クアトロフォルマッジ

「４つのチーズ」という意味を持つチーズのみで構成されたピザ。ゴルゴンゾーラ、モッツアレラ、タレッジョ、パルミジャーノ・レジャーノの組み合わせが代表的らしい。

誰にでも２か月に一回無性に会いたくなる人間がいる。




















自分にとってそういう人物は

クアトロフォルマッジさん(３０)をおいて他ならない。













たるみ切った体と曇りがちなメガネをした

ゲームセンター勤務の真性アキバ系オタクである。














先月の給料日後すぐの休日。

古巣でもある神田のゲーセンに立ち寄った時、

特に忙しくもない狭い店内で汗だくで仕事をしている

クアトロさんに会う。

そして夕方５時過ぎ。


仕事上がりのクアトロさんと神田から徒歩１０分で

秋葉原に到着。



ラジオ会館で彼の手際良い転売を見届けた後

と有無を言わせずに


館内のショーケースのフィギュアや

ガチャの品定めを自由奔放にやりはじめる。



そんな彼においていかれないように

ドキュメント番組のカメラマンの気持ちで移動しながら

スピーディーに世間話をする。
















彼のアキバ的武勇伝には枚挙にいとまがない。




神羅万象チョコというウェハースチョコレートに

封入されているカードを確認するときも

という理由から、

カードの包装を開けずに光に透かしてカードが

自分のコレクションとダブっていないかどうかを

判断するという方法を取っている。



ゲーセンのロードオブヴァーミリオンという

トレーディングカード型シュミレーションゲームでは

ゲーム内のキャラクターボイスを合わせて

セリフを演じ切りながら戦うという

狂気のプレイスタイルを採用している。

と遠い目をしながら自己分析してくれた。

因みに















その狂気のプレイスタイルを面白がった野次馬に

隠し撮りされた動画がユーチューブに上げられた

二次災害もあったという。







そういう感じで声優、フィギュア、ゲーム、

トレーディングカード…

まるで４種のチーズ、クアトロフォルマッジのように

濃いアキバ系娯楽を一度で楽しめるクアトロさんは

その真摯さ故に偏愛ともとれる境地まで達している。






















そんな彼のオタク魂を基礎作ったといえる

象徴的なエピソードが



水樹奈々写真集事件である。

今から１０数年前の彼が高校生だった頃、



まだ無名の新人声優だった水樹奈々を

ラジオで知ったクアトロさんは

それを毎回ＭＤで録音するのは当たり前として、

放送日は窓を暗転で締め切り、

部屋に誰も寄せ付けない完ぺきな空間を作った後で、

正座しながらヘッドフォンで拝聴していたという。



そして待望のファースト写真集が発売されるのを

アニメディアの一文から確認して少し困った。



なんとその日は修学旅行と被っていたのである。

書店での予約や取り置きを考えたが、

家の近くのアニメイトが取り置きをしてくれない

という事だったので彼はある一大決心をした。





















彼は修学旅行を不参加することにしたのである。

其の旨を職員室でありのままに先生に話すと

そんな３０分の押し問答を経て、

クアトロ青年は見事修学旅行の辞退を認めてもらった。

というわけで修学旅行の間、

彼は特別学習という形で

午前中だけ授業に出る数日間を過ごし、

放課後に無事、水樹奈々のファースト写真集

『iris』

を手に入れた。

そんな彼もつい最近３０歳になったそうな。

最近の悩みは自身が代理でＧＭを務めている

スマホのＴＲＰＧのシナリオが崩壊寸前で

夜も眠れない状態なのだという。

一つしか歳が違わない彼を見つつも「これが若さか」とその鼻をつんざく香ばしさをまた欲しがってしまうピッツアなのであった。

La fine