わたしたちは走る。
ただ、ひたすらに走る。
背後からは銃弾が飛んでくる。
まだ、追われている。
かなり、走ってるはずなのに!
なぜ!?
わたしたちは走る。
ただ、ひたすらに走る。
背後からは銃弾が飛んでくる。
まだ、追われている。
かなり、走ってるはずなのに!
なぜ!?
しつこいなぁ……!
あわわわわ……
そこ、足を止めるな!
リアル蜂の巣! 血達磨穴だらけ!!
ひぃっ!?
走る、走る、走る。
わたしたちはそこらじゅうを行ったり来たりを繰り返す。
階段を下る、上がり、右に曲がり左に曲がり、時には不自然な通路も通る。
それでも銃声と追撃の銃弾は止むことを知らない。
わたしは一応、体育会系と呼ばれる人間であり、体力には自信がある。
周りからチビだロリだとからかわれるが、私はそこいらの女子よりも持久戦では負けないと自負している。
それに比べて、ひよりは典型的モヤシ。
インドア派で体力はなく、引き篭って変なことばかりしている。
体力などあるわけもなく、限界に近いようだった。
早く、逃げ切らないと……
しずるぅ……あ、あたし……もう……
わかってるよ!
もう少し頑張って!!
くそ、わざと嬲ってるんだ。
銃声からして連射できるタイプだ。
なのに単発でやってくるのは楽しんでるのかあるいは誘導してるのか、どっちでもいいけど足を止めるな。
死んでしまう!!
わたしは必死に考えながら、またその角を曲がる。
この広い館なのかお城なのかは知らないけど……とんでもない敷地だ。
走っても走っても、果てがない。
わたしもひよりを引っ張って走り続けているせいで、そろそろキツかった。
ひよりがのろのろしたのをわたしがカバーしている形だ。
確実に、さっきよりも速度が落ちている。
そろそろ、不味い……。
わたしは、内心もうだめかもしれないと、絶望が過ぎった。
ひよりはへとへと、わたしは庇いながら走ればきっと追いつかれる。
手詰まりだった。
よくわからない状況で死ぬのかな、とふと思う。
その時だった。
――こっちよ!!
誰かがわたしたちに向かって、叫んだ気がした。
!?
わたしは思わず足を止めた。
今の声は、なんだ?
周囲を素早く見回す。あるのは廊下だけ。
もう一度声は響く。
――こっちよ、はやく!!
こえ……?
むこうかな……?
ひよりにも聞こえたのか、ぜーぜー息が上がってはいるが、気怠そうに顔を上げる。
その目線の方向には、手招きする手首が飛び出ていた。
あれかっ!!
わたしは走り出そうとする。
足を止めたせいで足元に着弾する銃弾。
ひよりが悲鳴を上げるまえに最後の力で引っ張って、その手招きした手の方向に向かって突っ込む。
途中無様に素っ転けて、ゴロゴロと転がりながらそこに倒れるわたしとひより。
――これで、あと一人……。
転がったわたしたちをそう言って誰かが拾う。
そのまま、ズルズルと引き摺られていった。
わたしは、目を丸くして呆然とするしかできなかった。
いたたた……
わたしたちが引き摺られていったのは洋室だった。
シンプルに纏められている室内のフローリングに転がされる。
それを見下ろすのは複数の人たちだった。
聞かれる前に名乗っておくわ
私は、速水凛(はやみりん)
あなたたち、誰かに追われていたということでいいのかしら?
お、追われてたって言うか……
よくわかんない状況で、追われてた
あ、追われてたか
そう……
やっぱり、あなた達も参加者なのね……
呆然とするわたしたちを見下ろして、納得したように頷く他の人。
な、何だって言うんだ……?
二度とやるまいと思っていたのに……
また、巻き込まれた……
また、誰かを……私は……
速水と名乗った人は、わたしを見て、何か考えている。
よくわからないが、助かったんだろうか?
何がなんだかわからない中、わたしたちは取り敢えず助かったことに安堵するのだった。