広場では、
いよいよ勇者を見極める儀式が、
始まろうとしていた。
広場では、
いよいよ勇者を見極める儀式が、
始まろうとしていた。
というわけで、上空から近くまで降りてきました
ニャ
ちなみに僕らは天使なので、普通の人には姿が見えません
悪いことし放題ね!
いや、天使なので……
ではこれより、選出の儀を行なう
真の勇者の資格を持つ者のみ、この岩より聖なる剣が抜けるだろう!
……では、整理番号001から020までの方は、岩の前に集合してください
始まったわね
始まったね
まず1人目。
地味な村人その1といった風貌の男が、
剣に手をかけた。
母さん…。見ててくれ。俺、がんばるよ。
彼は勇者の器じゃないわね。モブ感がハンパじゃないもの
人を見かけで判断するのは良くないよ
だいたい、こういうのって勇者の素質とか血筋だとかを証明するものでしょう?
がんばってどうにかなったら困るわ
まあ、そりゃそうだけど
天使たちの言う通り、
青年には剣を引き抜くことができず、
あとにつづく参列者が挑戦することになった。
ねえ、ログ
うん?
で、誰が勇者なの?
それなんだけど……
実は勇者の容姿に関する詳細な記録は残っていないんだ
でも絵画や本には描かれているわよね?
あれは後世の人たちの想像なんだ。だから誰も正しい勇者の姿は知らない
……そうか
僕らは初めて、勇者の真の姿を目にすることになるんだね
なんだか興奮してきたよ!
それは勇者萌えっていう性癖の暴露ってことでいい?
そういう興奮ではない
ログは誰を応援する?
応援?
あの中にいることは間違いないのでしょう?
そうさ。あの中に、伝説を作り上げる英雄になる人物がいるんだよ
でも、最初のブロックにはいなかったようね
最初に挑戦した20名の中には、
剣を引き抜くことができるものはいなかった。
彼らはとぼとぼと広場を後にするか、
見物客の群れに加わった。
徹夜して一番に並んだのに……
整理券で若い番号とったからって勇者にはなれないわよ
そうだね
あら?
メモリエルは、
群集のかなり後ろの方に並んでいる、
少年に目をつけた。
……
彼、かなり勇者っぽいわね
そうだね。書物の挿絵なんかに描かれる想像上の勇者は、あんな感じだよね
決めたわ
私は彼を推します!
ログは誰推し?
推しって……。僕は別に
もう決まってることだから、応援してもなあ
まさか、あの大鬼推しじゃないでしょうね?
グオオオオオオオオオ!
いや、あの人も勇者志願者だから
じゃあ、彼が勇者だと思う?
ガルルルルルルルルルゥ!
……彼だけは避けたいね
儀式が始まってから、
数時間が経過した。
いまだ、
剣を岩から抜くことができる者はおらず、
ついに、
最後のグループの順番が来ようとしていた。
いよいよ最後のグループだね
ねえ、ログ
なんだい
性癖はいつ暴露するの?
しねえよ
あまりにも勇者が誕生しないから飽きたのよ
安心して。これから最後のグループだよ
イマジン、壇上の黒板にズームしてくれ
ニャ
壇上に設けられた黒板には、
名前がいくつか書かれている。
それは、岩から聖剣を、
少しでも抜くことのできた人物の名だった。
さらに、
引き抜いた長さに応じて、
順位が付けられており、
今、一番の記録保持者の名前の横には、
「勇者(暫定1位)」
と書かれていた。
こんな測定会みたいな展開になるとは驚きね
スッと剣が抜ける気配がないから、途中からそういうルールにしたみたいだね
でも、これじゃただの力自慢大会ね
まったくだね
おや。最初の方に並んだせいで、記録をとってもらえなかった若者が怒っているよ
おかしいじゃないか!
こういう形式なら、俺の記録も測定してくれなきゃ不公平だ!
どうか、落ち着いてください!
俺は前の日から徹夜して並んだんだぞ!
たしかにズサンな運営だわ
運営て……
こんな方式で決まったんじゃ、ちっとも勇者らしくないわね
まったくだね
でも、それが史実であるなら、
しょうがないよ
……
あら?
いよいよ勇者様の番ね!
確定かよ!
後編に続く……。