始業のチャイムが鳴ったというのに、席に望月の姿は無い。
朝礼が始まり、教師が望月の欠席を伝える。
欠席理由は風邪らしい。
アイツ……今日は休みか?
始業のチャイムが鳴ったというのに、席に望月の姿は無い。
朝礼が始まり、教師が望月の欠席を伝える。
欠席理由は風邪らしい。
風邪……ね。
笠原はスマートフォンを取り出した。
望月からメッセージは届いていない。
こちらからのメッセージも、見ていないようだ。
休むなら、何かしら連絡をしてくるはず。
こっちからの連絡にも反応がないってことは、返信も難しいほどの症状ってことか?
ただ単に、返信する前にまた寝ちまったか?
はぁ……。
変な相談されたばかりだからか、
妙に心配してしまうな。
あっという間に時間は流れ、放課後。
授業は全く頭に入らず、何度も教師に注意された。
学校が終わるとともに足が向かうのは、当然望月の家だった。
何事も無けりゃいいんだが……。
本当にねー。
……なんで当たり前のようについてきてるんだよ、お前。
部活はどうしたんだ?
部活は大切だけど、友情には勝てないわ。
私だって希が心配だもん。
そうかい。
お前もやっぱり気になるか?
夢の話。
そりゃ、
相談された次の日にこれだからねー。
無関係とは思えないよね。
だよな……。
どちらにせよ、望月に会ってみないことにはわからんな。
本当にただの風邪かもしれないし。
そだねー。
ただの風邪ならいいんだけどね。
いや、よくないか。
2人が望月家の前にやってきた。
チャイムを鳴らし、声を掛ける。
ごめんくださーい。
暫く後、望月の母が出てきた。
心なしか、顔色が良くない。
ああ、さゆりちゃん……。
笠原くんも。
お久しぶりです。
望月、大丈夫なんですか?
ええ、大丈夫よ。
心配しないで。
……。
いえ、2人とも、
あがってもらっていいかしら?
?
はい。
おじゃましますー。
2人はそのまま、望月の部屋へ通された。
ベッドには、望月が眠っている。
……。
熱は、無いみたいだな。
本当に風邪なんですか?
いいえ……。
お医者さんに見てもらったけれど、
異常は見つからないって……。
それなのに、眠りから覚めないのよ。
2人は顔を見合わせた。
やはり、あの夢の話が無関係には思えない。
希、私だよ。さゆり。
聞こえる?
……。
反応は無い。
いくら呼びかけても目を覚ますことはなく、呼吸音もほとんど聞こえない。
文字通り、死んだように眠っている。
やっぱり、ダメみたいね……。
友達なら、
何か反応があるかと思ったんだけれど……。
本当に異常は無かったんですか?
ええ。
今日は簡単な検査だけだったけれど、
なんとも無かったそうよ。
数日続くようなら、もっと精密な検査をするそうだけれど、お医者さんの話では、精神的な何かじゃないかって。
家では普段と変わらなかったわ。
学校ではどう?
何か変わったことはなかった?
学校でも特に変わった様子は無かったです。
ただ、1つ気になることがあって……。
昨日、望月から変な相談をされたんですよ。
2人は簡単に、望月の夢の話を伝えた。
そう。
あの子がそんな話を……。
確かにさゆりちゃんの言う通り、中学校はあの子にとって特別なものになったはずだけれど、今の学校も嫌いでは無いんでしょう?
俺達の知る限りでは、
いつも楽しそうにしていましたよ。
私もそう聞いているわ。
その時、電話の鳴る音が聞こえてきた。
ごめんなさい。
ちょっと席外すわね。
はい。
やっぱり、この夢に何かあるんだろうな。
だろうねぇ。
オカルトはあまり信じない方だけど、この件に関してはそれぐらいしか思い当たることがないよ。
とすれば、やっぱり怪しいのは中学校か。
明日は丁度休みだし、
明日行ってみようと思う。
お前はどうする?
勿論行くよ。
わかった。
それじゃあ、お昼過ぎに現地集合にしよう。
時間の詳細はまた連絡する。
おっけ。
調度良く、望月の母が戻ってきた。
あら、帰るの?
はい。
希の事はこちらでも調べてみます。
何か分かれば連絡しますから、
もし様子に変化があれば連絡をください。
ええ、ありがとう。
何かあったら連絡するわね。
それじゃ、また明日な。
うん、また明日。
何かわかるといいね。
ああ。
せめて手がかりだけでも、
見つかればいいんだが……。