ワカヒコの派遣から、いつの間にか8年もの月日が流れていた。
日々の業務に追われ、慌ただしくしていたアマテラスだったが、この日はやっと時間ができたので、部屋の片付けに精を出していた。
ワカヒコの派遣から、いつの間にか8年もの月日が流れていた。
日々の業務に追われ、慌ただしくしていたアマテラスだったが、この日はやっと時間ができたので、部屋の片付けに精を出していた。
あぁ~~!!やっと片付いた!!もぅ、書類が多すぎるのよ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ん、あれ?これ何だろ??古ぼけた企画書 ・ ・ ・
アマテラスはとっても嫌な予感がした。
なんか、すんごく大事なことを忘れている気がする。
葦原の中つ国統一計画
〜国つ神から天つ神へ〜
えっと。なになに?葦原の中つ国を国つ神の支配から解放するため ・ ・ ・ その後、アメノワカヒコを派遣 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ワカヒコ?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
あっ ・ ・ ・ あ"ーーーーー!!!!!!
忘れてたぁぁぁ!!!!!
ちょっとぉぉぉ!!オモヒカネ!!
おもひかねぇぇぇ!!!
サイレンのような叫び声にオモヒカネは慌てて部屋に飛び込んできた。
は、はい!!お呼びですか??
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ って、あれ??アマテラス、お部屋、片付けたんですか???
・ ・ ・ ・ ・ ・ 汚ったなかったですもんね。
アマテラスが頬をぷっくり膨らます。
まずい、口が滑った。不機嫌にさせたら後が面倒だ。
書類が多いのがいけないのよ!!
ゴメンナサイ。
ところで、この企画書。何かわかる??
え?葦原の中つ国 統一計画?
・ ・ ・ ・ ・ ・ あ ・ ・ ・ ワカヒコ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 忘れてた ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
あれから8年も経つのに連絡が一切無いって、どうゆうこと??
ねぇ、おかしくない??絶対に何かあったのよ!!
えぇ、まぁ ・ ・ ・
8年間忘れていた我々にも問題がある気がするんだけど ・ ・ ・
何よ??何か言いたそうな顔ね?
いえ ・ ・ ・ ただ、もう2人も遣わせたのに帰って来ないんですから、また人を送っても同じ結果にならないかと。
じゃぁ『人』以外の何を送ればいいって言うのよ??
・ ・ ・ キジの鳴女を遣わせ事情を聞いてみては?
鳴女(ナキメ)は、人の言葉が理解できるでっかいキジだ。
なるほど・・・確かに、鳴女だったら鳥だし、さーっと行って帰って来れるわね。わかったわ。鳴女に行かせましょう。
アマテラスは早速、出雲に鳴女を向かわせた。
一方その頃、出雲ではシタテルヒメが庭で洗濯物を干していた。
すると高天原の方角から大きなキジが飛んでくるのが見えた。キジはそのままこちらに向かってきて、家の前の桂の木の枝に止まり鳴き始める。
ワカヒコー。ナゼニ8年モ連絡ナイワケー?
国ツ神、暴レル、危ナイカラ服従サセナキャー。
ネェー。ワカヒコー!!聞ィテンノー??
端から見ればコミカルな鳴き声だが、シタテルヒメはその声にサァっと血の気が引いた。
あの鳥 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 高天原からワカヒコの様子を見に来たんだ!!
彼女は慌てて夫の部屋に駆け込んだ。
ねぇ、ワカヒコ!あそこ、見て!外に邪悪な鳥がいるっ!!
彼女は顔面蒼白だ。ただ事では無いと感じ、ワカヒコも慌てて表に出る。
・ ・ ・ ・ ・ ・ 随分でっかいキジだな。
嫌な声で鳴いてるの。災いを運んで来たんだ ・ ・ ・ 早く射殺してっっ!!
何でそんなに怯えてるんだよ。大丈夫だから ・ ・ ・ ・ ・ ・
ワカヒコは、彼女を落ち着かせると、高天原から旅立つ時にアマテラスか持たされた弓矢を手に取り表に出た。
これだけデカければ狙いやすい。
ワカヒコは鳴女に狙いを定め矢を放った。矢は見事に命中し、鳴女の胸を貫通させると、そのまま勢い衰えず高天原まで飛んで行ってしまった。
その頃、アマテラスは高木と、高木の息子のオモヒカネと娘の千々姫(チヂヒメ)と一緒に、天安川の河原でランチを楽しんでいた。千々姫お手製のおにぎりがとっても美味しい。
千々姫は高木家の末っ子で、高木からもオモヒカネからも、とっても溺愛されていた。
たくさん作ったのー!いっぱい食べてねっ♪♪
・ ・ ・ ・ ・ ・
千々のにぎったおにぎり ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
オモヒカネのシスコンっぷりが絶妙に気持ち悪い。
そんなユルイ空気の中、突然地面の雲に穴が開き、4人の目の前に矢が落ちてきた。
キャッ!!びっくりした!!なにこれ??
この矢 ・ ・ ・ 私がワカヒコにあげた天波波矢??
・ ・ ・ ・ 血がついてますね ・ ・ ・ ・ ・ ・
父上 ・ ・ ・ これって ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 鳴女が射たれたってことですか?
