"第1問"

"ここに、数字が書かれたカードが5枚ある"
"0, 2, 4, 6, 8が1枚ずつだ"
"この中から、3人に1枚ずつ配った"

"3人に配ったカードのヒントは2つ"

"Aのカードに書かれた数字は、3人の中で一番大きい"
"Bのカードに書かれた数字は、Cのカードの2倍の数"

"さて、Cのカードに書かれた数字は?"

望月 希

なんだ、ゲームってクイズのことなのね。
もっとピコピコしてるものかと思ったわ。

"そういうのは持ち込み禁止だからね"

望月 希

真面目な幽霊……。

望月 希

まぁ、これなら私にもできるわ。
メモ帳とか、ある?

"どうぞ。隣のパソコンを使って"

望月 希

どうも。

望月 希

まず、2つのヒントから各自配られる可能性のあるカードは……っと。

A = 4, 6, 8
B = 4, 8
C = 2, 4

望月 希

こんな感じかしら。
Aはヒント1、
B, Cはヒント2から絞り込めるわ。
そしてBはヒント1から更に候補が消えて……。
BがこうならCはこうなって……。

A = 6, 8
B = 4
C = 2

望月 希

Aは確定しないけど、
B, Cはこれで数字がわかるわ。

望月 希

簡単ね。
Cの持っているカードの数字は2よ。

"うん。正解"
"それじゃ、次の問題ね"

"これは、正方形の展開図だ"
"でも、正方形にならない展開図が1つある"
"それはどれ?"

望月 希

なんだか、就活の時にやる問題みたいね。
中学校でも似たような問題やってたなぁ。
さゆりちゃんが「これからの高校受験にはこういうのが必要になるよ!」なんて言って、一緒にやらされたっけ……。

望月 希

さて、問題を解こうかな。
A、は基本的な展開図ね。
Bはちょっと変だけど、
確かに正方形になるわ。
C……はだめね。重なる部分がある。
ちなみにDは……DはAと同じね。

望月 希

わかった。
答えはCよ。

"正解! 中々やるね"

望月 希

ばかにしないでよ。
簡単な問題ばかりじゃない。

"もっと難しい方がいい?"

望月 希

そういうわけじゃないけど。

"僕はこういう問題しか知らないから"
"もっと難しいのを出せって言われても無理だけどね"

"それじゃ、第3問だ"

"「ご飯は美味しい」の命題が正しいとき"
"必ず正しいと言えるのは、どれ?"

"1, 美味しいものは、ご飯である"
"2, 美味しいから、ご飯である"
"3, 美味しくないものは、ご飯ではない"
"4, ご飯以外は、美味しくない"
"5, 美味しいから、これはご飯である"

望月 希

ご飯しか美味しいものが無いとは言っていないから、1, 2, 4は違うわね。
5なんて真逆のことを言っているし。
答えは3ね。
ご飯が美味しいものとすれば、美味しくないものはご飯ではないわ。

望月 希

答えは3よ。

"正解! いやー、強いね"
"君の勝ちだよ"

望月 希

え、もう終わり?

"うん"
"いや、問題はまだあるんだけど"
"5問しか用意してないからさ"
"3問正解されちゃったし、僕の負けだよ"

 背後で、ドアが開く音が聞こえた。

"ドアは開けておいたよ"
"それじゃあね"

望月 希

確かに、全問正解とは言ってなかったわね。
でも、こんなにあっさり出してくれるなんて。

 何かの罠かと身構えたが、
 パソコンは、もう何も表示しない。

 望月は、恐る恐るパソコン室を出た。

望月 希

まさか夢の中で七不思議を体験するなんて。
あの子を探すにしても、命の危険がある七不思議には近づかないほうが懸命ね。

トイレとか、理科室はアウトかしら。
音楽室の霊とかなら、別に殺されることはないし大丈夫ね。
別に、会いたくはないけど……。

 望月は、学校の周囲から先に探すことにした。
 学校外の七不思議は聞いたことがない。
 外なら安全のはずだ。

 とは言え、学校の外に隠れられるような場所はない。
 探せる場所は、すぐに回りきってしまった。

望月 希

やっぱり居ないかぁ。

 望月は、校舎裏の花壇前で一休みすることにした。

 この花壇は学校の委員会で管理されており、そのメンバーだった望月は、よく花壇の手入れに来ていた。綺麗な紫陽花が植えられていて、見頃になると、沢山の生徒が訪れた。

 懐かしげに花壇を眺めていた望月だったが、ふと、奇妙な音が聞こえることに気がついた。

望月 希

? 何?

 すぐ近くから聞こえてくるようだが、付近に音を出すようなものは見当たらない。

 注意深く聞いてみると、どうやら花壇の方から聞こえてくるようだ。

望月 希

この花から、音楽が聞こえる。

耳を澄ませると、確かに花から音楽が聞こえてくる。

望月 希

随分メルヘンチックじゃない。
そういえば、さゆりちゃんと花に向かって歌いかけるとき、花も歌い返してくれればいいのに、なんて話しあったっけ。
その影響かしら。

望月 希

この曲、クラシックかな?

 暫くの間、望月は花から流れる音楽を聞いていた。

望月 希

この夢の中に来てからは悪い目にしかあっていなかったし、ちょっとした癒しポイントね。ここは。

望月 希

そろそろ行こうかな。

 歩き出そうとした途端、望月は膝から崩れ落ちた。

 立ち上がろうにも、手足に力が入らず、動くことが出来ない。

望月 希

何、これ……。
体が動かない……。
なんで?

望月 希

私はただ、花から流れていた音楽を聴いていただけ……。
それがまずかったの?
でも、花の音楽なんて七不思議は……。

"音楽を聴く"

望月 希

そうだ……。
音楽に関係する話なら1つあった……。
5回聴いたら、死ぬ……なんて音楽……。
まさか……花から流れてきてるのは……。

 花達は、絶えず音楽を奏で続ける。それは美しい音楽だったが、今まさに、望月の命を奪おうとしている。

望月 希

あの花は……ずっと同じ音楽を流していた……。
私……ここに来てから……何度あの曲を聴いたの……?
早く……離れないと……。

 焦る内心とは裏腹に、鉛のような体は言うことをきかない。

 次第に視界がぼやけ始める。

望月 希

嘘……、私、ここで死ぬの……?

裕樹……

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