彼女はそう、わたしたちに説明を始める。
細かい文句などは後で纏めて聞くというのでわたしも黙る。
このゲームのルールを、滔々と志田さんは語りだす。
私はみなさん最初に合ってると思いますが、GMの代理に司会進行を承っている志田奈々と言います
一応、1プレイヤーとしても参加しているので、よろしくお願いします
彼女はそう、わたしたちに説明を始める。
細かい文句などは後で纏めて聞くというのでわたしも黙る。
このゲームのルールを、滔々と志田さんは語りだす。
まず今回のゲームは人狼ゲームと呼ばれるゲームであるらしい。
人狼ゲームとは多人数で人狼を見つけ出す推理ゲームだ。
人狼は村人を殺し、村人は人狼を見つけ出して追放すると勝利、という感じだ。
他にも占い師と狩人が一人ずついるという。
占い師は判別に、狩人は狼襲撃から身を守ってくれるという。
基本ルールはこんなところだ。
もう砕けた感じでいいよね
簡単に言うと、人狼を見つけ出してぶっ殺すか村人全滅
その時点でゲーム終了
生きている人全員に願いを叶える権利が発生するんだよ
問題はこのゲームが願いを叶えるゲームだということ。
勝てば何でも願いは叶うと志田さんは豪語する。
何だっていいんだよ
沢山のお金だったり、世界征服だったり、世の中の崩壊だったり、世界一の権を持つとか、死んだ人間を黄泉帰りさせたりとか
何だって叶う、この場所はそういう場所なの
なんでも叶う、か。
普通は最後まで生き残っていた一人だけ、というのが定石な気がする。
その席を求めて全員でゲームをするのではないのか?
ンなこと言ってる余裕がないのがこのゲームなの
今から重要なこと言うよ、いい?
彼女はわたしの顔色を読んでそういい、びしりとほかの人に指を突きつけて言った。
このゲームは本物の人殺しをするゲーム
人狼になった人は毎晩、自分で人を殺していかないといけない
村人になった人は、追放する人を自分で殺さないといけない
そうして最後まで血塗れになったでも、願いを叶える覚悟が必要なの
……やっぱりか。
願いを叶えるなんてものが、殺し合いとか物騒なもの以外有り得ない。
わたしも何となく察しがついていた。
隣で青ざめるひよりは別として、他の人も……うん、見た感じ変わった様子はない。
一部、子供がボケっとしてるけどアレは……何でこの場にいるんだろうか?
あとねーこれも違うんだけどね
このアクティブでは、村人も人を殺せるんだよ
アクティブタイムって言ってね、夜の九時から朝の六時まで人殺しが可能になる時間があるんだ
狼が動ける唯一の時間でもあるの
武器はこっちでランダムに用意して、各個室に置いてあるから参考にしてね
何ですって!?
それを聞いて、大声を出した速水さん。
そのまま、なんのことかわからないことを言い出す。
あの時みたいに狼以外が人を殺せるってこと!?
それでゲームが成り立つとでも思ってるの!?
ん? なんの話?
……ああ、あの時か……
どうやら志田さんには通じたらしい。
後は文月さんが嫌そうな顔をしている。
彼女も分かっているのだろうか?
殆どがわかってない中、志田さんは続ける。
あんときは投票だったけど今回は自分で殺しにいかないとゲーム進まないからね?
昼間は話し合い、夜は殺し合いで判別して
あっ、投票以外で昼間に人殺した場合はきっつーいペナルティ加えるからね
昼間は投票以外のあらゆる暴力行為禁止してるの
あと一晩に狼以外が殺していい人数は一人だけ、これ重要
それ以上殺したやつはペナだかんね
ペナは一回目で役職をばらす、二回目で特殊能力を開示、三回目でルール違反で粛清=死ぬんでよろしく
特殊……能力……?
特殊能力?
このゲームにはそんなのがあるのか?
わたしは黙って聞いていると、彼女は続ける。
そだよー
特殊能力ってのは、わたしたち12名全員に与えられた、このゲームで命運を左右する、非常に重要なファクターなの
役職とは別の大切なもの、かな
殺し合いに主に使うものだよ
夜は、手持ちの武器で殺すか能力で殺すか、どっちかなんだよ
手元にある端末に、自分の特殊能力が表示されているからそこ見てほしいな
彼女はそう言って、特殊能力一覧を開示した。
「心眼」、「盗聴」、「内緒話」、「要塞化」、「支配者」、「擬死」、「透視」、「反転」、「共有」、「強奪」、「無効化」、「反魂」。
以上だと彼女は言った。効力までは教えないので、各自推理して考えろという。
特殊能力……ね
成程、殺し合いに使う力か……
名前からしてやばそうなのがいくつかあるな
警戒しておかないと
情報戦に有利なものと直接の攻撃的なものは警戒しておくべきね
でも……『共振』というのはなに?
能力を同じにするコピースキル?
曖昧すぎて……絞りきれない……
す、既になんだかわからねぇ……
なんだ、それぞれスゲー能力があるのか?
……………………あっ
ぼーっとしてて話聞いてなかった……
うぅ……眠たい……
後であの子に聞かなきゃ……
教えてくれるかな……
また拒否されないかなぁ……
あの志田って人……
まさか、そんなはずないし……
この目で見たんだから……
あっ……!
それぞれが名前から色々考え始める中、志田さんはどんどん話を進める。
ルール上、反撃して相手を殺してもそれはオッケー
昼間の投票時に投票されたやつが相手を殺した場合は死んだ奴が追放されたって扱いになるわ
夜に怪しい奴を殺して、それが狼だった場合はそれでゲーム終了
狼は気を付けてね、血に飢えた村人が大勢徘徊する村にきているってことを忘れないように
反撃で殺してもいいなら、これはこれでかなり難しい問題になるだろう。
迂闊に狼は外に出られない。村人は片っ端から殺しに行くとペナルティの餌食になる。
それと速水
そのポケットの中身を出して
没収すっから
……これ? ただの鎌よ?
