圧倒的なリーチを持つ化物に対し、その場にある物を旨く利用する事で機転を利かせ、何とか窮地を脱した輝明。
慣れない筈の戦闘行為を難なくこなす輝明自身を他所に、頭の片隅では道中で度々襲ってくる違和感や既視感が、次第に何か重要な確信へと形作られて行くのを感じていた。
圧倒的なリーチを持つ化物に対し、その場にある物を旨く利用する事で機転を利かせ、何とか窮地を脱した輝明。
慣れない筈の戦闘行為を難なくこなす輝明自身を他所に、頭の片隅では道中で度々襲ってくる違和感や既視感が、次第に何か重要な確信へと形作られて行くのを感じていた。
仮にそうだとしても、どっちみちこのままじゃ不味いはずだ。
この仮説が正しいとして、その先に進む為には何かが……、何かが足りない。
道中、その足りない何かを埋める為の手がかりに、俺は遭遇出来たのか?いや、無いな。
……だが何となく、ふと思いついた事はある。
まぁ、どっちみち今までも突然の賭け、それも命懸けの大勝負の連続みたいなもんだったしな……。
最後の最後も、結局はいきなりの出たとこ勝負になっちまうのかな。
はっきりとしたヒントがあった訳じゃない。
けれど、俺の中で確かな何かが少しづづ積み上がっていくのを感じた。
今までの点と点を結ぶ何かが、ようやく俺の中で繋がっていくのを……。
後は本人に直接聴くしか無い、か……。
とにかく、今は合流してこの場を離れるのが懸命だな。
先程までの戦いの火照りを覚ますかのように、少し奇妙ながらブツクサと自分自身に語りかけつつ売り場を後にすべく、月明かりを頼りに辺りを警戒しながら、先に脱出したリアの向かった出口へと歩を進めた。
輝明、こっちです!!
お、居た居た!
無事だったか。
それはこっちの台詞です。
さっきの奴は?
心配無い、ちゃんと寝かしつけて来た。
……今頃、あっちで少し長めの夢を見ているはずさ。
……そうですか、良かった。
ああ、でもさっきの騒ぎを聞きつけた奴が集まってくる可能性もある。
はい、ここからは一気にタワーへと向かいましょう。
ああ、武器が手に入ったからといって、あんなのとそう何度もやりあってたらこっちの身が持たないし、何よりキリがないからな。
ですね。
引き続き、道案内は私がします。
道中に彼らが居ても、構わず横を突っ切りましょう。
ああ、先を急ごう。頼むぜ、『相棒』。
はい!!
店を後にした二人は、市街地を走りぬけてセントラルタワーへと急ぎ足で向かった。
途中の繁華街を通り過ぎる際の店内や路地裏には、奴らと思しきシルエットが幾つも見て取れた。
幸いにも距離があったせいか、音に振り向く個体が何匹か見受けられた程度で、基本的にはフラフラと徘徊するばかりで、二人を気にかけるモノは居なかった。
この時間帯のお陰か、奴らの動きも緩慢だな。
ええ、基本的には近寄ったり刺激をしなければ大丈夫みたいです。
どうやら彼らが人間であった頃よりも、通常の知覚機能はかなり退化しているようですね。
どこぞのゾンビ映画みたいに、全部が全部大挙して押し寄せて来たらひとたまりもないからな、実際。
そうですね、災害当初こそ地獄絵図のような悲惨な光景ばかりでしたが、生存者が居なくなった今じゃ街は不気味なぐらい落ち着いてますね。
不幸中の幸い、といった所か。
そろそろタワー入り口が見えて来ますよ!
市街地を抜けると、公園のように綺麗に整備された道の中心にある噴水へと辿り着いた二人は、立ち止まって息を整えながら正面に聳えるセントラルタワーを見上げた。
はぁ……、はぁ……。
ようやく、辿り着いたか。
はい、あれが目的地であるセントラルタワーの正面ゲートです。
輝明、大丈夫ですか?
バディ・システムのアシストがあるので、そんなに呼吸は乱れないはずなんですが……。
いや……、多分これは歳。
じゃなくて、気分の問題だなきっと。
なんだか、随分と走らされた気分になっちまってな。
……そう、ですね。
とりあえずはだ、何とか無事にここまで来れた。
後はメインコンソールのあるコントロールルームまで、このタワーを登っていくだけだな。
はい。
まぁ、当然中にはあいつらがいらっしゃるんだろうから、また一段と気を引き締めてかないといけないんだろうけど。
ええ、特に避難船側には絶対に近づかないようにしないと……。
それ以外は比較的安全なはずではあるのですが、どこに潜んでいるかは未知数です。
後は突発的な遭遇戦になるだろうな。
それでもなるべく時間をかけずに突破したい所だな。
はい。
……。
リア。
?
その……、なんだ。
お前は、お前自身は本当はどうしたいんだ?
えっ、……。
この星を爆破したら、当然お前も死ぬ。
この星を、この世界を壊したらそれで何もかも終わりなんだぞ?
……。
確かに、この星のたった一人の生存者としての責任は重い。
それは大事な事かもしれない。
けど、お前にとって本当に大切なモノは、
一体何だ?
私の……、大切なモノ……。
ああ、そうだ。
これからタワーに入るまでに、それをよく考えるんだ。
その上で、タワーに着いたらもう一度、別の質問をさせて欲しい。
いいな?
……はい。
よし、じゃあそろそろ先に進むぞ。
……。
決して楽ではない道のりを超えて、遂に目的地であるセントラルタワーへと辿り着いた二人。
いざタワー内部へと侵入せんとするその直前に、輝明はリアに対して2つの質問を投げかける。
果たして、リアの答えは……。そして、輝明のもう一つの問いとは。