるかしら?
ミキナ…様……貴方は………
…下がりなさい。カンナ
え?
ミキナ…貴方を……この星を…こんな事態にしてしまったのは全て私の責任です
………?
だから私は…責任を果たす為にも…貴方を…倒します
…あはっ、いいわね?姉様。そうよ。キテ?キテ?頂戴?早くココに?キテよ?
い、いけません!ルナ様…
カンナ、ごめんね。やっぱり私は貴方と…一緒に帰れない、や
そんな…どうして……どうしてですか?ルナ様が女神だったのはもう昔の話。そこまでする必要なんて…
カンナ…貴方と会うまでの間、記憶を取り戻すまで考えていました…この星がこうなってしまったのは…元を辿れば全て私のせいなんです、ミキナの言う通り、です
…………
それなら…私も…
いえ、貴方の行動は私の事を純粋に思ってしてくれた事…それに貴方の優しさで私は救われました
ルナ様…
は~い。逢引はそこまでで~す。さよなら