風呂からあがると、サンザシが廊下に座っていた。

ずっとここにいたの?

はい、私はサポーターですから

 サンザシは立ち上がり、にこりと微笑む。

さっきの……マサヨシさんと、話はした?

いえ、マサヨシさんは、私たちセットでお話がしたいとおっしゃっていました。

今は、お部屋にいらっしゃいますよ

そうなの……いやあ、それにしても、びっくりした

 思い返せば、一話目の姫様以来の出来事だ。

私もびっくりです。

セイさんのことも知っていらっしゃいましたしね

久々にセイさんが直接絡んでいるのか……いやな予感しかしない

私もです……

 サンザシが表情を曇らせたそのとき、廊下の奥からマサヨシがひょいと顔を出した。

お湯加減はどうだった?

とてもよかったです、ありがとうございます

そりゃよかった。てか、敬語とかいらねえぞ、気楽にいてくれ。んじゃ

 こいこい、と手招かれ、俺とサンザシはマサヨシの部屋に入った。







うわ……!

 部屋に入った瞬間、サンザシが感嘆の声をあげた。俺も思わずおお、と声を漏らす。


 その部屋は本で埋め尽くされていた。壁の本棚には本がぎゅうぎゅうと押し込まれ、そこに入らない本は床に積み上げられている。

 今にも崩れ去りそうだ……とういより、すでに崩れ去っている本もある。

きたなくて悪い。ってか、招いといてなんだけど、座る場所は……ああ、ここで

 マサヨシは、本を素早くどけると、露出した床に座布団を二枚ひいた。

 サンザシと二人で、そこに正座する。

 足をくずしてくれよ、とマサヨシは笑って、床に腰を下ろす。

凄い本の数ですね……!

 サンザシは落ち着かないようで、きょろきょろと辺りを見渡していた。

 俺も思わずそうしたくなるが、マサヨシが何か話したそうなので、とりあえずはマサヨシをじっと見つめる。

改めて、ありがとうございました

いえいえ、とんでもない

 マサヨシはあぐらをかき、両膝に手をおいて、ぐいと頭を下げた。

 俺も、彼にならって頭を下げ、そのあと足を崩す。

それで、えっと……セイさんから、どこまで?

ああ、早速本題だな。

いや、何も聞いてないぜ。

君らが何をしにここに現れたのかも、彼女はどんな存在なのかも

 そう言って、マサヨシはちらりとサンザシに目をやった。

 サンザシはめを大きく見開いたあと、私の存在ですか、と頭をかく。ゲームのサポーターですなんて、確かに説明しづらいだろう。

 そもそも、俺たちがゲームをしているということを言うのは、タブーだったはずだ。

 どうやってごまかすか……迷っていると、まあいいんだ、とマサヨシは肩をすくめる。

セイって人いわく、まあ彼らにも事情があるからさ、深く突っ込まないであげてねってことだし

 あの人は適当だなあ本当に!

申し訳ない……でも、そんな見ず知らずの俺たちを、どうして――

どうして招いたか?

 マサヨシは俺のことばを拾って、にやりと笑う。

そりゃあ、俺のためだ。単刀直入に言う。

魔王の物語って、知っているか?

5 駄菓子屋の未来 記憶の原点(4)

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