月 アマノガワ

シカナ

は~~~…たいした威力ね。流石は神の武器って所かしら

シズク

うっ、ぐ…

シカナ

しっかし、思わずぶっ放したといってもさ~

シズク

…大丈夫?カンナ?

釣鐘セイカ

…はい。私は、平気です

シカナ

まさか、ハバキリノヤに耐えるなんてね…驚愕だわ、化け物ね

シズク

出力が…控えめでしたからね。なんとか防ぐ事が出来ました

シカナ

ふ~ん…まぁ、いいわ。また起動するのはちょっと面倒だけど、その分くらいの力は補充してあるし、さっ、次、次

シズク

カンナ。逃げなさい!早く!!

釣鐘セイカ

そんなの嫌です!これじゃ、あの時と…何も変わらない

シズク

いいえ、あの時とは違います。今の貴方なら逃げられます。早く…逃げなさい

釣鐘セイカ

………

確かに…足はまだ少し痛いが走れない程ではない、けど…

釣鐘セイカ

嫌です。私、それじゃ一体何の為に生まれてきたのか…私、またルナ様を…

シズク

カンナ…記憶が無かったけど私は、また貴方と過ごせて幸せでした。それだけで、もう十分です。ありがとう、私はこの世界に生まれてきて良かった

釣鐘セイカ

ルナ…様

シズク

これは、私の唯一やり残した事。女神として生まれてきた者の責務…それを果たします

釣鐘セイカ

責務って何ですか?ルナ様は頑張ったじゃないですか?病弱の御体で十分過ぎる程、この星の為に最後まで…頑張りましたよ。もう…いいじゃないですか?

シカナ

カンナ?あんたが考えてる程に女神は甘いものじゃないのよ~?

釣鐘セイカ

そんな事どうだっていい!!私はルナ様に少しだけでも…一年でも、一ヶ月でも、一週間でも、一日でも私は…ルナ様とあの星で………共に、、、一緒に

シカナ

あ~ん?さっきから何言って…

釣鐘セイカ

綺麗なモノが一杯あるんです。いっぱい、いっぱい…見せてあげたいものがたくさん、、、、、あるんです。だから!!

シカナ

だ~から~させないってば。はい、今度こそ本当にこれで終わり?さよなら

シズク

それはこっちのセリフよ。カンナ?

シカナ

は?…ちょっとそれって…

女神様の手には光る槍が握られていた

シズク

そうよ。女神だけが使う事を許された神器にも匹敵する力…神槍『タケミカヅチ』

シカナ

あの後…どこを探してもなかったのに、姉様が所持してたのね…

シズク

正確には私の中に…意識に封印してありました。この槍の存在は危険過ぎましたから…

シカナ

ハバキリ対タケミカヅチ、か…、、、、あー、長く続いたこの世界も終わっちゃうわね。まぁ、いいわ。どうせハバキリを抜いた瞬間に月の崩壊は始まってるだろうし

シズク

そうね…さぁ、来なさい。ミキナ?もう…終わりにしましょう

シカナ

望むところよ。さて、じゃ、行きますよ…姉様!

その言葉に女神様はゆっくり頷くと

シズク

カンナ………あなたは、

釣鐘セイカ

え?

気が付くと私は病院のベッドの上にいた
私は神社の社の傍で倒れていたらしい
お母さんとお父さんには多分一生分くらいは怒られた。それはもう信じられない程に。
なんであの場所にいたのか?
私にも分からなかった
一緒に同い年くらいの女の子がいたらしいが
全く覚えていなかった

そしてあの出来事から
十年が経った

私は、あれからずっと祭りには参加せずにいた
何故かは分からないけど行く気になれなかったのだ
でも、今年の祭りには参加する事になった
参加といっても祭りの手伝いだ
お母さんに無理矢理押し付けられたのだ
良い出会いがあるといいわねとか、余計な一言も加えられて
全く大きなお世話だ

そして今日は祭りの当日
私は出店の準備やら巫女さんが踊る舞台の調整やらをしていた。するとそこに…

セイカ

あ、那美(なみ)ちゃん。どうしたの?巫女の踊りの練習していたんじゃないの?