・ ・ ・ ・ ・ ・
高木は神妙な面持ちで押し黙った。
・ ・ ・ ・ 今の段階では何とも言えません。しかし、もしワカヒコが高天原を裏切って鳴女を射ったなら大きな問題です。
でも、そんなのわからないじゃない・ ・ ・ ・
誓約をすればわかります。
アマテラスは、不安そうに高木の顔をのぞき込んだ。いつもふんわり笑っている高木の真剣な顔を見ると、その不安が一層深まる。
高木は弓を持ち出し、先ほどできた穴に向けてゆっくりと矢を引いた。
もし、この矢が、ワカヒコが命令通り悪い神を射るため放った矢ならば、どこにも当たらないように。
もし、ワカヒコが裏切り邪心を持って打った矢ならば、ワカヒコの胸を射るように。
そう唱えると、元の方向に矢を射返した。
アマテラスたちは矢が放たれた先をずっと見つめた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ じきにわかります。今は待ちましょう。
うん ・ ・ ・
そして、その日の夕方。
悲痛な声で泣く女性の声が風に乗って高天原まで届いた。アマテラスが何事かと慌てて表に出ると、高木神が泣き声のする方向を見つめていた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 出雲の方からです。
それは、ワカヒコの妻、シタテルヒメの泣く声だった。
ワカヒコ ・ ・ ・ 死んじゃったんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そのようですね。
高木神はどこか冷たく答えた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そっか ・ ・ ・ ・ ・ ・ そりゃ、戻ってこないわけよね。こんなに悲しんでくれる人がいたんだもん。
アマテラス。残念ですけど、帰って来ないのと高天原を裏切るのは別の話です。
うん ・ ・ ・ ・ ・ ・
誓約を疑うわけじゃないけど ・ ・ ・ ・ ・ ・ 結果が出ても信じたくない時もあるんですね。
うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
あ。私、ワカヒコの家族に伝えに行かなくちゃ。タカギは、休んで。疲れてるでしょ??
いえ、お気遣いなく。 ・ ・ ・ それに今日はまだ働きたいや。
そっか ・ ・ ・ ・ ・ ・
アマテラスは何と声をかければ良いのか分からなかったので、高木神の頭をポンポン撫でてみた。高木神はいつもみたいににっこり笑ってくれた。
このことから、『還り矢は当たる』『キジの使いは行きっぱなし』ということわざが生まれた。
ワカヒコの家族はこの訃報を知ると、すぐに出雲へ降り立ち、彼の死を悲しんだ。
出雲ではシタテルヒメが、高天原の家族を心から感謝して迎えてくれた。
しかし彼女は、自分の夫が殺された理由が未だに分からないでいた。確かに高天原の命令は守らなかったが、それだけで殺されるなんて酷すぎる。
すると、アマテラスから事情を聞いていたワカヒコの父親が事の次第を説明してくれた。言葉にならず、彼女の目からはまた涙が溢れ出る。
だって、彼が高天原を裏切る理由なんて、自分と子供達のため以外に何も無いのだ。彼女は項垂れ、しばらく立つことも出来なかった。
家族は葬儀用の小屋を建てると、高天原から連れてきた鳥たちに手伝いを頼んだ。カリには死者へ捧げる食べ物を持たせ、サギにはハタキで掃除をさせ、カワセミには調理させ、スズメにはうすをつかせ、キジには大声で泣いてもらった。
ワカヒコの葬儀では、天つ神も国つ神も共に涙を流し、八日八夜にわたり歌舞して彼を弔った。
しかしその葬儀の最終日、シタテルヒメの兄の高彦根(タカヒコネ)が弔いに来ると、その場は凍りつく。
高彦根が家族が見てもワカヒコにそっくりだったのだ。高彦根をワカヒコと勘違いした家族は彼に駆け寄って、生きてたのかと泣いて喜んだ。
でも、それは別人だ。死人に間違われるなんて縁起でもない。
高彦根は『親友だと思ってたから来たのに、ふざけやがって!!』と怒鳴り、十握剣で葬儀小屋を切り倒し、足で思いっきり蹴ると、その場から立ち去ってしまった。
その蹴られた小屋は、後日、出雲から遠く離れた美濃で発見されたらしい。
こうしてワカヒコの死は天つ神にとっても国つ神にとっても後味の悪い事件となってしまった。
ワカヒコさん・・・(-人-)ナムナム
僕の中ではワカヒコさんとタカヒコさんは薔薇の香りが漂うほどの大親友で、そんなワカヒコさんの葬儀の席で取り乱す親族達にブチ切れたってイメージです
きっとタカヒコさんも余裕無いくらいに悲しんでたんだと思う
タカヒコさんのビジュアルも見たかったなぁ
美男子のワカヒコさんに瓜二つだけど、胸まである立派な髭を蓄えた(出雲国風土記より)少し逞しいイメージだなぁ
ジュニアさま
コメントありがとうございます!
ぜひぜひ本物の古事記もよろしくお願いします(*´▽`人)
本物はこのへんがごちゃごちゃして読みづらくて、けっこう変えちゃってるので(笑)
ナムルさま
いいですね大親友♡
ここらへんワカヒコと下照姫が悪者っぽく書かれちゃってる古事記が多いので、2人のこと嫌いになって欲しくないと思い、どんどん妄想が追加されちゃいました(笑)
私的には、タカヒコはワカヒコの色違いです。格ゲーで同じキャラ選んじゃった時の感じ(*´ω`*)