学校で必要だったから持っていただけなんだけど……
さっき静流ちゃんに向けたでしょうが!
子供に刃物を向けるないい年した高校生が!
だから静流ちゃん言うなァ……ッ!
わたしも高校生だって言ってンだろうがァ!
わたしの訴えを無視して、つかつかと近づいて志田さんは速水さんが怪訝そうに持ってきていた先程のポケット鎌を没収した。
各自、持ち込んだ武器の使用禁止!
持ってる人、把握してるからこの机に早く出す!
さっきはまだ始まってなかったから多目に見るけど、持ち込みした物品をここで人に向けるのはルール違反だから
もう一度各自周り、渋々彼らがもっていたり隠していた危険物を回収する。
包丁や大型ナイフ、それにスタンガン。
挙句には金属バットからフライパンまで。
なんで隠し持つのがキッチン用品に偏っているのか不思議だ。
問答無用に全部、持っていかれた。
言い訳は聞かないよ
料理器具ですなんて言おうがこれ武器だから
用意された武器だけ使ってね
万が一まだ隠しもっててそれ使った場合――
私が直々にペナを与えるよ
参加者であると同時に私は代理を兼ねているんだから
厳しい表情で、志田さんは言う。
そして思い出したかのように、わたしたちがしている手錠を見ていった。
あぁ、そうそう
その手錠、あんたら参加者の言動を監視してる高性能マイクロチップ搭載の拘束具だから、外しちゃダメだよ
外したらゲーム放棄ってことで、いちなり死ぬからご注意ね
ゲーム終わるまでここからでられないし、必要なものは私に言えば用意させるから、ワガママも言わないように
ゲーム進行を妨げた場合もゲーム放棄ってことで死ぬんで
更に更にこの館~
凄い超常現象が日夜起きるんで、気を付けてね
夜になると、幽霊も出たりもするから
重要なことをさらりと告げて、最後にからかいを予ていったんだろうが、それが禁句だった。
幽霊っ!?
――ここに、古代魔術研究同好会を設立した、生粋の魔術オタがいるわけでして。
こいつ、オカルト大好きなのである。
幽霊、妖怪、神話、なんでもごされ。
特に怪談話も大好物で、食いつきはどんな時でもいい。
志田さんっ!
詳しく教えてもらってもいいですか!?
そのお話を知る限り洗い浚い全部!
キャラが変わって大興奮で志田さんに詰め寄るひより。
志田さん、目を丸くしてゲームルールをすっ飛ばしてそっちに興味津々のひよりを見上げる。
……幽霊に興味あるの?
はいっ!
あたし、オカルトとか魔術とか怪談とか小さい頃から大好きなんです!
こんなデスゲームなんてどうでもいいです!
あたし関係ないんで勝手にやっててくださいっ!
そんなことより超常現象体験したいですっ!!
ま、まぁ……
生きていれば嫌ってほど見られるから……
好きにしていいんじゃない?
私は何も知らないわよ?
うん、何も知らない、絶対知らない
だから聞いても何もないわ
何か……周りの人が驚いたような目でひよりをみてる。
そんなことよりとかどうでもいいで流したっ!?
あの子、正気!?
現状わかってるの!?
……ありゃ大物だな……
…………ずぅー……
お姉さん……寝てる……
あの、一人ドロップアウトしてるんですけど。
立ったまま、分かりやすい鼻提灯出して寝てる人がいるんですが。
寝てるの?
姉貴? ねぇ、姉貴ってば
……寝落ちしてる……
志田さんはお姉さんの方を揺するが、鼻提灯が膨らんだり縮んだりをくりかえている。
完璧、寝てるよこの人。
はぁ……手間かかるなぁ……
立ちながら寝るなよ、ったく……
ごめんなさい、私は姉を部屋に連れていかないといけないから、お先に失礼するけど
他の人は、自己紹介しておくなりなんなりしてて
今日は夜まで自由時間だから
そう言うと、彼女はお姉さんをお姫様抱っこして持ち上げる。
……まさか、もうこの場から立ち去る気か?
参加者同士、無言で探りあいをしている中、堂々と逃げである退出を選ぶのか?
あぁ、そうそう
全員に言っとくよ
勘違いしないでほしいんだけど
一度振り返り、志田さんは私に告げる。
一段と冷え込んだ……絶対零度の雰囲気を纏う。
でも、表情は穏やかに、笑顔で。
私は、逃げるんじゃない
これは、余裕っていうもんよ
雑魚相手に、本気になるような大人げないのは好きじゃない
数え切れない程勝ちを奪って願いを叶えてる私に挑む、命知らずがこの中にいるんなら、きていいよ
私の願いの邪魔をする奴は……
全員、血祭りにしてあげる
死にたい奴だけ、前に出な
最後にはウインクまでして、彼女は出ていった。
ゲームマスター代理……か。
そんな気はしてたけど、あいつは経験者か。
しかもこの中で多い経験者。
間違いなく厄介だ。最強の敵に違いはない。
あの態度。
わたしたちを見下しているのも間違いないだろう。
舐めているのは、どちらか教えてやろうじゃないか。
腹が立つ。ムカつく。それだけが理由だ。
決めた。わたしは、あいつを狙う。
それで、願いでもなんでも叶えてやる。
わたしはそう、決めた。
あの分かりやすい挑発……
幽霊と問われた時の動揺……
やっぱり……あの子は……