俺は目を見開いた。魔王の物語!

俺たちも、その物語について探している。

それが本来の目的ではないけれど……

 俺の返事に、マサヨシはあれ、と眉をつりあげる。

そうなのか? 

話が違うなあ……セイさん曰く、君たちは魔王の物語についてよく知っているから、君らと話すといいよってことだったんだが……

俺たちは、そのセイさんから、魔王の物語について調査するように依頼されているんだよ

 言って、二人で首をかしげる。サンザシに目をやると、サンザシも首をかしげていた。


 三人で、首をかしげる。

 分からないことだらけだが、確信があるとすれば。

サンザシ、俺たちはまたセイさんに遊ばれているのか?

あの方が何をしたいのかわかりかねますが……この件に関しては、単純に楽しんでいるのかもしれません

あー、セイって人はそういう感じの人なのか

いやあ、嘘はいっていないよ!

 突如、俺たちの間にセイさんが現れた。きゃあ、とサンザシが叫ぶ。俺も思わずのけぞる。うお、とマサヨシものけぞっている。

ひどいなあ、僕を嘘つきみたいに言って!

 セイさんはもう、と腰に手をあてながら、部屋を見渡している。

凄い部屋だなあ。

これ、僕の座るとこないね。

じゃあ、浮いちゃおう

 けろっと言って、けろっと浮いているが。

セイさん、この世界に魔法って存在しているんですか? 

てっきり日本だとばかり思ってたんですけど

ここは日本だし、魔法なんてものはないぞ?

 マサヨシが、ふわふわと浮かぶセイさんを見ながら、眉を潜める。

魔法ないんですか、セイさん! 

でも、マサヨシさんは魔王の物語について知っているふうでしたよ?

おいおい、どういうことだ、それと魔法の関係ってあるのか、っていうか魔法ってあるのか

だー! 静かにお二人とも!

 セイさんがパンパン、と手を叩く。

ややっこしいから、僕が説明しに現れたんでしょ!

最初から説明しておいてくれればいいじゃないですか

 サンザシが不満そうに呟く。

 なあに? と笑うセイさんの顔が怖い。

 相変わらずこの二人の仲って悪いんだよな……。

こっちにもいろいろあるのさ! 

まず、タカシ君。

マサヨシ君は、君が最初に訪れた世界より大分前の日本に在住している、ごくごく一般的な人間である。

おっけい?

はい、おっけいです

 大分前、とマサヨシがぎょっとした顔でこちらを見ている。

 悪いが無視、ごめん、マサヨシ君。

よしよし、そしてマサヨシ君。

彼は今、魔王の物語についてよく知らないんだ。

でも、彼は今、その情報を様々な場所から集めている。

君の知っている情報も併せて教えてくれたら、将来的に君は魔王の物語についてよく知ることができる、僕が約束しよう。

僕が説明不足だったのは、今すぐに君は魔王の物語について知ることができないってことさ

……よくわかりませんが、ようするに俺が持っている情報を渡せってことですよね

そう、そういうこと。そうすれば、君はやがて栄誉を手にいれる、イエス!

5 駄菓子屋の未来 記憶の原点(5)

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