???

変な夢?

???

うん……。
最近、変な夢ばかり見てて。

 お昼休み。

 浮かれる学生達を尻目に、沈んだ顔の少女が居た。

 名前は望月 希。

 恋人の笠原 裕樹に、悩みを打ち明けている最中だった。

笠原 裕樹

それで、具体的にはどんな夢なんだ?

望月 希

んっと、中学校、覚えてる?
私たちが通ってた。

笠原 裕樹

ああ。

笠原 裕樹

いや、忘れてるわけないだろ。
まだ卒業してから5年も経ってないんだぞ。

望月 希

うん、まぁ。

望月 希

中学校の夢なんだけどね。
誰も居ない中学校をただ歩く夢。
そんな夢ばかり見るの。

笠原 裕樹

……ん? それだけか?

望月 希

そうだけど。

笠原 裕樹

なんだそりゃ。
別に普通の夢じゃないか?
学校の夢なら、俺だって何度も見てるぞ。

望月 希

でも、
近頃は毎日この夢ばかり見てるんだよ?
流石に変じゃない?

笠原 裕樹

毎日?
……ふーん。そりゃ確かに変だな。
歩き回ってるってことは、
何か探してるのか?

望月 希

うーん。そんな感じはしないかなぁ。
目的があるわけじゃなくて、
本当にただぼんやりしてるだけ。

笠原 裕樹

それじゃあ何もわかんねーな。
最近中学絡みで何かあったか?

望月 希

んーん。何も。

 2人が頭を抱えているところに、笑顔の少女が割り込んできた。

???

どしたの希。
元気ないじゃん。

望月 希

あぁ、さゆりちゃん……。

 日高 さゆり。

 望月の親友で、彼女も同じ中学の出身だ。

笠原 裕樹

おっす日高。
……そういえばお前、
俺達と同じ中学だったよな。

日高 さゆり

うん。
そーだよ。

日高 さゆり

って何それ。
ひどくない?

笠原 裕樹

いや、別に変な意味じゃねーよ。
日高。最近あの中学絡みで、
何か変わったことは起きなかったか?

日高 さゆり

んー?
別に何も無いけど、どうして?

 2人は日高に、夢の話を伝えた。

日高 さゆり

ふむふむ、中学の夢ねぇ。

日高 さゆり

よっぽどあの中学が恋しいのね。

笠原 裕樹

なんだよそのコメント。

日高 さゆり

実際そうでしょ?
希が安定して学校に通えるようになったのは中学からだったんだし、それだけ思い出深い場所になっててもおかしくないと思うけど。

望月 希

ん。
それは確かにそうかも。

笠原 裕樹

それでも、
毎晩同じ夢を見るのはおかしくないか?
突然夢を見始めた理由は?

日高 さゆり

そこまではわかんないよー。

日高 さゆり

ま、細かいコト気にしてたって仕方ないよ。
元気出していこう。元気!

望月 希

あ、あはは……。

笠原 裕樹

脳天気だなぁ、お前は。
一応悩んでんだぞ?

日高 さゆり

悪いことばかり考えるからいけないの。
いいじゃん、中学。楽しかったでしょ?

望月 希

うん。
それは勿論。

日高 さゆり

ならいいじゃない。
夢の中学も楽しいって考えればさ。

日高 さゆり

はぁー。
私も夢でいいからあの頃に帰りたいわ……。

笠原 裕樹

早速悪いこと考えてんじゃねーか。
ていうかお前、中学に戻りたいのか?

日高 さゆり

あの頃は何も考えずに、皆ではしゃぎまわっていられたからねぇ。
今はやれ進学だの、やれ就職だので忙しいったらありゃしないわ。

笠原 裕樹

それは一理あるな。

望月 希

確かに、今はちょっと大変かもね。
それに比べたら、
確かにあの頃ははしゃぎ過ぎかも。

笠原 裕樹

先導してたのはいつも日高だったよな。
場所も道具も問わずに、次々遊びを考えるお前の才能は確かに凄かったよ。

日高 さゆり

ふっふ。
学校にあるものは雑草から校長の像まで私のオモチャよ。

望月 希

誇張じゃないところがまた。

笠原 裕樹

銅像の話はもうやめろよ。
お前の落書きのせいで、
俺達も巻き添え食らっちまって……。
思い出すのも嫌になるな。

望月 希

結局消しきれなかったんだよね。あれ。

日高 さゆり

まあまあ。終わったことは、ね?

日高 さゆり

あっ、夢に出てくる像にもさ、
私の落書き残ってるかな?

望月 希

えっ?
うーん、どうだったかなぁ。
……あ。

望月 希

そういえば、無くなってたよ、あの銅像。

日高 さゆり

え、像そのものが?

望月 希

うん。
銅像のあった場所は確かに通ったはずだけど、それらしいものは無かったかなぁ。

笠原 裕樹

あれだけ印象に残りそうなものが夢に登場しないってのは、ちょっと気になるな。

日高 さゆり

年季入ってて、迫力あったもんね。あの像。
夢に出てきたら確実にホラーだよ。
むしろ出てこなくて良かったんじゃない?

日高 さゆり

あっ……。
落書きした日、校長の像に連れて行かれる夢見たの思い出しちゃった……。
ぶるぶるっ。

笠原 裕樹

ははは!
お前それ、悪い子を校長の像がさらいに来るっていう、あの話か?
七不思議なんてデタラメばかりだと思ってたが、たまには当たりがあるもんだな!

望月 希

あれ?
そんな話だったっけ?

笠原 裕樹

ん? 七不思議のことか?

望月 希

うん。
私の知ってる話と違うなーと思って。

日高 さゆり

私が知ってる話は笠原と同じ。
悪い子は校長の像に連れて行かれるぞーって内容だったよ。
希はどんな内容だと思ってたの?

望月 希

私が聞いたのは、校長が新しい肉体を求めて、夜な夜な人をさらいに来るって言う話……なんだけど……。

日高 さゆり

何よそれ。
黒魔術か何か?

笠原 裕樹

……話の内容はさておき。
七不思議なんて元々いい加減なものだしな。
派生があったって別におかしくないか。

笠原 裕樹

おっと、昼休みも終わりか。
話が大分逸れたが、
夢については判断材料が少なすぎる。
また何か変化があったら教えてくれよ。

望月 希

うん。
わかった。

日高 さゆり

あ、そうだ!
中学に行ってみたらさ、
何かわかるんじゃない?

笠原 裕樹

お前、何言って……。

笠原 裕樹

いや、無いとも言い切れないな……。

日高 さゆり

でしょ? 決まり!
次の休みにでも、3人で行ってみよう!

望月 希

また急な……。

"次の休みにでも、3人で行ってみよう!"

 しかし、この約束が果たされる日は、ついに来なかった……。

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