僕たちの前に奇抜な服を着た少年が現れ、
玉座へと座った。
彼の服は緑色や茶色などが
入り組んだデザインで、
どう見ても王様とは思えないような格好だ。
年齢は僕より少し下みたい。
彼は含み笑いを浮かべながら
僕らをザッと眺め、
軽く「ふふ~ん?」と声を漏らした。
僕たちの前に奇抜な服を着た少年が現れ、
玉座へと座った。
彼の服は緑色や茶色などが
入り組んだデザインで、
どう見ても王様とは思えないような格好だ。
年齢は僕より少し下みたい。
彼は含み笑いを浮かべながら
僕らをザッと眺め、
軽く「ふふ~ん?」と声を漏らした。
待たせたね、勇者様。
ボクはグラドニア公国を
治めるクリス。
最後の試練の洞窟の
審判者でもある。
よろしく。
僕は勇者見習いのアレスです。
一緒にいるのは
ともに旅をしている
シーラとデリンです。
ふっ、国王が子どもとはな。
デリンは鼻で笑いながら呟いた。
するとクリスくんは頬をピクッと動かし、
途端に不機嫌そうな顔に変わる。
そして鋭い目つきでデリンを睨み付ける。
……おい、貴様。
今、ボクをバカにしたな?
子どもが王をしていて何が悪い!
別に……。
良くも悪くもない。
貴様に興味など皆無だからな。
ちょっとデリン、
なんでそんな挑発するようなことを
言うんだよぉ……。
僕が不安に思っていると、
クリスくんも負けじと言い返す。
三下魔族のクセに生意気な。
魔法力ならボクの方が
貴様よりも
断然上だと思うけどねぇ?
あ……そうか……。
ボクの実力を妬んでいるのか!
なるほど、そういうことかっ♪
なんだと?
まぁまぁ、デリン……。
あの、国王様はデリンが魔族だと
ご存じなのですか?
一触即発の雰囲気の中、
絶妙のタイミングでシーラが話に切り込んだ。
するとクリスくんは視線を彼女へ向けて
得意気に微笑む。
ナイス、シーラ!
一時的とはいえ、話題が逸れてくれた。
当然だ。気配で分かる。
ボクは魔術師ルーンの末裔であり、
審判者でもあるからね。
そういえば
審判者のタック様やビセット様も
似たような感覚を
お持ちだった気がします。
キミも単なる人間じゃ
ないみたいだね。
不思議な力を感じるよ。
ふんっ!
どうせ誰かが事前に情報を
伝えていたに違いない。
よくインチキ占い師が
そういう手を使うだろう?
っっっっ!
せっかく場の空気が和やかになりかけたのに、
デリンの一言で
一気にそれは凍りついてしまった。
クリスくんは眉をつり上げ、
瞳には怒りの炎が燃え盛っている。
デリン、勘弁してよ……。
本来なら魔族をこの城に入れるなど
絶対にありえないことなんだ。
でも勇者様のお供だから
特別に許してやっているのだぞ?
――ありがたく思え、ザコ!
……殺してやろうか?
面白い、やれるものならな!
ボクの破邪魔法を使って
一瞬で滅してやる!
――もうっ!
2人ともやめてよっ!
なんで僕たちが争わなければ
ならないのさっ?
堪忍袋の緒が切れた僕は思わず叫んでいた。
その場にいた全員の視線がこちらに集まる。
特にデリンとクリスくんは、
ほぼ同じタイミングで振り向いて
目を丸くしている。
デリン、なんでそんなに
クリスくんを挑発するの?
いくら気になるからって、
やりすぎたら嫌われちゃうよ!
ちょっ! 勘違いするなっ!
なんでこんなガキを――
そう見られたくないなら
程々にしてよ!
う……。
はっはっは!
アレス様に叱られてやんの~っ♪
クリスくんはデリンを指差しながら
大笑いしていた。
完全に他人事で、全然反省していない。
――クリスくんっ!
はいぃっ!
クリスくん、
王様ならもっと広い心を
持たないと!
細かいことに動じてちゃ
ダメでしょ!
……っ……
ごめんなさい……。
周りにいたクリスくんの側近や兵士たちは
必死に笑いを堪えているようだった。
大臣らしき人は
温かい目で僕らの様子を眺めている。
おふたりとも、
ここはアレス様に免じて
休戦としてはいかがですか?
う……うむ……。
し、仕方ない。
ではアレス様、
ここへ到着するまでに起きたことを
簡単に話してもらえないか?
……分かりました。
僕は故郷のトンモロ村を出てからのことを
簡単に説明した。
ただ、デリンがしてきたことを
そのまま話すと
トラブルになりかねないので、
それとなく柔らかめにしておいた。
それでもクリスくんはデリンに対して
不快感を持ったみたいだけどね。
一方、デリンはそっぽを向いて
涼しい顔をしている。
なるほど、
アレス様も
ご苦労をなされたようだ。
レインさんのことは……
本当に申し訳なく思っています。
僕の力が足りないばっかりに……。
レイン殿には
会ったことはなかったが、
勇猛果敢さと魔法技術の高さは
聞き及んでいた。
だが、
彼女も我が一族に連なるもの。
アレス様のお役に立てて
本望だったと思う。
でも失った命は……
取り戻せませんから……。
アレス様……。
…………。
では、早速だけど
試練の内容について話をしよう。
いいかな?
はいっ!
僕は気を引き締め、クリスくんに注目する。
この城の地下に試練の洞窟がある。
その最奥に収められている、
伝説の勇者アレク様が使った鎧を
手に入れていただきたい。
分かりました。
その鎧こそが
ボクの授ける勇者の証。
つまり手に入れた瞬間、
あなたは真の勇者となる。
真の……勇者……。
仲間と協力してもらって構わない。
ボクは同行して
様子を見させてもらうよ。
出発する時、
ボクに声をかけてくれ。
シーラ、デリン。
僕はすぐにでも試練に挑戦したい。
どうかな?
アレス様にお任せします。
好きにしろ。
俺はお前ら人間と違って
ヤワではないからな。
クリスくん、
僕はこのまま
試練の洞窟へ行きます。
まだ町に着いたばかりの
はずだろう?
休まなくてよいのか?
……では、クリスくんに
ひとつお願いをしてもいいですか?
言ってみたまえ。
僕たちに回復魔法を
かけてください。
それで充分がんばれます。
ふふっ、分かった。
リカルド、勇者様たちに
回復魔法をかけて差し上げろ。
それが終わり次第、
ボクもアレス様とともに
洞窟へと向かう。
御意のままに。
こうして僕たちは宮廷魔術師さんたちに
回復魔法をかけてもらった。
さすが国で雇われているだけあって
効果はかなり高い。
――でも僕はシーラの回復魔法の方が
温かみがあって好きだけどね。
ちなみに僕らが魔法をかけてもらっている間、
クリスくんは冒険の支度を
しているようだった。
つまり洞窟内はそれなりに危険な場所も
あるんだろうなぁ……。
うんっ、気を引き締めなきゃ!
次回へ続く!
ショタとか……全く作者も分かってるじゃないか