月 アマノガワ

シズク

セイカさ…セイカさん!起きて…起きて下さい

釣鐘セイカ

ん、シ、シズクちゃん?お、おはよ…

シズク

良かった。目を、目を開けて…生きていてくれて…

釣鐘セイカ

シズクちゃんこそ、その無事みたいで良かったよ。怪我とかない?

シズク

なんとか…

釣鐘セイカ

良かった。そういえばシズクちゃん、さっきの光って…その、もしかして思い出した?

シズク

……そうですね。その…女神の名を語っていた人の正体は思い出しましたよ

釣鐘セイカ

あー、ごめんなさい。その…ルナ様…私、その…先に思いだして、説明してる暇なかったから…って、あ

そういうと、シズク…ルナ様は私の事を抱きしめた

釣鐘セイカ

あ…ル、ルナ様

シズク

ごめんなさい…カンナ。あなたには苦労をさせて…でも、もう大丈夫。全部…思い出したから

釣鐘セイカ

…はい。その…お帰りなさい。女神様

私は…全てを思い出した

シズクちゃんは、かつて月の世界を治めていた女神ルナ様
そして私、釣鐘セイカはかつてルナ様の傍で仕えていたカンナという侍女だった事

幼い頃、迷いの森に捨てられていた私を女神様は拾ってくれた
何の能力も無い私を傍に置いて育ててくれたのだ

ルナ様は私を本当の家族のように接してくれた

そしてルナ様は、いつかあの星に行きたい夢を語ってくれた
あの美しい星、地球に

その夢はいつしか私の夢にもなっていた

そして私達は、あの星に行きたい思いを募らせていた
しかし当時、月と地球は互いに存在を認識し合い戦をしていた
僅かな季節にのみ現れるアマノガワを渡り、互いの勢力が殺し合いをしていたのだ

互いの世界が殺気に満ちていた、そんな時代
そんなある日、私達は周囲の目を盗み地球へと渡る事を決意した
戦の混乱に乗じて地球へ渡る
私達はその計画を実行に移したのだ

立場もなにもかも捨て
私達はアマノガワを駆け抜けた

だが、途中で兵に掴まった
兵を率いていた者の名はミキナ。
ルナ様の実の妹だ
ミキナ様は知っていたのだ、私たちの計画を
そして数名の兵を集め、密かに私達を尾行し行動に移した

ミキナ様はまず私を拘束し、人質にした
そして次はルナ様を捕らえ…殺したのだ
最後は私も…

シズク

ただいま……カンナ

釣鐘セイカ

ルナ様…そうだ。さっきの狐…アマテラスは?

シズク

それなら…おそらく消滅したわ。私が能力を発現した際に全てを消してしまったから

釣鐘セイカ

そう…ですか、そうか…ルナ様の力なら、それも可能ですね、全てを反す力。アマテラスの光さえ反射してしまったんですね

シズク

そうね。無我夢中だったけど、女神としてではなくシズクという人間の感情が…私という存在を、本来の能力を思い出してくれたの

釣鐘セイカ

本当に、本当に良かったです。ルナ様

シズク

ありがとう…さっ、もう行きましょう。長居は無用よ

釣鐘セイカ

そうですね、帰りましょう。地球に

ルナ様と私は、再び地球に向かって走り出した

月 月の城 女神の間

リューナ

一体どうなっているんだ!女神様はどちらに!?

一般兵

ど、どうやらセレナ様、シカナ様と共にアマノガワに向かったと先ほど報告が…

リューナ

シズク達を追って、か。しかし…それにしても遅い…女神様が同行されているのなら、ここまで時間が掛かる筈が

シカナ

いにゃ~、すいません。リューナ様。遅れてしまいましたにゃ

リューナ

なっ?シカナ…か。その傷…一体何があったんだ…

シカナ

いや~ちょっとしくじってしまいましたにゃ~

リューナ

しくじった?女神様は?セレナは…一緒ではないのかい?

シカナ

う~ん。リューナ様?

リューナ

なんだい?一体何が…起こっ……

シカナ

ちょっと黙ってて

リューナ

なっ?

一般兵

!?

一般兵

シ、シカナ様!?な、何を

シカナ

…はー、お前達も少し静かにしてなさい?

一般兵

が、は…

一般兵

…ぐっ……

シカナ

全く…まさかルナが蘇るなんて…セレナもアマテラスも消しちゃうし、こっちが混乱しそうよ、もう…

シカナ

あ~、あった。あった、これこれ、これを取りに帰ってきただけなのに、全く、馬鹿な子達ね

シカナ

逃がさないわよ。ルナ、カンナ…必ずまた殺してあげるからね?

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