2人がやってきたのは、望月が毛玉に出会った教室だ。しかし、そこに毛玉の姿は無かった。
あれ?
居ない……。
2人がやってきたのは、望月が毛玉に出会った教室だ。しかし、そこに毛玉の姿は無かった。
本当に、この教室で合ってるのか?
うん。
間違いないよ。
移動しちゃったのかな?
参ったな。
色々聞きたいことがあったんだが。
その毛玉に頼れないとなると、やっぱり自分達で探すしかないか。
仕方ないね……。
これ以上登ると屋上か。
そういえばな、中学の屋上あるだろ。
あそこの工事もう終わってるらしいぞ。
ここは俺達の通ってた頃のままだろうから、
まだ閉鎖されてると思うけどな。
へぇ、本当に?
皆、あの手この手で入ろうとしてたよねぇ。
気になるなぁ。
だろ?
松原先生が、
屋上見せてくれるって言ってたんだ。
帰ったら行こうな。
……うん。
廊下に出たとき、2人の視界の隅に、何かがチラと見えた。
青い瞳が、2人を見上げている。
危ねえ!
笠原は、咄嗟に望月の手を掴んで跳んだ。
女の子の斧が、2人が立っていた場所を切り裂く。
このまま走るぞ!
女の子は空振りのため一瞬バランスを崩したが、すぐに後を追って来た。
こっちは確か、図書館の方か。
クソッ、この先は行き止まりだ。
この距離じゃ適当な部屋に隠れてやり過ごすこともできねえな。
……仕方ない、図書館に入るか。
あそこは入り組んでるし、
簡単に撒けるはずだ。
このまま図書館に入るぞ!
と、図書館ってどこ!?
通路の突き当りだ!
!?
突き当りの扉を開いた笠原は愕然とした。
扉の向こうは、何もないガランとした部屋だった。
階を間違えたのか?
いや、今日行ったばかりなんだ、間違えるはずがない……。
扉を間違えたのか? 突き当りの部屋は1つだ、ここしかない。
考えても仕方がない……!
望月! とにかく部屋の隅に行け!
う、うん!
慌てて、望月が扉の対角へ走る。
笠原が扉を閉めようとするが、少し遅かった。女の子が、既に扉の目前へ迫っている。扉が閉まりきるより先に、女の子が部屋に飛び込んだ。
うおっ!
望月の姿を捉えた女の子が、斧を構えてジリジリと歩み寄っていく。
目の前の笠原には目もくれない。
なんだこいつ……。
俺は襲わないのか?
もしかして、狙いは望月だけなのか。
それなら……。
女の子は、望月しか見ていない。
笠原は後ろからそっと近づき、斧を取り上げると、女の子を抱きかかえた。
!?
呆気無いな。
斧さえ無けりゃただの女の子だ。
だ、大丈夫?
望月が近づくと、女の子は抱えられたまま、望月に向かって必死に両手を伸ばしてきた。
思わず望月が後ずさる。
ま、まだ襲ってくるのね。
斧は取り上げたから何も出来ないはずだが、ずっと纏わりつかれるのも迷惑だな……。
適当な部屋に閉じ込めておくか?
ええ? それはちょっと可哀想じゃない?
お前、仮にも命を狙ってきた相手なんだぞ?
閉じ込めるのが嫌なら、どうするんだ。
ずっとお前にひっついてくるぞ?
この調子だと。
裕樹がそのまま抱きかかえててよ。
嘘だろお前……。
それにしても……。
望月が、女の子をまじまじと眺める。
やっぱり、
どこかで見たと思うんだけど……あ。
望月が思い出したように手を叩く。
この子、めがちゃん人形じゃない?
は?
めがちゃんって、一昔前に流行った着せ替え人形のことか?
違う違う。
人形じゃなくて女神よ。
着せ替え女神のめがちゃん。
懐かしいなあ。
……別にどっちでもいいだろ。
ていうか、こんな服着てたか?
テレビでやっていたのとは違うようだが。
んー、その子は、私が持っていためがちゃんが元になってるんだと思う。
お母さんが作ってくれた服の中に、
そういうのがあったはずだから。
ああ、なるほどな。
だから見たこと無い服を着てるのか。
まぁ、それはいい。
これで1つ、危険を潰せたわけだ。
学校を歩き回るのも、幾分か楽になるだろ。
続けようぜ。