遺跡に到着した僕たちは、
第4の試練の洞窟がある国へ
繋がっているという
ゲートの前にやってきていた。
そこは隠し階段を降りた場所。
空気は淀んでいて、
あちこちに砂埃が溜まっている。
つまり最近は
誰も立ち入っていないということだろう。
遺跡に到着した僕たちは、
第4の試練の洞窟がある国へ
繋がっているという
ゲートの前にやってきていた。
そこは隠し階段を降りた場所。
空気は淀んでいて、
あちこちに砂埃が溜まっている。
つまり最近は
誰も立ち入っていないということだろう。
よし、みんなゲートに入ったな?
起動させる魔法を使うぞ~☆
僕たちが頷くと、
タックはゲートを動かす魔法を唱えた。
するとフェイ島にあったゲートと同じように
床には魔方陣が浮かび上がり、
徐々に周りが眩い光で満ちていく。
その光が収まると、
目の前に広がっていたのは青い空と雲の海。
ゲートの外に出てみると、
地面は草の鮮やかな緑色に包まれている。
出口側のゲートがあるのは
どこかの丘の上のようで、
遠くの下の方は雲に隠れて見えない。
空気がひんやりして、
すごく澄んでる。
標高が高いのかな?
かもしれんな。
雲が下にあるということは、
それなりに高い場所なのだろう。
なんか息苦しくありませんか?
そっか、
ビセットさんは標高がほぼゼロの
海面に近い場所で
暮らしていたから、
空気の薄さに
慣れていないんですね。
ビセット様は
しばらく激しい動きをしない方が
良いかもしれません。
僕は山育ちだから、
これくらいなら問題ないけど。
シーラも大丈夫だよね?
はい、私も山育ちなので平気です。
タックとミューリエは?
オイラはこれくらいなら問題ない。
私も高い場所には慣れている。
うう……
苦しいのは私だけですか……。
ねぇ、タック。
ここはどこなの?
へへへ、聞いたら驚くぞ~♪
――ここはルナトピアよ。
不意に後ろから誰かが言い放った。
慌てて振り向いてみたものの、
周りには誰もいない。
こっちよ、こっち。
上の方から声がしたので見上げてみると、
木の枝に僕より少し年上くらいの
女の子が座っていた。
背中には白くて綺麗な翼がある。
――つまり彼女は翼人族ということか。
あなた、勇者様よね?
それと審判者が2人と
その他が2人。
ん? お前も審判者だな?
そうよ。私はエレノア。
ルナトピアにある試練の洞窟の
審判者をしているわ。
ゲートが起動したのを
察知したから、
急いで様子を見に来たのよ。
僕は勇者見習いのアレスです。
それと一緒にいるのは――
僕はエレノアさんにみんなのことを紹介した。
ただ、彼女は抑揚のない相槌を打つだけで、
あまり興味なさそうだったけど……。
エレノアさん、
ここはルナトピアって
いうんですね?
えぇ、そうよ。
空中都市ルナトピア。
空中都市っ?
それはどういう意味です?
山の上の方にあるという
ことですか?
いいえ、まさにルナトピア全体が
空中に浮いているのよ。
空に浮かんでいる
都市だなんてっ!?
ルナトピアの何か所かに
都市を浮遊させるための魔法玉が
埋め込まれているんだ。
遙かな昔、私たち翼人族は
様々な種族から
迫害を受けていたの。
その時代に安住の地として
作ったのが
このルナトピアってわけ。
なるほど、空を飛べなければ
ここには辿り着けないですしね。
ただ、地上との行き来を
完全に閉ざすと
万が一の時に困ってしまうから、
のちの世にゲートが
設置されたけどね。
それじゃ、
試練の洞窟へ案内するわ。
僕たちはエレノアさんの案内で、
第4の試練の洞窟へ向かうことになった。
途中には翼人族の町があり、
出会った人の全てから注目を浴びてしまう。
翼のない種族がここへやってくるのは
相当珍しいらしい。
やがて町を抜けると、
その先にあったのは広大な草原。
そこの小径を進み、
空中都市の末端へと到達する。
エレノアさん、
端っこまで
来ちゃったみたいですけど?
