望月 希

……。

望月 希

……。

望月 希

……。

 夜の学校を、ただ歩く。

 望月はぼんやりとした意識で彷徨っていた。

 いつもと変わらない夢。

 いつもと変わらない夢だった。

 ……ここまでは。

望月 希

あれ……?
ここは?

 次第に意識がハッキリとしてくる。

 まるで、現実のことのような感覚。

 普段の夢とは違い、自分の意思で動くことができた。

???

やっと来てくれたね。

望月 希

え?

 不意に、背後から声をかけられた。

 いつからそこに居たのか。背後には、望月と同い年ぐらいの少女が立っている。

 望月はその少女を知っているような気がしたが、
 名前は出てこなかった。
 過去に通った学校で、見たことがあるのかもしれない。

望月 希

あの、あなたは?

???

……。

???

私のことなんてどうだっていいの。
それよりも。

???

……ようこそ。――私のセカイへ。

望月 希

あなたの?
ここは私の夢じゃないの?

???

そうだよ。
ここはあなたの夢の中。

望月 希

私の夢なら、あなたは誰なの?

???

私のことなんて、
どうだっていいって言ったでしょ?
私が貴方に教えられることは2つだけ。

???

まず1つ目。
貴方はもう、このセカイからは出られない。
昨日までと違って、
意識がハッキリしてるでしょ?
完全にこっちのセカイへ来たって証拠だよ。

望月 希

出られないって、これは私の夢なんでしょ?
セカイって何のことよ。

???

その質問に答える必要はないかな。
答えたって、意味のないことだから。

???

2つ目。
このセカイには、危険がいっぱい。
全部、貴方の為に用意したの。
……死なないように、頑張ってね。

望月 希

死ぬって何?
さっきから何を言っているの?

 望月の語調が、少し荒くなる。

 ただでさえ、奇妙な夢のせいでストレスが溜まっていたところに、この話。
 気分を悪くするのも仕方がないことだった。

???

勝手な話だけど、我慢して。
どちらに転ぶにせよ、
すぐに終わることだから……。

???

それじゃあ、死なないでね。

 それだけ言い残すと少女は霧のように消えてしまった。

望月 希

消えた……。

望月 希

何なのよ、あの子。

 望月は、誰とも無しに呟いた。

 少女の口ぶりから、この夢の原因が少女にあることはわかった。しかし、肝心な事は何も聞き出せていない。結果として、少女との会話は謎が増えただけだった。

望月 希

死ぬってどういうことだろう。

 少女の言葉で、1つ気になっていることがある。

"死なないよう、頑張ってね"

 ここには死ぬような危険があるということだろうか?

 突拍子のない話ではあるが、このセカイの異様な雰囲気が、本当のことのように思わせる。

 少し、用心した方がいいかもしれない。

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