那美

うん。でも、もう踊りは完璧だから暇になってセイカに会いにきたの

セイカ

あ、そうなんだ、でもここに来てもやる事は特にないよ?私もやる事は全部終わって休憩してたから

那美

ホント?なら一緒に鳥居にいかない?ちょっと用事があるから

セイカ

鳥居?んー…別にいいけど

那美

じゃ。行こう

セイカ

うん

那美
那美

ちょっとセイカ?聞いてる?

セイカ

え?あ、ごめん。何?

那美

もう、月見てよ。月!

セイカ

え?月?あ…

那美

綺麗でしょ?ここから見る月は凄い綺麗なの。それもこの時期は特にね。知らなかったでしょ?


驚いた
月なんて久しぶりに見たけど
本当に

セイカ

………うん。凄い、凄い…綺麗だね

那美

ね?そうでしょ!って、ちょ、ちょっとセイカ!?

セイカ

うん?

那美

あんた。何泣いてんのよ?

セイカ

え?あ、本当だ…私………泣いてる。なんでだろう?私…なんで泣いてるんだろう?こんな…泣ける要素ないのに、なんで、、、どうして…あれ?おかしいな?

那美

セイカ?大丈夫?

セイカ

大丈夫。大丈夫だから…


私は目を閉じ、涙を拭き
那美ちゃんの方を向くと、

セイカ

…ごめんね。もう大丈夫だか…え、あれ?

那美

……セイカ

セイカ

……………ル、ナ様?

那美

え?るな?って……誰の事?

セイカ

あ、そうか、また……私…


あの時
二人の女神が放った力はお互いの存在を
月そのものを…世界を消し去った

消える間際ルナ様は私にこう言った

シズク

カンナ………あなたは、あなただけは私が守るから…ごめんね


その言葉を最後に
ルナ様は
そして世界は
私の前から消えた

目が覚めて
広がっていたのは見渡す限り白い世界
なにもない
なにもない世界だった

セイカ

また…夢を見ていたんだな。私


ここにきてから

時折、今みたいな夢を見る

でも、いつも最後は決まって、あの星を見上げて目が覚める

そして広がるのは、また白い…何もない世界

ここには何もない

だが、そんな事どうでもいい事だ

たとえ夢でも、あの人の存在を忘れずにいれば

いつかまた会えるだろう

そして一緒にあの星を見に行くんだ

そう思い

私は今日もまた夢を見る

月 月の城

ルナ

また星を見てたの?カンナ?

カンナ

あ、ルナ様。ごめんなさい、でも

ルナ

全く、ミキナが怒ってたわよ?仕事中に逃げ出したって

カンナ

逃げたわけじゃないんです。でも…今日はあの星が凄い綺麗だったから

ルナ

だから我慢出来なかったの?仕方ないわねー

カンナ

え?座ったりして…いいんですか?女神様?

ルナ

いいのよ。だって今日は月がとっても綺麗なんだもん。仕方ないわ

カンナ

でも、きっと後でミキナ様に怒られちゃいます…

ルナ

あのね?私は女神様よ?ミキナが怒ってきたら私が逆に怒ってやるわよ?

カンナ

えっと、、、でも御体の方はいいんですか?

ルナ

ちょっとくらい平気よ。それにいつも部屋にいたんじゃ、それこそ具合が悪くなっちゃうわ

カンナ

ふふふ、なるほど…あ、見て下さい。ルナ様

ルナ

え?あ、

カンナ

綺麗ですね…

ルナ

そうね…綺麗ね。本当にとっても綺麗

カンナ

はい。そうですね。本当に…

ルナ

ねぇ、カンナ?

カンナ

はい?何ですか

ルナ

私ね、いつかあの星に…


見上げると

空にはいつもあの星があった

キレイ…とてもキレイ…あの星が

いえ、キレイなんて言葉ではとても足りない

たとえ…この世にあるどんな言葉を用いようとも

あの星の美しさを現す事なんて出来ないだろう

あぁ、なんて美しい星なんだ、と

少女は


その星に恋をしていた

第十五章 ユメノセカイ

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