それでいいのよ。
試練の洞窟は
少し離れた位置に浮かぶ、
あそこの小さな島にあるんだから。
エレノアさんが指差した先には、
ルナトピアから独立した
小さな島が浮かんでいた。
地上部分にはほこらも見えている。
――あそこが洞窟への入口ってことかな?
エレノアさん、
あの島にはどうやって
行くんですか?
答えられないわ。
それを考えるのも
試練のうちだから。
ただ、仲間と相談するのはOKよ。
タック殿は第4の試練の洞窟に
行ったことがあるんですよね?
その時はどうしたのですか?
オイラは当時の審判者に
運んでもらった。
ロフトっていうおっちゃんだ。
それは私の祖父ね、きっと。
あの、それならエレノア様に
運んでいただくというのは
可能ですか?
それは可能よ。
でもそれだと運べるのは
1人が限界。
つまりアレス様だけが
試練の洞窟に
挑むことになるけどね。
ということは、
今度の試練は仲間の力を借りても
いいんですね?
えっとぉ……
禁止されてはいないわね……。
エレノアさんは歯切れが悪い感じだった。
もしかしたら、
それって試練にかかわることなのかも
しれない。
――うーん、どうすればいいんだろう?
考え込んでいると、
ビセットさんが僕の服を軽く引っ張ってくる。
ニタニタしているけど、
何か思いついたのかな?
アレス様、
大事なことをお忘れですよっ♪
大事なこと?
勇者の冠です。
あの冠には水を操る力があります。
つまりあの力を使えば
雲の上を歩くことが可能に
なるんですよ。
なるほど、その手があったか!
えっ? どうして水を操る力が
雲と関係するんですか?
雲というのは
水の粒でできているのです。
ただし粒は小さすぎて、
肉眼では見えませんけどね。
そうだったんですかっ!?
へぇー、
曇って水の粒でできていたのかぁ。
でも冠の力を解放しても、
全員に効果を与えるのは
無理でしょう。
アレス様自身を含め、
せいぜい2人ぐらいでしょうね。
……いや、
ウェンディのばっちゃんに
もらった指輪があっただろ?
あれを使えばもう1人くらいは
可能なんじゃないか?
そっか!
あの指輪って任意の力を
増幅させられるんだもんね!
だとすると、2人か……。
おっと、オイラはパスだ。
試練の内容を知っているからな。
私も審判者ですので、
今回は対象から外してください。
では、アレスに同行するのは
私とシーラですんなり確定だな。
そうなりますね。
じゃ、タックとビセットさんは
ルナトピアで待っててもらえる?
承知っ!
ぜひ試練を
乗り越えてきてください。
こうして僕はミューリエ、シーラとともに
第4の試練の洞窟へ向かうことになった。
まずはウェンディさんにもらった
指輪を身につけ、
冠に意識を集中させる。
すると冠の宝珠から放たれた蒼い光が
僕とミューリエ、シーラの体を包み込んだ。
これで雲の上を
歩けるようになったはずだけど……。
もしうまくいってなかったら
地上まで転落して命は助からないだろう。
――ちょっと緊張するなぁ。
ゴクリ……。
ほぉ、
意外に感触はしっかりしているな。
もっと柔らかいのかと
思っていましたけど、
すごく硬いんですね。
うわっ! 2人とも、
もう雲の上に
乗っちゃってるのっ!?
そうだが?
さっさと行くぞ、アレス。
アレス様、大丈夫ですよ。
安心してください。
う、うん……。
先を越されて悔しいというか、
肩すかしを食ったというか。
いずれにしても、2人とも度胸があるなぁ。
あるいは落下する可能性を
考えていなかったのかな?
なんか僕だけ緊張して、
損したような気がする……。
よし、僕も行くぞ。
気を取り直し、雲の上に足を乗せてみた。
すると海岸の岩場のような
ゴツゴツとした感触がして、
少し歩きにくい。
しかも刻一刻と雲の形が変化していくし……。
僕は転ばないように注意しながら、
試練の洞窟へ向かって
雲の上を歩いていくのだった。
次回へ続く!