私たち魔法使いは、人間の夫婦の間にある日突然生まれるの。

知ってる？　シグレさん

知ってるわ

……私は、百年以上前に、田舎にすんでいるお母さんとお父さんの間に生まれた。

二人はすぐに、私を魔法使いの家に送った。

魔法使いの家っていうのは

魔法使いを育てる施設ね。魔法使いしかいない。

どこにあるのかも私は知らないわ……魔法で隠されているから。

ほぼ伝説みたいなものだけど、でも、やっぱりあるのね

あるよ。私はそこで育ったの。

そこの人はね、あなたの精神は成長しないって言ってた。

ずっと子どものまま。

珍しいかなって聞いたら、数は少ないけれど、そんなのなんでもない、私は私だって教えてくれた。

でも、数が少ないと、生きにくいって言っていた。

魔法使いは、ただでさえ数が少ないのに、精神が子どものままのあなたは、大変だって、先生は私を抱き締めてくれたの

……そう

二十才になって、私は魔法使いの家を出たの。

私は、魔法でみんなを幸せにしてあげたいんだって思ったんだ。

難しいって、みんな言っていた。

この世界の人間は、魔法を武器だと思っているし、魔法を洗脳の道具だと思っている。

それはすごく昔の歴史が作り出した、大きな力なんだって。

だから、今では、魔法使いは自分の力を使わないか、使って怖がらせるかの、どっちかだよ

でも、そんなの、寂しいよね。

私は、助けてあげたいと思った。旅に出たの。

そして、何回かは成功して、何回かは失敗した。

さっき、シグレがいったイメージは、失敗したときの話だね

魔法は万能じゃないんだよ。

大きな台風を、私は止めることができなかった。

みんなの食べ物だって、作ることはできなかった。

私のできることはしたけれど、みんな言ったよ、魔法は万能じゃないのか、出ていけ、いなくなれ！　

……だから、そんな噂が、残っちゃったんだ。

私は、悪いこと、なにもしていないのに

頑張っても頑張っても、私は期待される。

私は失敗ばかりに目を向けられる。私は諦めた。

夢とばいばいして、一人で生きたかった。

でも、あちこちに行っちゃったからだね、見つかっては、みんながいろいろ言うんだ。

助けて、とか、来るな、とか

どうすればいいんだってなって、困ってたの。

お腹もすくし。眠る場所もほしい。

歓迎される場所でも、結局なんでもはできないってわかると、もう、嫌いってなるでしょ。

だから、私は考えたの。ある町とか、村とか、ターゲットを決めてね、私のダミーをたくさん置く。

それをみたみんなが混乱している間に、私はこっそりと眠る場所をさがして、食料も手にいれて

そうやって生き延びていた。

若くなったら人間になろうかなとも思ったけど、それは若くなってから考えようって。

とりあえずは、毎日を生きる、生きてやるって決めた。

悔しかったけど、苦しかったけど、私は、生きるのをやめなかった

生きててよかった。

私は、お母さんとお父さんに出会ったの