夜の学校を、ただ歩く。
望月はぼんやりとした意識で彷徨っていた。
いつもと変わらない夢。
いつもと変わらない夢だった。
……ここまでは。
……。
……。
……。
夜の学校を、ただ歩く。
望月はぼんやりとした意識で彷徨っていた。
いつもと変わらない夢。
いつもと変わらない夢だった。
……ここまでは。
あれ……?
ここは?
次第に意識がハッキリとしてくる。
まるで、現実のことのような感覚。
普段の夢とは違い、自分の意思で動くことができた。
やっと来てくれたね。
え?
不意に、背後から声をかけられた。
いつからそこに居たのか。背後には、望月と同い年ぐらいの少女が立っている。
望月はその少女を知っているような気がしたが、
名前は出てこなかった。
過去に通った学校で、見たことがあるのかもしれない。
あの、あなたは?
……。
私のことなんてどうだっていいの。
それよりも。
……ようこそ。――私のセカイへ。
あなたの?
ここは私の夢じゃないの?
そうだよ。
ここはあなたの夢の中。
私の夢なら、あなたは誰なの?
私のことなんて、
どうだっていいって言ったでしょ?
私が貴方に教えられることは2つだけ。
まず1つ目。
貴方はもう、このセカイからは出られない。
昨日までと違って、
意識がハッキリしてるでしょ?
完全にこっちのセカイへ来たって証拠だよ。
出られないって、これは私の夢なんでしょ?
セカイって何のことよ。
その質問に答える必要はないかな。
答えたって、意味のないことだから。
2つ目。
このセカイには、危険がいっぱい。
全部、貴方の為に用意したの。
……死なないように、頑張ってね。
死ぬって何?
さっきから何を言っているの?
望月の語調が、少し荒くなる。
ただでさえ、奇妙な夢のせいでストレスが溜まっていたところに、この話。
気分を悪くするのも仕方がないことだった。
勝手な話だけど、我慢して。
どちらに転ぶにせよ、
すぐに終わることだから……。
それじゃあ、死なないでね。
それだけ言い残すと少女は霧のように消えてしまった。
消えた……。
何なのよ、あの子。
望月は、誰とも無しに呟いた。
少女の口ぶりから、この夢の原因が少女にあることはわかった。しかし、肝心な事は何も聞き出せていない。結果として、少女との会話は謎が増えただけだった。
死ぬってどういうことだろう。
少女の言葉で、1つ気になっていることがある。
"死なないよう、頑張ってね"
ここには死ぬような危険があるということだろうか?
突拍子のない話ではあるが、このセカイの異様な雰囲気が、本当のことのように思わせる。
少し、用心した方がいいかもしれない。