キツネが立ち上がり、ごそごそと段ボール箱から何かを取り出そうとしている。
さ、じゃあ俺らも準備しますか
によによしながら切り替えましたね
おうよ、仕事仕事! これからいく場所は、ある倉庫だ
倉庫?
キツネが立ち上がり、ごそごそと段ボール箱から何かを取り出そうとしている。
ありーないなー、ありー?
一緒に探しましょうか?
んにゃ、たっぶんここらに……ああ! あったあった。
資料は読んだかい? これが青い宝石捕獲用、おわんちゃんだ
おわんちゃん?
包囲マシーンだよ、俺の中の通称はおわんちゃん。
上からすっぽり被せるからね
通称おわんちゃんと勝手に呼ばれている包囲マシーンは、お椀を逆さにしたような形で、真ん中にプロペラがついていた。
そいつを飛ばすんですか?
そそ。今回、まずはこの操作を体験してもらうからね
キツネはほい、とリモコンを渡してくる。
ここのつまみを倒したら前後左右、こっちは上昇と下降。
今から向かう巨大倉庫の中心部にこいつを飛ばして、最後にこの赤いボタンを押せば、包囲完了。
クレーンゲームみたいな感じだから、気楽にやってくんろ
シグレに比べて、キツネのノリの軽いこと。
いいバランスのコンビだなあと思いつつ、俺は包囲マシーンを受けとる。
部屋に鞄、おいといたろ?
あれにおわんちゃんと、必需品ぜんぶ詰め込んで、外で待ち合わせよ。
シグレは、俺が迎えにいっとくから
迎えにいきたいから、の間違いですね
俺も嘘がへっただなー、えっへへへ
部屋に戻り、銃を含めた武器多数を鞄に詰め込み、いざ出陣と外に出る。
急いで準備したつもりだったが、すでに二人は外で待っていた。
黒い車の運転席から、キツネが顔を出す。
いくぞお
晴れ渡るような空の下、俺の鼓動は妙に高鳴っていた。
落ち着きたいがために、本部を見上げる。大きな時計が、俺を見下ろしていた。
ふう、と一呼吸して、視線を二人に戻す。
慣れているであろう二人にさとられないように、平静を装いながら――
顔がこわばってるぞー
緊張しすぎないようにね
……はい
くそお。
隣で爆笑しているサンザシさんを、サイレントモードにできないのが辛いところだった。
車でつれていかれたのは、巨大な箱だった。
崖の上に車を止め、その巨大な箱を上から眺める。
キツネがでかいなあと感動しながら、俺の肩をぽんと叩く。
某大手衣服会社の倉庫だよ。
もちろん中に人が入らないようにしておく手配は整っております。
さ、あの箱の上におわんちゃんを飛ばしてくれ!
あなた、まだそんなバカな名前で呼んでるの?
バカってひどくない?
きゃいきゃいしているお二方を無視し、俺はさっそくおわんさんを飛ばす。
ラジコンの要領で倉庫の真上にそいつを移動させ……。
ほい、スイッチオン!
テンションの高いキツネに促され、赤いスイッチを押す。
おわんさんの側面に穴が空いたかと思うと、そこからものすごい勢いで棒状のものが飛び出した。
何本もの棒は、おわん型のドームを作り、あっという間に倉庫を包んでしまう。
おおー
すごい科学だろ。んじゃ、捕獲といきますか